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聖人君子が堕ちるまで  作者: 澤田とるふ
第1章 孤児院時代
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第11話 迷子探し

 魔物の群れと、冒険者パーティの間で、絶え間なく戦いが続いている。


「ミア、左任せる!」


「応にゃ!」


 僕の声に反応して、ミアが僕の左にいた魔物に牽制を加える。

 2匹相手になるけど、少しなら持ちこたえれるはず。


「我、古の契約に基づき、汝が爪を使役する、切り裂け、風爪!」


 目の前にいた魔物のするどい刃ごと身体を真っ二つに切り裂いた。


「来たれ風よ、南より北へ、ガスト!」


 切り裂いた魔物の後ろから更に飛び出してきた1匹はララの魔法によって吹き飛ばされた。


「アレイフ、フォローを!」


 ミアの声に反応してすぐに振り返る。

 1匹の魔物の腕を切り落としたミアだが、隣から魔物が襲いかかろうとしていた。


「我、古の契約に基づき、汝が庇護を求めん、風壁!」


 ミアと魔物の間に風の膜が発生する。

 魔物のするどい爪は風の膜によって弾かれる。


「ミア!下がるの!ウインドアロー!」


 腕を飛ばされた魔物にむかってララが風の刃を放つ。

 ミアは僕の魔法で攻撃を防がれた魔物の懐に飛び込み、刃を見舞った。

 ララの魔法で片腕のない魔物は防ぎきれずに沈黙し、ミアの攻撃を受けた魔物も沈黙する。


 僕の少し前に並ぶようにミアが戻り、僕とミアの後ろに守られるようにしてララが小さな女の子を背に庇って立っている。

 さっきの衝突で倒した魔物は3匹、合計で8匹倒したことになる。

 でも、魔物はまだ見えるだけで3匹…いや茂みからまた1匹出てきたので4匹になった。

 嫌な予感がする。奥の茂みにまだいる気がしてしかたがない。


 どんどん減っていく魔力と体力に僕らのパーティはだんだん追い詰められていた。

 後ろにある川に飛び込んで逃げるというのも悪くないかもしれない。





 数時間前。


「今日はなんの依頼をうけるかにゃ~♪」


「採集の依頼、あまりないの。」


 ミアとララの2人は傭兵団のボードを見て、どの依頼を受けるのか相談していた。外の広場にある色々な人が貼り出す依頼ではなく、傭兵団に向けて依頼されたものが貼り出されているボード。場所は銀鷹が定宿にしている酒場の中にある。


「おーい、ミア。わりぃけど、急ぎの依頼を頼めねーか?」


 後ろから急に声がかかる。


「あちしに?」


「あぁ、お前が適任なんだわ。たぶんすぐ済むと思うから頼むよ。急いでるし、世話なってる人の頼みでな。」


「どんな依頼なの?」


「迷子探しだ。」


「「迷子?」」


 ミアとララが2人揃って首をかしげる。


「ああ、わりぃけど匂いとかで追跡できるだろ?たぶん道に迷ってるだけだろうから、すぐ見つかるはずだ。報奨は俺からもだすから、頼むよ。」


「んー仕方がないにゃ。」


「まぁいいの。早く終わればまた戻ってきて違う依頼を受けられるの。」


「ありがとな。報酬ははずむからよ。」


「何か匂いがするものはあるのかにゃ?」


「あぁ、直接家に行って、匂いを覚えていってくれ。ここだ。」


 そういうと、男はララの方に地図が書かれた紙を手渡した。

 そういう経緯で、2人は迷子探しを引き受けた。

 当然、パーティを組んでいるアレイフもそれに同行する。


「匂いを辿って迷子探しなんてできるの?」


「結構簡単だにゃ。いなくなってすぐみたいだし、雨とか降ってなければすぐ見つかるにゃ。」


「ミアの鼻はすごいの。普段は食べ物にしか反応しないけど…。」


「失礼なことをいうにゃ!」


 3人で地図に書かれた家に行き、母親だという人に家の中に案内された。

 すでにそこらじゅうを探し回ったんだろうか、だいぶくたびれた様子だった。また、杖をつきながら探し回っていたのか、疲れきった様子で、どこか諦めの表情を浮かべる老婆もいた。

 最初、僕らの見た目で訝しげな表情をされたが、フードをとったミアを見ると納得したようで。


「どうか宜しくお願いします。」と深々と頭を下げられてミアが苦笑していた。


「こっちだにゃ。」


 ミアを先頭に僕とララが続く。

 大通りを抜け、路地裏を通り、外壁に近づいていく。

 …なかなか目当ての子は見つからない。それにしても、ミアは一切の迷いなく、道を進んでいく。


「すごいな。ほんとに匂いを追えるんだ。」


「にゃはは、まぁにゃー。」


 振り返らずにミアがテレたような仕草をとる。


「あ、もしかしてだけど、僕の後を辿ったことある?」


「にゃ?なんで少年…いや、アレイフの後をあちしがつけるのかにゃ?」


 ミアが不思議そうに振り向く。その表情には純粋な疑問が見える。

 そして、まだ名前を呼ぶことに慣れていないらしい。


「いや、住んでるところの近くで、フードを深く被った人がよく目撃されるらしくて。」


「あちしじゃにゃいにゃ。ていうか、あちしなら後つけずに話しかけてるにゃ。」


 確かに、ミアの性格ならそうする気がする。

 園の外から見てるだけなんてありえなさそうだ。むしろ園に入ってきそうだ。


「フ、フードを被った人なんてたくさんいると思うの。偶然というものはよくあることなの。本当よ?そんな些細なことを気にしてもしかたがないの。そ、それにその人が別に何かしたわけじゃないなら、気にするのも愚かなことなの。そうよ。むしろ、見かけたなら話しかけてあげるべきだと思うの。そうすればアレイフもそのフードの人もきっとスッキリするはずなの。本当よ?」


 隣から普段よりずっと早口で、珍しすぎる長文を話すララがいた。

 明らかに怪しい…。

 だから僕はちょっとカマをかけてみた。


「でも、その人…小さい子を見ては舐めまわすように全身を凝視するらしいんだ。…怖くない?」


「そ、そんなことしてないの!」


 …簡単にひっかかった。

 僕はジトっとした目をララに向けたが、ララはしまったという顔をした後、顔を伏せて黙ってしまった。


「変な奴もいるもんだにゃー。」


 事情がわかっていないミアの能天気な声が響く。

 そんな話をしながら、外壁にそって少し歩いていると、外壁が石から木の柵に変わった。石の壁が壊れて、木の柵で補強したみたいだ。先には森が見える。

 そして、柵の間はけっこう広く、僕らなら簡単にすり抜けられるだろう。

 ミアは柵の前に立ち止まって、こちらを振り返った。


「まずいにゃ…。」


「まさか、ここから外へ?」


 僕の問いにミアが苦笑いしながら頷く。


「急いだほうがいいの。この近くは大丈夫だけど、先の森には魔物が出る可能性だってあるの。」


 顔を伏せていたララが、真剣な顔をしてこちらを見る。


「てっきり街で迷子かとおもったけど、最悪だね。1人で外に出てる?誰かと一緒じゃなく?」


「1人だにゃ。他のやつの匂いはしないけど、にゃんか気になるにゃ。遊んでるって感じじゃにゃくて、ずっと緊張してる匂いがしてるにゃ。」


 僕らは追跡の足を速めた。

 柵の外はすぐに森が広がっている。

 堀があるところがほとんどだったけど、ミアが辿る匂いによると、綺麗に平坦な道をまっすぐに進んでいる。

 よっぽど運のいい子らしい。

 ミアがだいぶ匂いが濃くなってきたといったところで、川に当たった。

 結構幅が広い。僕らではさすがにこの規模の川は渡れない。

 けど、ミアによると匂いは川を下っているそうだ。

 歩きにくい足場に気を付けながら僕らは先を急いだ。


 結果として走って正解だった。

 すぐに女の子は見つかったが、何故か川の方を向いている女の子の後ろから、魔物が姿を現していた。


 そして僕らはそのまま魔物の群れとぶつかった。




◼️視点がかわります


 川を上がった瞬間の俺の感想は、「ガキが増えた!」という驚きだった。

 マウが血祭りにあげられている最悪の想像とは違っていてよかったが、増えてるのは予想の斜め上だ。


 だが、冷静に見ると、マウより少し背が高いだけの子供のパーティがマウを守るように魔物と戦っている。

 ガキ共の足元には事切れた魔物。シザーアントの死体が転がっていた。

 …マジかよ。普通の大人でも苦戦するシザーアントだぜ、4匹以上は倒してやがる。

 牽制しあっていたガキどもとシザーアントが吠え、戦闘が再開される。


 あれは、獣人か?耳と尻尾がある。

 身体は小さいが、俺たち人族より長寿で、運動能力は比べるまでもない種族だ。

 あんななりで俺と同年代ぐらいの可能性はあるが、獣人の感覚ではまだまだ子供の年齢のはずだ。

 あいつらは、子供の期間と成人の期間が長く、老人の期間が極端に短けぇ……にしても、双剣使いか…。型はともかく、変幻自在。

 体格のせいか軽い一撃みたいだが、隙が少ない、いい動きだ。

 だが、獣人というともっと体毛が濃くて動物の見た目に近いはずだが…。

 耳と尻尾をつけただけの人間のガキにしか見えないぞ。


 あの後ろで魔法を使ってる小さいのも耳が尖ってる。

 直接見たことはないが、きっとエルフっていうやつなんだろう。

 こっちも長寿で、見た目で歳がわからない種族だったはずだ。

 落ち着いて風の魔法を行使している。

 あの見た目で俺よりも年上じゃねーだろうな…。


 ガキの集まりかとおもったが、熟練パーティみてぇな連携だ。

 声を掛け合い、最低限の言葉に反応して確認より身体が先に動く。

 相手を信頼している動きだ。

 前衛2人の連携は見事。

 足りないところはあのエルフの嬢ちゃんが後方から全体を見てフォローするって陣形みたいだ。


 …にしても、あれはなんだ?


 見た目は人族のガキにしか見えないが、マウより少し年上?下手すりゃ同い年ぐらいか。

 今、シザーアントの爪ごと切り裂いたぞ。魔法か?

 シザーアントは身体こそ、それほど堅くはねぇが、爪や牙にある刃の強度は鉄の剣に匹敵する。

 銅や青銅の剣だと刃ごと切り裂かれるような鋭さがあるはずだ。

 それを爪ごと真っ二つだと?

 ありえねぇ…。しかも属性は風だ。

 鉄を切り裂く風なんて聞いたことねぇぞ。

 それに今、獣人の嬢ちゃんを風で守った。

 風の攻撃魔法は大抵、吹き飛ばす系で、防御魔法は相手の攻撃をいなすのが精一杯のはずだ。正面から物理攻撃を弾くなんてまともな魔力の魔法じゃねぇ。

 あのエルフの嬢ちゃんが使ってる風の魔法は理解できる。見た目のわりにはすげぇが、熟練の魔法使いならあれぐらい軽い。

 でも、あの人族のガキが使う魔法は規格外だ。正面から打ち合ってやがる。

 鉄の剣を正面から防ぎ、切り裂く風魔法なんて見たことがねぇ。


 …いや、まてよ。ありゃあ…まさか。


 俺の右目は少年の近くを飛び回る小さな発光体を写していた。

 今までに2度、似たような発光体を見た覚えがある。

 左目では見えねぇ。ということは…間違いねぇだろう。


 俺はある確信をもって、足元にあった剣をとる。

 川に入るために置いた剣だ。

 時間がない。少しずつだが、ガキ共のパーティが押されてんのがわかった。

 とりあえず剣だけもって、大声をあげる。


「ガキ共!もう少しさがれ!前衛は俺が引き受けてやる!」


 俺の声に驚いたのか、3人共が一瞬こちらをちらりと見る。

 シザーアントはその隙を見逃さず、襲いかかろうとする。


 しまった。あまりにも熟練感のあるパーティだったが、それほど戦闘経験はねぇらしい。

 戦闘中に相手から目をそらすなんて。


 俺はいっきに魔物と距離をつめ、戦いに躍り出た。

 切られたシザーアントの爪が宙を舞う。


「ほら、まだ終わってねぇぞ!前を向け!」


 戦いが終わったのはそれから数十分後のことだ。

 結局シザーアントは20匹程もいる大所帯だった。

川で水浴びさせられ、まさかパンイチで連戦するはめになるとは思わなかった…。


 こっちにきてから不幸続きだ…。


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