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聖人君子が堕ちるまで  作者: 澤田とるふ
第1章 孤児院時代
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イレーゼの考えごと

 アレイフの様子がおかしい。


 荷運びの仕事が見つかったって言ってたけど、本当に荷運びの仕事なのかな。

 ここ数ヵ月、生傷というか、擦り傷や打ち身の怪我が多すぎる。

 ゼフにも相談したけど、転んだり、打ったりすることもあるからおかしくないって笑ってた。心配しすぎだって。

 …あいつに相談したのが間違いだった。


 確かにアレイフはゼフに比べたら貧弱。

 髪は綺麗な銀髪、背も低いし、タレ目な感じも女の私から見ても可愛いとおもう。

 着るものによっては女の子でも全然通る。

 たぶん、私より女らしい。1度でいいから着せ替えを…。

 …って、脱線した。


 アレイフは2、3日に1度、銅貨1以上を稼いでくる。

 ゼフが1日で小銅貨をだいたい3、4枚稼ぐので、ゼフとあまりかわらない稼ぎだけど。

 やっぱり怪我が多い。それも転けたような怪我じゃなくて、何かで殴られたみたいな。そう、例えば竹刀とか。


 前にゼフが冗談で、どこかの貴族にでも見初められてるんじゃないかといってたけど…貴族の中にはそういうのも本当にいるらしいし、身体の怪我も考えると、あながち笑えない。


まさか本当に貴族に?…いや、単純に仕事先で苛められてる?でも、それはそれで問題だし、まさかとは思うけど、1度ちゃんと探った方がいいだろうか。

 せめて、どこで働いているかぐらいは見といた方がいいかもしれない。


 それに、気になることはもうひとつある。

 それは朝。


 アレイフが最近たまに寝過ごす。

 ゼフはもとからなので今さらだけど、アレイフは最近だ。

 私がフォローしてなんとか園長にはバレてないけど。何度か危ないこともあった。

 今まで、こんなことはなかった。いつも決まった時間に扉を開けると、そこにはアレイフがいた。


 どんなに疲れてても、夜中にこそこそ起き出して勉強してても、朝は私より強かった。起きる時間は私と同じでも、私より意識がしっかりしてる。

 逆に私は早く寝ないと朝起きれないし、起きれても朝はしんどい。

 毎朝、あいつと同じタイミングで起きるには、夜少し早めに寝ないといけない。

 秘密だけど、実は私の部屋は他の部屋より少しだけ寝るのが早い。毎朝早起きするために、年少組をさっさと寝付かせているから。

 それでやっとあいつと同じぐらいに起きられる。

 そして、ドアを開けて、一番始めに挨拶するんだ。

 でも、最近は私の方が早いので、ドアを同じタイミングで開けることもなくなった。

 ちょっと残念だけど、寝顔を見るのも悪くない。

 他の年少組がイビキをかいて、暴れまわった形跡があるのに、アレイフは人形のように眠っている。

 ついつい頬をつついたことがあるけど、起きなかった。

 ゆすってやっと目覚める。

 無理に起こすと、「こら、フィー!」と寝ぼける。

 フィーってなんだろう?人の名前っぽいけど、年少組にそんな名前の子はいない。

 フィーという何かをしかる夢でも見てるんだろうか。

 今度聞いてみよう。


 あ、そういえば寝坊だけじゃなかった。夕方には年少組の相手をしながら、うつらうつらしてることが多くなった。

 本当に珍しい。疲れきってるんだとは思うけど、そんなに重労働なのかとちょっと心配。

 空気の読めないゼフがたたき起こしてるけど、無理せず年少組を寝かしつけて早く寝ればいいのに。

 何で、頼まれても断れないかなぁ…その後また本を読んでもらおうとする年少組に群がられてたし。

 就寝時間前になって、私が年少組を引き剥がすまでずっと相手してた。

 ほんとにお人好し。

 仕事場でもこんな感じでいらない仕事まで引き受けてるんじゃないかと心配になる。


 もしかして、最近園の近くで見かけるフードの人はアレイフの関係者かな?

 門のそばから中を伺ってる怪しいフードの人を園の何人かが目撃してる。

 私は見てないし、何か実害があるわけじゃないけど。小さい子が怖がってた。

 今思うと、アレイフが家の手伝いをしてる時だ。目撃情報があるのは。


 アレイフとゼフは毎日働きに行ってるけど、何日かに1日は休みで、ちゃんと園の手伝いをしてくれる。

 疲れているだろうから、ゆっくりすればいいのに。

 働きに行く前みたいに私と一緒に園の仕事をこなしている。


 今のところ、園の経済状況はそんなに酷くはない。

 アレイフやゼフだけの稼ぎじゃ不安だったけど、園長もちゃんと対策してくれてるみたい。


 でも、ローラ姉さんは、昔よりずっと暗くなった。

 とても優しくて、活発な人だったのに。

 最初の頃は足を悪くしたのがショックなのかとおもったけど、きっとそうじゃない。

 夢を追えなくなったけど、そんなことで絶望するような人じゃないはずだ。

 ローラ姉さんは強い人だ。

 だから、たぶん園に迷惑をかけてることを気にしてるんだと思う。


 私達はそんなこと思ってないけど、卒業したローラ姉さんはやっぱり肩身が狭いのか、ほとんど部屋から出てこない。

 そして、よく歩く練習をしてる。

 まだ治りきってないから練習なんて早いっていっても聞いてくれない。

 ちゃんと治してから、歩く練習をして、その合間に年少組の相手でもしてくれればいいのに、ローラ姉さんは何故かあまり、今の園の子達に関わろうとしていなかった。

 リュッカ姉さんや私が主な話相手で、ご飯も自室で食べてる。

 園長もいろいろと手を尽くしてるみたいだけど、足はなかなか良くならないみたい。

 先のことはわからないけど、ローラ姉さんも園長もちょっと焦りすぎな気がする。


 明日にでも、このことをアレイフやゼフに相談してみよう。

 久しぶりに3人がそろう日だし。

 昔は当たり前だった時間が、いまではすっかり貴重になってしまった。


 おっと、そろそろ寝ないとアレイフにあわせて起きれない。

 …もしかすると明日も寝坊するかもしれないけど。


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