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秋に向けて

 それから雄介は、エースになった田所とコンビを組んで練習をするようになった。

 中学時代に敵として対戦した経験から、田所のスピードボールのすごさはわかっていた。

 後は、直球に磨きをかけ、スライダーとシュートを覚えていけば、

 必ず、どんな強力打線とも互角に渡り合えるという確信があった。

  ただ、田所には気持が優しすぎるという弱点もあった。

 (甲子園にいけるかどうかは、田所の成長に掛かっているといっても過言ではない。

  その役目を監督は俺に任せたんだ)

 そう思うと雄介は大きなプレッシャーを感じた。

 

 田所のスピードボールを受け続ける毎日が始まった。

 雄介は無我夢中で、ミットを動かし続けた。

 8月の後半には近隣の高校との練習試合も組まれた。

 まずは、近隣校に勝たない事には、星村学園への挑戦なんて夢のまた夢だ。


 新チームになってから、大塚由美子が、中学時代ソフトボールをやっていた

 経験を買われて、スコアラーとしてベンチに入ることになった。

 監督の安田は、選手達に「自分達で考える野球」をしないと実力は付かないと、

 毎日のように説き続けた。

 

 そのためもあって、打撃陣は西城が引っ張り、守備は雄介がまとめていくという

 チームのスタイルが出来上がってきた。

  練習試合の後には、雄介は田所と大塚由美子を交えて、ミーティングをするのが、

 日課になった。

 頭もいい大塚由美子は的確に相手打者を分析していた。

 まだ、練習試合でも田所のボールを受ける事に精一杯で、リードにまで充分な

 配慮が行き届かない雄介にとって、大塚由美子のアドバイスは頼もしかった。

 「A高校の4番の田宮君はインコースの早い球には非常に強いから、

  アウトコースで勝負をするべきよ」とか

 「逆にB高校は、3番の中西君をマークすれば勝てる。アウトコースを

  右方向に長打しているケースが多いから、思い切ってインコースの直球で

  勝負してみたら」

 などと積極的に発言をした。 

 大塚由美子はクラスでもリーダー的な存在で、華やかさもあった。

 雄介は自分の気持が、 益々由美子に惹かれていくのを

 自分でも強く意識し始めていた。 しかし、雄介には由美子が思いを寄せているのは

 西城で あるような 気がしていた。

 もっとも、西城は小学校の時から、スポーツ、勉強、ルックスを含めて、

 何もかもに秀でていて、クラスのスター的な存在だった。

 妹の照子も西城が好きなのは、雄介にはわかっていた。

 ただ、西城が誰を好きなのかは雄介にもわからなかったし、

 それを聞く勇気もなかった。

 (馬鹿野郎、俺は秋の大会を控えたこの大事な時期に何を考えているんだ。

  今は、野球に集中しろ)

 雄介は必死に、自分の雑念を追い払った。

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