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新チームの夏

 こうして、雄介たちの秋の大会に向けての練習は7月の半ばから始まった。 

 また、新しく 前任の部長に変わって、自身も野球経験があるという

 50代半ばの竹村等が新部長に就任した。

 竹村は、学校では、国語の教えていた。

 雄介たちにとっても、何でも話しやすい厳しさの中にも温かみのある教師だった。

 竹村は部長就任の挨拶で言った。

 「君達も今、特待生や越境入学が問題になっていることは知っているだろう。

  実際、我が県でも越境入学で優秀な選手を集めている星村学園が、

 この10年、夏の大会だけで7回も甲子園に出場している。

 もし、星村学園という学校がなかったら、叶えられていたであろう

 地域の夢が、ことごとく潰されてきたのも真実だ。

 どうだ、悔しいと思わないか。

 しかし、そんな泣き言ばかり言っても始まらない。

 君らには、自分達地元の人間の力で甲子園に出るという強い自覚と意地を

 持って練習に励んでほしい。

 この気持だけは絶対に忘れるな」 

 こうして、真夏の炎天下での猛練習が始まった。

 徹底的な走り込みに、個々の選手の適正を見極めるための

 厳しいノック。

 引退した上級生達も、自ら練習に参加して、ノックバットを握った。

 マネージャーの照子や大塚由美子もペットボトルを持って、

 グラウンドを駆け回る選手が脱水症状を起こさないよう

 気を配っていた。

 「もっと声を出せ」

 「気合を入れろ」

 「何だ、そんな球も取れないのか」

 グラウンドの中では、毎日のようにお互いを励ましあう声と厳しい怒声が

 乱れ飛んだ。

 ヘトヘトになる練習が連日、夜まで続けられた。

 

 やがて、8月の中旬になった。

 今年も、甲子園に出場した星村学園が準々決勝まで進んだという情報が、

 練習する雄介たちの耳にも届いてきた。 

 そんなある日の練習の後、監督の安田が選手全員を集めた。

 「よし、これから、新メンバーを発表する」

 安田は一人一人の選手を見回した。

 「投手田所」

 「捕手沢田」

 雄介は、監督の言葉に驚いた。しかし、自分がやらねばならないという気持が、

 何処かにあったのも事実だ。雄介は、走るのは余り、得意ではなかったが、

 キャッチングと肩の強さには自信がついて来ていたからだ。

 監督のポジション指名は続いていた。

 一塁に二年生の佐々木、二塁に一年の山中、サードに一年井口、

 ショート西城、レフトに二年の水田、センター一年三島、ライト一年上田

 一通り発表してから、安田は厳しい口調で言った。

 「もちろん、これで決定という訳ではない。

 練習で手抜きをする奴は、どんどん入れ替えていくからな」

 ただ、レギュラーに一年生を7人も入れているメンバーを見ると、

 監督の目線が2年後を見据えているのは明白だった。

  雄介は上級生で、メンバーから外された選手の分まで頑張らなければいけない

 と心に誓った。

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