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秋季大会準々決勝

2回戦を勝ち上がった後、

 安田は、エースナンバーを

 西城から田所に戻した。

 

 雄介は、西城にエースとして、

 活躍し続けてほしかったが、

 チーム全体を見る監督の立場からは、

 一時的に、田所から背番号1を外したのも、

 田所に何かを感じて欲しかったのかもしれない、

 という気がした。

 安田は練習のミーティングで言った。

 「宮田高校は前にも言った通り、

  菅野のワンマンチームだ。

  体格は190センチ近くあって、

  スピードもある。打順も四番だ、

  彼を調子に乗せてしまうと、

  すごい力を発揮する。

  とにかく、菅野を揺さぶる攻撃を

 考えていこう」

 安田の指示で、選手はそれぞれに、

 バントや盗塁、など機動力を使った攻撃の

 再調整を行った。

 

 試合前に安田は、一番の三島の後の

 2番にチーム1足の速い山口を

 2番に置いた。

 徹底的な揺さぶりをかけていこうという

 作戦だった。

 

 準々決勝の日は、朝から秋の小雨が

 降り続く一日になった。

 雄介は、大村高校にとって、

 ラッキーな天気だと感じた。

 試合が始まると同時にその予想は、

 現実になった。

 一番の三島がいきなりセーフティバントを

 3塁線に成功させた。

 大きな体を揺らせながらマウンドを

 駆け下りてきた菅野も地面がぬかるんで、

 止まる打球に足元を取られた。 

 2番の山口も一塁線にセーフティバントを

 成功させた。

 足の余り速くない三上が送りバントでしっかり送って、

 一死二三塁で、

 この試合、ショートで4番を打っている西城が

 打席に入った。 

 ネクストから打席に向かう西城を、

 次打者の雄介は呼び止めた。

 「お前にはまともに勝負をしてこないから、

  焦って打ちに行く必要はない。

  俺が何とかするから」 

 雄介の言葉に西城は黙って頷いた。

 雄介の予想通り、菅野は際どいコースを

 突いて、西城を歩かせた。

 既に、西城の名前は県の内部では、

 十分に鳴り響いていた。

 歩かされる事も当然多くなる。

 だから、安田は雄介の捕手として読みに期待して

 打順を5番に置いている。 

 監督から何も言われなくても、

 雄介にもそれ位の察しは付いていた。

 とにかく、菅野の重いボールに振り負けては、

 打てない。

 雄介はバットを一握り短く持つと、

 照子から先日、父が預かってきた

 胸に入れているお守りに手を添えた。 

(お兄ちゃん、必ず打てるよ)

 照子がそう励ましてくれている気がした。

 

 ゆっくりと打席に入り、足元を鳴らすと、

 マウンド上の菅野を睨み付けた。

 菅野はワンマンチームとして、

 一人でチームを背負っている。

 人一倍気も強い。 

 当然、自分の力で何とかしようと

 焦っているはずだ。

 しかも、雨のせいで、手が滑るはずだ。

 雄介は初球から、

 高目の速球をコンパクトに振りぬく事だけを

 考えていた。

 2球目に予想通り、高めの速球が来た。

 雄介は上からバットを覆いかぶせるように

 ライト側に流し打っていった。

 打球がセカンドの頭上を越えて、

 右中間を抜けていくのが、

 見えた。

 走者一掃の2塁打だった。

 初回の先制攻撃で、試合の流れを、

 大村高校が手繰り寄せた。

 後は、雄介がリードで田所を

 引っ張るだけだった。 

 マウンド上で、見せる田所の姿も

 以前とは全く違っていた。

 エースの自覚が表れている。

 雄介のサインにも、自分と合わない点が

 あると雄介をマウンドに呼び寄せた。

 今まででは、考えられない事だった。

 4番の菅野に対しても、

 雄介のサインに首を振って、

 真っ向勝負で打ち取った。 

 

 安田は選手の動きを、

 じっくりとベンチで見守っていた。

 竹村が、

 「自分達で考える野球を

  選手がかなり、

  出来だしたようだな」

 と笑顔を見せた。

 

 準々決勝は5対1で大村高校が勝ち、

 準決勝で、星村学園と再び、

 戦う事になった。

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