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王者の風格

 「前年度優勝校星村学園高等学校入場」

 盛大なアナウンスと共に、先頭を切って、星村学園の選手達が入場してきた。 

 各選手には、毎年のように甲子園を経験しているという自信と

 ゆとりが感じられた。

 彼らにとっては、甲子園は出て当然の舞台なのだろう。

 雄介の心に闘志がこみ上げてきた。

 

 雄介たちはその中でも、一年生でベンチ入りしている二人の選手に注目した。

 プロのスカウトも注目する一年生が二人越境入学しているという噂が届いていたからだ。  一人は大型左腕投手で、既に140キロのスピードボールを投げるという外山大介。

 もう一人は、右の強打者前島純だ。 

 「所詮、あいつらは全国からの寄集めチームだろう」

 口の悪い井口が毒づいた。

 「そんな事言っても始まらないさ。俺達は何れ、あの外山を打ち崩さないと

 甲子園にはいけないんだから」

 雄介は自分に言い聞かせるように呟いた。

 

 入場行進は進み、大村高校の選手達が入場してきた。

 西城たち一年生も晴れやかな表情をしている。

 雄介は、心底、うらやましいと思った。

 開会式のセレモニーが終り、第一試合の選手達の守備練習が始まった。

 星村学園の選手達の動きは、まるで、社会人選手のプレーを見るようだった。

 (今の段階ではとても適わない)

 雄介は、彼らのプレーに舌を巻いた。

 やがて、スターティングメンバーが発表される。

 星村学園の名将矢吹聡監督は、背番号1のエースを温存して、

 一年生の外山を先発させてきた。

 「なめやがって」

 雄介の隣で、気の強い井口が歯ぎしりしている。

 

 

 試合開始のサイレンが鳴った。

 星村学園の先発外山がマウンドに上がる。

 大村高校の選手達の気持は伝わってきたが、

 力の差は歴然としていた。

 外山のボールを外野に飛ばすことさえ出来ない。

 7番を打つ西城も、バットにボールを当てるだけで、

 精一杯という状況だった。

 一方、星村学園は着実に点を重ね、7対0という点差になった。

 六回裏二死になった場面で、安田監督はマウンドに田所を送り、

 外野に三島を入れた。

 少しでも、球場に慣れさせて、来年につなげようという思いが伝わってきた。

 田所が一人の打者を速球で空振りの三振に打ち取ったのが、

 せめてもの救いだった。

 試合は、結局、7回コールドで7対0。

 大村高校は一年生投手の前に完封負けを喫した。

 

  試合後、宿舎で泣き崩れる上級生に安田は言った。

 「本当によく頑張った。お前らも出せる力は出し切れただろう。

 この3年間、よく俺に付いてきてくれた。ありがとう」

 そして、雄介たち下級生には、

 「いいか、今日の先輩達の悔しさを絶対に忘れるな。

 必ず、星村に勝てるチームを作ろうじゃないか。

 今から、学校に帰って練習だ」

 雄介たちは、監督の言葉に大きく頷いた。

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