開会式の日
いよいよ、夏の県予選の開会式に出発する日の
朝を迎えた。
早朝から、雄介は緊張した気持で目を覚ました。
大村高校の試合は三日目だったが、
去年、スタンドから入場行進を見守った雄介にとっては、
2年生で迎える始めての、開会式は特別なものだった。
雄介は照子と学校に出かけた。
空は澄み切った青空だ。
続々と他の選手達も集まってきた。
全員が顔を揃えると、監督の安田と
部長の竹村が集合をかけた。
竹村が口を開いた。
「この前、監督から話があったが、
私からも一つ言っておきたい。
最近、君らのOBが例年にも増して、
練習などで、チームに協力してくれて
いるのは君らも十分にわかっているはずだ。
役所の中村君なども君らに期待をかけていて、
昨日も野球で町おこしが出来ないかななんて、
言ってたよ。
それだけ、今年から来年にかけてのチームに
手応えを感じたのだろう。
しかし、私はそんなに野球は甘くないと思っている。
また、それなりの実績を上げたとしても、
この一、二年だけ活躍して、
その後、駄目になったというのでは、
何にもならないと思う。
私が一番言いたいのは、君らに練習や試合を通じて、
良い意味での伝統を築いてほしいという事だ。
今日から始まる大会が、その第一歩目だと思って、
県営球場に乗り込んでほしい」
竹村はそれだけ言うと、監督の方を見た。
安田は、
「よし、今から出発するぞ」
というと自ら運転するマイクロバスに、
乗り込んでいった。
選手達も緊張した面持ちで、主将の佐々木を先頭に
続々とバスに乗り込んだ。
N県営球場に到着すると各校の選手達で、
開会式の選手入場口付近はごった返していた。
とりわけ、星村学園の赤いユニフォームは目立っていた。
雄介は、エースの外山に近づいて声をかけた。
「お互い全力を出して、また、やろうぜ」 「ああ、俺も楽しみにしているよ」
外山も余裕に満ちた表情で答えた。
高校生活で始めての入場行進、そして、開会式の
時間はアッという間に過ぎていった。
後は、どのチームも当日に試合のあるチームを除いては、
学校に帰って、最終調整をするだけだ。
こうして、一回戦までの時間は、
慌しさの中で過ぎていった。