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OB達の熱意

季節は7月になった。

 大会を目前に控え、雄介たちは汗と泥にまみれて、

 グラウンドを駆け回った。 大塚由美子や照子も伊藤と共に、

 必死に選手をサポートしていた。

 そんな中、雄介たちのチームに期待をかけるOB達が、

 集まり始めた。 

 その中の一人に、町役場の広報課に勤める

 30歳になる中村弘がいた。

 中村は、12年前に大村高校が夏の県大会で、

 過去最高の成績を上げて、ベスト8まで

 進んだ時のエースだった。 

 高校卒業後、東京の大学に進み野球を続け、

 地元の役場に就職して、

 今でも、趣味で地元のチームに入って、

 野球を楽しんでいた。


 

 高校時代から、変化球を駆使して

 相手打者を打ち取るタイプだった中村は、

 自分のタイプが、K大付属の斉藤投手と

 似ているので、バッティング投手をさせて

 ほしい。後輩達のために一役買いたいと、

 自ら、協力を申し出てきた。

 他にも、スポーツ器具メーカーに勤めるOBが

 150キロまで球速の出るピッチングマシンを

 レンタルで使用できる手続きまでしてくれた。 


 中村達OBも、自分を育ててくれた安田監督を、

 何とか甲子園に連れて行ってあげたいという思いは、

 現役の選手達と同じだった。

 こうして、俄然、雄介たちの練習も活気を

 帯びてきた。

 学校での夏の期末テストも終わり、

 梅雨空も明け、蝉が鳴き始め、

 夏本番を迎えた。

 

 そんなある日の練習後、安田監督が、

 レギュラーポジションとベンチ入りの

 選手の名前を一人一人読み上げた。

 選手の間に緊張感が広がった。

 「一番センター三島、2番セカンド山中、3番ファースト佐々木、

  四番ショート西城、5番レフト三上、6番キャッチャー沢田、

  7番サード井口、8番ライト吉田 9番ピッチャー田所」

 と淡々と読み上げていった。

 

 ライト吉田と安田監督が読み上げた瞬間、

 選手達の間にどよめきが起こった。

 安田が春の大会の前に、3年生に檄を飛ばして以降の、

 吉田の努力には並々ならぬものがあった。

 練習でも、大人しい上田よりも、大声を張り上げて、

 他の選手を引っ張った。

 その努力を安田が認めたのだ。 

 上田も納得のした表情をしていた。


 安田は県予選で決められたベンチ入り

 メンバー18人の名前を読み上げて言った。

 「ベンチ入りのメンバーは以上だが、

  皆には、全員で戦うという気持ちをもってほしい。

  一つ一つの試合が大事だが、まず、

  K大付属と対戦するまでは負けられないという気持ちで、

  戦おうじゃないか。 

  後、お前らのために協力してくれているOBや

 家族のためにも、精一杯のプレーをしてほしい。

 以上だ」

  安田の言葉に、雄介たちは試合に出場できない

 3年生のためにも、今年、甲子園に出場する気持ちでやろうと

 西城たちと誓い合った。

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