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新2年生になって

季節は3月になった。

 段々と、寒さも和らぎ春らしい陽気の日が増えてきた。 

大村高校の三年生の卒業の日を迎えた。

 雄介の野球部の先輩にも、大学に進学する者、

  受験に失敗して、浪人生活を送る者。

 家庭の事情などで、社会人として働きに出なければいけない者。

 それぞれの現実という人生が待ち受けているようだった。

 少なくとも、一部の私学の野球のエリート校のように、

 野球で進学できたり、就職できる生徒は一人もいなかった。

 それでも、3年生の元部員達は卒業式を終えた後、練習を続ける

 下級生の所に来て、口々に言った。

   「今が、一番野球に打ち込める時だ。

  俺達はお前達の今年や来年のチームに夢をかけている。

  是非、その夢を叶えてくれ」

 そういうと、それぞれに3年間過ごした校門を出て行った。

 

 

 雄介は高台にある学校から、坂道を下って、

 消えていく先輩達の背中を見ながら、

 もう、自分達も来年の秋には、彼らと同じ現実に

 向かい合わなければならないという事実を、

 突きつけられている気がした。 しかし、今は野球を思い切りやりたい、

 その気持を大切にしたいと思った。

 3月20日過ぎ、選抜高校野球大会が開催された。

 N県から唯一選ばれたK大付属の試合の日、

 部員達は朝の練習を中断して、テレビのある

 教室の前に集まった。

 自分達が後一歩届かなかった相手チームが、

 甲子園でどこまで戦えるのか、

 見ておきたかったからだ。

 

 

 K大付属の相手は、神奈川県の強豪で優勝候補の

 Y高校だった。

 序盤は、息詰まる投手戦になった。

 Y校の打線も、雄介たちが苦戦した斉藤の落ちるボールを

 中心とした変化球を打ちあぐねていた。

 一方のY高校のエースは水野健という全国屈指の好投手だった。

 0対0の試合の均衡を破ったのは、Y高校だった。

  試合が後半に入って、序盤抑えられていた

 K大付属の斉藤の変化球のボール球に全く、

 手を出さなくなった。

 そして、苦し紛れにストライクを取りにくる、

 高目の変化球を完璧に捉え出した。

 結局、終わってみれば、5対0。

 Y高校の圧勝だった。


 「やはり、全国は広いな」

 「俺達も井の中の蛙か」

 「あの斉藤のボールをあそこまで見極めるとは」

 選手達は口々に言った。 

 「俺達ももっと練習して、まず、K大や星村に

 勝てるチームを作らないとどうしようもないという事だ」

 西城が、選手達全員の気持を代弁するように言った。


 4月になり、雄介たちは新2年生になった。 

 新たな新入生も20人程度野球部に入ってきた。

 その中に一人、いきなり、レギュラーポジションを

 奪えそうな選手が混じっていた。 

 三上毅という一年生で、既に185センチで85キロという

 体格の長打力の非常にある選手だった。

 レギュラー争は厳しさを増した。 

 

 そんなある日、雄介はいつも元気に練習に励んでいる

 伊藤の様子が沈んでいるのに気が付いた。

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