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年が明けて

 年が明けて、元日。

 この日だけ、練習が休みになっていた。 

 雄介と照子は両親と初日の出を見物に出かけた。

 夜明けと共に、山の頂を明るい光が徐々に

 覆い、やがて、太陽が顔を出してくる。

 雄介は、ただ、

 (今年は、一歩でも甲子園に近付けますように)

 と祈った。 

 横を見ると、照子も何か神妙な面持ちで、

 願い事をしているようだった。 

 

 1月2日から練習が始まった。

 安田監督が練習初めに、部員を集めた。

 「改めていう事はないが、去年の秋から、

  各自、走り込みを始め、十分に基礎体力アップを

  計ってきたはずだ。 絶対に練習は嘘を付かないから、

 今の間にしか出来ないスタミナ作りを、

 自分を信じて、行っていくんだ。

 よし、練習を始めよう」

  雄介たちは寒さを感じながらも、黙々と、

 準備体操からウオーミングアップに取り掛かった。 

 

 1月の終わりになってきて、どの選手も腰周りや

 体全体が一回り、大きくなっていた。

  2月になるとプロ野球なども一斉にキャンプインをするが、

 雄介たちにとっても、ようやく、ボールを使った練習を

 本格的に再開できるのが、楽しみだった。

 守備練習や打撃練習が始まって、

 どの選手も走り込みの成果を実感していた。

 ショートの西城は守備範囲が大きく広がり、

 サードの井口やセンターの三島も矢のような

 送球を投げ始めた。 

 雄介が一番、嬉しかったのは、打撃面で、

 打球が早くなって来た事だ。

 今までは、投手の田所のリードに精一杯で、

 打席では結果を残せず、打率も2割を打つのがやっとで、

 チームに迷惑をかけていた。 

(8番を打つ俺の出塁率が少しでも上がれば、

 9番の田所に負担の少ないバンドの場面で回す事が出来る。

 後は、西城と共にチームで一、二の打率を争う一番の

 三島に得点圏に走者を置いて回せれば、チームの得点率も

 大幅にアップするはずだ)

 雄介は家でも、ひたすら、素振りを繰り返した。 


 2月も半ばになったある日、

 昼休みに隣のクラスの上田が、雄介を手招きした。

 雄介が廊下に出て行くと、上田が

 「西城とお前の所の照ちゃん、付き合ってるのか」

 と言い出した。

 「えっ、俺はそんな話は何も聞いてないが」

 「そう、昨日も二人で親しそうに話しているのを見たからさ」

  上田の言葉に、雄介は半信半疑だった。

 妹の照子が西城を好きなのは、雄介にもわかっていた。

 しかし、親友の西城からはそんな話を聞かされた事もない。 

 照子には、大塚由美子の事で借りもある。

 (一度、西城の気持も確かめておかないといけないな)

 雄介は、久しぶりに自分が兄貴らしい気持になっているのを

 感じて、苦笑いをした。

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