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妹の気遣い

11月になり、雄介たちの耳に、県の代表として秋季地方大会に出場した

 星村学園とK大付属のうち、星村学園は一回戦で破れ、甲子園出場が

 絶望になり、K大付属が勝ち上がって、

 ほぼ、選抜を当確にしたという

 情報が入ってきた。 

 「星村の外山の速球より、K大付属の斉藤のスラーダーとフォーク

 の方が全国レベルの 打者に通用したのだな」

 西城や三島は、しきりにそんな話をしていた。 

 最近の甲子園では、バッティングマシンのスピード練習などの影響もあって、

 速球には滅法強い学校が増えたが、縦に大きく曲がる変化球を持つ投手を

 なかなか打てないという状況が全国的に続いている。

  

 (俺も田所のワンバウンドする変化球でもきっちりと

  後ろに逃さないように押さえられるようにならないといけないな)

 雄介も、自分自身に言い聞かせた。

 それぞれに、課題が見つかった事で、選手たちも自主的に練習を始めた。

  監督の安田も懸命にノックバットを握り、内外野の選手を右に左に、

 ギリギリ追いつけるか追いつけないかというような厳しい打球を

 打ち分けた。 

 

 12月に入ると寒さが厳しくなってきた。

 海に面した高台にある大村高校のグラウンドにも激しい風が吹き付けてきた。

 ここで、安田はガラッと練習方法を徹底的な基礎体力トレーニングに

 切り替えた。

 毎日、グラウンドの持久走りと坂道を使ったダッシュ。

 バーベルなどを作った筋力アップ。

 ハードなトレーニングが続けられた。

部長の竹村も、秋季大会で逆転サヨナラ負けした経験から、

 練習の合間をぬって、選手たちを体育館で仰向けにさせて、

 いろんな場面のイメージトレーニングをさせて、

 精神力のアップを図ろうとするなど、様々な工夫を施した。


  学校の期末試験も終わり、冬休みに入った。

 雄介たちは、毎日、練習メニューを黙々とこなしていった。

 そんなある日、家に帰ると妹の照子が神妙な顔をして、

 雄介に話しかけてきた。

 「お兄ちゃん、由美子のことが好きなんでしょう」

 「いきなり、何を言い出すんだ。お前こそ西城の事が」

 「はぐらかさないでよ。 こういう事は、はっきりさせておいた方が

 練習にも集中できていいと思うのよ」

 いつも、ひょうきんな照子が真顔で言った。

 「実はもう、由美子に話してあるの。私たち親友でしょう。

 だから、明日、家に遊びに来てと言ってあるから。

 もちろん、由美子は何も知らないから。

 あの子も意外とそういう事には鈍感だから」

 (いつも、余計な事をする妹だ)

 雄介は、そう思いながらも、普段から、野球以外の事は、

 余り、話すことのない大塚由美子の自分に対する気持も、

 聞いてみたい気がした。

 

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