6.結局俺は普通の
9月28日午前6時ー
目覚ましが鳴る前にボタンを押して伸びをする。
昔から俺はこの時間に目が覚める。
学校も1度も遅刻したことはない。
共働きの両親に代わり朝食とお昼用のお弁当を3つ作るのが高校生になってから朝の日課になった。
別に苦ではないし高校に行かせてくれている両親には感謝している。
ちょっとでも恩を返せれていればと思う。
こんな俺には桜 紅葉という幼馴染がいる。
遅刻はするわ忘れ物はするわでどうしようもないやつで周りはもう呆れ返っている。
でも俺は知っている。
テストの成績が毎回上位なのも、
友達が虐められてたら見て見ぬふりをしないのも、
俺はあいつの不器用とも言える優しさを知っている。
少なくとも俺は知っている。
そんなあいつを俺はガキの頃から好きだった。
女としてじゃない。
好きなんかじゃ表すことができない様な存在である。
引くかもしれないが崇拝に近い。何故かは自分でもわからない。
そんなあいつも明日で17歳になる。
今日は放課後、明日の為にプレゼントを買いに隣町まで行く予定だ。
遅くなるから夕飯は作れないと両親に言うと何かを察してか同時に親指を立て、
「頑張ってきな!」
両親は俺がもみじと付き合いたいと思っているんだろう。ちょっと違う。
ノリで俺も同じポーズをとる。
そして俺は遅刻ギリギリの時間に家を出る。
何故かって?
あいつに会える可能性が高いから。
まぁその日はかばんを忘れたとかで遅刻してきたから会うことなく教室についた。しかもお弁当を忘れたと後で聞いた。
その件は芹那がお弁当を半分上げるということで俺の出る幕はなかった。
「おーす。かみや、今日は1人か?」
男子の1人が大声で聞いてきた。
うるせーな。変な噂たってあいつに迷惑かけたらどーすんだ。
「うるせーよ。」
心の中では殴ってやりたかったが色んな人に迷惑をかけてしまう。
俺はこの学校では結構優等生で通っている。自分で言うのもなんだが結構モテる。
でも実際、内面は結構いい感じに壊れていると思う。
まぁこんな自分だがそんなに嫌いじゃない。
「終わったー!あやの帰ろーよ」
「あ…もみじちゃん、今日はちょっと用事があって一緒に帰れないの。ごめん…」
あの芹那がもみじとの帰宅を断るなんて珍しいな、と思いながら明日のイベントを思い出すと納得した。
「そっかー、残念。じゃぁ久々に今日はかみやとー」
「あ、俺も今日はー」
「だめ!」
教室を沈黙に導いた声が芹那から発せられたのだと気づくのに数秒かかった。
は?なんで?
「あやの?」
「…っ……ごめん。やっぱり何でもない…また明日ね、もみじちゃん…」
そう言って芹那は教室から出て行った。
…心配しなくてもあいつは俺と付き合う気は全くないよ。
芹那は大人しくて内気なやつだ。
正直、もみじ以外のやつと話しているのをほとんど見たことない。
そんな大切な存在を俺にとられると思ったのだろう。
逆だぞ。お前が横から割り込んできたんだろ?
あいつが芹那とつるむようになって俺と話す機会はどんどん減っていったと思う。
でも俺は恨んでなんかいない。
芹那といるときのもみじはほんとに楽しそうだし幸せそうだった。
だからむしろ芹那には感謝しているぐらいだ。
さっきのこともあり、もみじが意味あり気な笑みを浮かべみぞおちをかまして教室を出て行ったので俺は隣町に向かった。
あいつはきっと変な勘違いをしてるな…
そんなことを思いながら電車に揺られていると、
「佐々倉君?」
全く気づかなかったが隣に芹那が座っていた。
「芹那じゃん、もみじとの帰宅を断ってどっか行くのか?」
「…たぶん佐々倉君と同じ理由かな…」
「…だよな」
「佐々倉君はプレゼントもう決まったかな?」
「まだだよ。隣町のショッピングモールとりあえず周ろうかと」
「そっか…」
正直気まずい…
もみじはよくこんなやつといつも一緒にいて会話が尽きないな…
「……佐々倉君は…」
隣町の駅で一緒に降りたときに芹那が口を開く。思っていたよりも喋る子だ。
「佐々倉君はもみじちゃんと幼稚園から一緒なんだよね…きっとどんなものが欲しいとかー」
「プレゼントは気持ちだろ?勝ち負けじゃねーよ」
芹那の言葉を遮って答える。
そういう暗いこと言うから虐められるんだよ。
そういうのは心だけにとどめないとさ。
「…ありがとう。うん、元気でた。佐々倉君にだって負けないくらいのプレゼント用意しちゃうんだから。」
「そういうことじゃないんだけどな…でもそういう姿勢嫌いじゃないよ。俺だって負けないからな。」
「えへへ、じゃぁ放課後明日一緒に渡そうね。ケーキの美味しいお店予約してるんだ。よかったら3人で行こう。」
「…俺もいいのか?」
「うん、今日は教室でごめんね。」
「教室?…あぁ、全然気にしてないよ。」
「ほんとに?よかった、じゃぁまた明日ね。放課後は開けておいてね!」
そういって俺の返事も待たずにショッピングモールの中に消えていった。
あいつはあいつなりに頑張ってるんだと思う。
もみじに心配かけないような自分になりたいのだろう。
俺はあいつが苦手だったけどちょっとだけ好感を持てた。
そしてちょっとだけ明日を楽しみにしてる自分がいた。
「芹那に負けないようにプレゼント選ばないとなぁ」
3人一緒に仲良くケーキを食べながら笑いあっている景色を想像すると少しにやけてしまった。
結局俺は普通の男子高校生なのかもしれない。
好きな女子がいる普通な、
報われないのが怖いだけの普通な高校生なんだな。




