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真実は、告げないままで。

作者: アンダンテ

-焦がれて、焦がれて、焦がれて、やっと手に入れた俺の宝物。

(はるか)は、沙羅(さら)の背に回した腕にぎゅっと力を込めた。

「ん…とお、や」

遥は沙羅から紡がれる名にこみ上げる嫉妬を必死に堪え、その代わりに沙羅に言の葉の呪縛を与える。

「今だけは、他の男を思っていても許してあげる。でも、もう逃がさない。心ごと俺に向いてもらうから」

そう言って口付けを繰り返した、新月の夜-。



「……嘘でしょ…」

目が覚めると、そこは見慣れた部屋だった。私は裸で、隣の親友も裸。イタしてしまったのは一目瞭然だった。現実を理解すると、酔いつぶれる前の記憶が蘇ってきた。

「そっか…私、遠夜(とおや)に振られたんだっけ…」

遥を起こさないようにそうっとベットを降りて、痕跡を残さないように確認して部屋を出た。遥のアパートはむかつくことにオートロックだからそのまま出て行っても大丈夫なはず。

私は昨日のしわくちゃな服のままということには目を瞑って職場へと足を向けた。



***

私は入社して1年経った頃から遠夜と付き合い始めた。私はもともと淡白な性格でいろんな人から振られてきたけど、遠夜とだけはうまくいってると思っていた。私は人生上で一番遠夜を愛した。態度にはあまり出せなかったけど、それでも心の中ではいつも遠夜を想っていた。

だから。

「俺、好きな人ができた」

そういわれたときは頭が真っ白になった。信じたくなくて、嘘だといってほしくて、ぎゅっと目を閉じた。再びあけても、それは夢じゃなくて。

泣き叫んでなじって、縋り付いて、もう一度好きになってと懇願したかった。

でもその行動は私の生来のプライドが許さないし、何よりも遠夜の幸せを思って、懸命に押さえ込んだ。

「そう。じゃあ、私達これでおしまいね。その人とうまくいくといいわね」

にっこりと微笑んでそう告げる。

「…お前はそれでいいのか?」

「しょうがないわ。二股しなかったことだけは褒めてあげる」

-そんなわけない。

「なんとも思わないのか」

「あなたを憎むほど思ってはいないわ」

-貴方を憎むなんてできるわけがない。でも、さっきからずっと貴方に言われたことだけを思ってる。

「本当に終わりなんだな」

「変なの。全部遠夜が言い出したことなのに」

苦笑いを浮かべて立ち上がる。

「じゃあね」

颯爽と歩き、曲がり角を曲がって、公園に入って、ようやく安心できた。

「…ふぅ、ううっ…!」

いい年して情けないとは思っても抑えることなんか出来なかった。

愛してたから。きっと、これ以上好きになれる人なんか、現れない-。


思う存分泣いて、コンパクトミラーで顔を確認すると化粧が崩れて酷いことになっていた。常日頃メイク落としシートを持ち歩いていた自分に感謝して、簡単に顔を整えて家に向かった。

カツカツ…と歩くたびに靴音が鳴る。心は沈みきってるのに、音だけはいつもと変わらないなんて。

自分の部屋に鍵を差し込んだところで、携帯が鳴っていることに気づいた。

急いで開錠して、玄関先で携帯を取り出す。本当は出たくなんかなかったけど、出ないと後で大変になるかもしれない。

「もしも」

『さらっ…!よかった、携帯に出た…!』

すごい剣幕で話した遥に、自分がどれほど外で泣いていたかを知る。よく変質者に襲われなかったと、自分の幸運さに拍手を送りたいほどだった。

って、そんな場合じゃなかった。とりあえず、過保護で弟のような親友を安心させようと口を開く。

「ごめんね、ちょっと立て込んでて…」

『いつもだったら仕事終わってたら出れなくてもすぐメールくれるじゃんっ!心配したんだから…!』

「ごめん、もう大丈夫だから」

そっか。私にはまだこんなに心配してくれる親友がいた。大丈夫、まだ頑張れる。

自分に気合を入れなおした。

『ね、今日飲みに行こうよ』

「…今から?」

家に帰ってきたときは時間が分からなかったが、今時計を見ると針は11時を過ぎていた。こんな時間帯ならもうすぐ閉店のところも多いのではないか。少なくとも私の住む近くではゆっくりできない。

『俺の知り合いが最近開けたバーがあるんだ。そこに行こう』

ちょっとでも私が渋ったらすぐに引き下がる遥にしてはちょっと強引な誘いだったが、逆に飲んだほうが楽になるかもしれない。私は了承の意を伝えて仕度を始めた。…といってもさっき帰宅したばかりなので、化粧を本格的に直したらそれで済んだ。

しばらくすると玄関のチャイムが鳴り、遥が迎えに来たことを知らせた。


遥に連れられてきたのは、おしゃれなバーで、一目で気に入った。

「で?いったいどうしたの?」

席に着くなり遥はそう尋ねた。気づかれていたことに驚いたけれど、とりあえずそしらぬ顔をしようとした。

「え?なにそれ」

「ごまかせると思わないでよ。高校から沙羅を見てきた俺にはわかる」

真摯な眼差しで見つめられ、もうごまかせないと悟った。

「んー、ちょっとね、振られちゃっただけ」

なんでもないことのようにさらりと告げる。

「辛いことを我慢しなくてもいいから。俺に話して?」

そういえば昔からそうだった。遥には隠し事が通用したためしがない。

飲みながらでも話してよ、と言われ、遥が注文してくれたものを飲みながらポツリポツリとこぼした。

月が見えないその晩は、ひどく寂しかった-。



***

…それから先の記憶がない。いつもなら遥がドクターストップ(遥は本当にお医者様)をかけてくれるのだが、私に同情して思う存分飲ませてくれたのかもしれない。んん?そうすると私とイタしたのも同情か?そんなんじゃ、誰かに既成事実を持ち込まれてもおかしくないのに。

細かいことはまあいいか、と家で新しい服で身を包んで歩き始めた。

昨日遥に話を聞いてもらって楽になったとはいえ、一晩で完治するほど浅い恋ではなかった。正直まだ遠夜には会いたくないけど、社会人が失恋なんかで仕事を休めるわけがない。足を一歩一歩踏み出して職場へと向かった。

職場では思ったほど酷くはなかった。遠夜とはちょっと気まずかったけど、会社で馴れ合うことはなかったから他の人に関係を知られることもなくてそれはよかったと、心の中で安堵のため息を吐いた。

「お先に失礼します」

何とかいつも通りに仕事をこなし、挨拶をして帰ろうとする。一瞬遠夜と視線が絡まったが、すぐに離れた。こんなことで騒ぎ出す私の心臓が恨めしかった。


「沙羅!」

会社を出てすぐに呼び止められた。考えなくてもわかる。これは遥の声だ。

でも、正直今は顔を合わせたくはない。何を血迷ったのかわからないが、弟分と寝るなんていつもの私じゃありえない。よし、と心の中で決心を固め、ダッシュを試みる。

「だーめっ!」

が、そこは遥。私の考えなんかとっくの昔に見破って、長い腕で私を抱きとめた。

私は身をよじって離れようとする。

「ちょーっと話があるから、着いてきてね?」

そのままずるずると連行されてしまった。


そして連れて行かれた先は見覚えのありすぎる部屋だった。シンプルな雰囲気の中にも上品さが漂う。紛れもなく目の前の人物の部屋だった。

「はい、コーヒー」

「あ、ありがと」

遥は私の思いなど気にする様子もなく私の目の前にコーヒーを置く。

実は私は見た目から勘違いされやすいのだが、甘党だ。

コーヒーはミルクと砂糖を入れたいし、チョコだって大好き。ギャップがありすぎるって言われてフラれたこともあった。それ以来、あまり人には公言しないようにしている。

でも、遥は私が何も言わずともわかってくれる。まあ、幼い頃から一緒に育ってきたのだから私の趣味を洗いざい知っているのは当然だが。

遥の優しい気遣いに私は幾度となく助けられた。

・・・・・・って、現実逃避してる場合じゃなかった。

目の前には悠然と微笑んで私の動きを逐一見ている遥がいる。目が合うとこれ以上ないくらいの優しい表情を浮かべるが、果たしてその真意は・・・・・・?

「ねえ、沙羅。昨日のことってどこまで覚えてる?」

-きた。

私は今までどおりの生活を守るため、さりげなく装うことにした。

「あっと、バーで遥と飲んでたのは覚えてるんだけど・・・・・・」

「その後の記憶がないって?」

「うん・・・・・・」

静かに肯定すると、遥はくしゃっと前髪を掻き分けた。そんなしぐさでも色っぽく見えるのだからうらやましい。私にもそんな大人っぽさがあれば-

思考の泥沼に嵌りそうな自分を叱咤し、現実を見る。

「じゃあ、教えてあげる。

昨日俺と沙羅はね、一晩中激しくセッ」

「わぁああああ!!」

それ以上しゃべるな!必死で叫んで遥の口を塞ぐ。

遥は私の手をべりっとはがして満面の笑みを浮かべた。

「沙羅ってばそんなに照れなくていいのに」

「照れてないっ!」

とりあえずさ、そう言って遥は今までのふざけた雰囲気を一変させて真面目なオーラをかもし出した。こういうところが苦手なのに。そう思いながら仕方なく遥と目線を合わせる。

「付き合おうよ、俺たち」


「……冗談でしょ」

あはは、と笑い飛ばそうとしたのになぜか乾いた笑い声にしかならない。

とにかく気持ちを落ち着かせようと目の前のコーヒーに手を伸ばした。

「冗談なんかじゃないし。

別に付き合ったってよくない?俺たち今までだって付き合ってたようなもんでしょ」

遥は肩をすくめてそんなことを言う。私は感情を抑えきれなくなり心の趣くままに叫んだ。


「ふざけないでっ!私にはれっきとした彼氏がちゃんといたわ。

遥とは親友でしかなかった」

なんのつもりで私に付き合おうなんて提案をしたのかわからないけど、これからだって無理。そう冷たく突き放して遥を見据える。

遥はみるみる眉を下げて悲しそうな顔になっていく。初めのうちはそれを無視してたけどだんだん堪えられなくなってきた。ついに私は怒りを鎮め、優しく遥に話しかけた。

「ごめんね、さっきは言い過ぎた」

すると遥はすぐに元気を取り戻し、私に抱きついてきた。

「ね、じゃあ俺と付き合ってくれる?」

「それとこれとは話が別」

調子のいい遥のセリフを一刀両断する。まったく、油断も隙もあったもんじゃない。


「でもさ、俺は絶対に沙羅を裏切ったりしないよ?」

あいつみたいに。

遥はくすくすと笑いながらそう言った。私はその言葉に唇を噛み締めた。生まれる悔しさと嫉妬の中に、遠夜にどうしようもなくつのる想いがこみ上げる。

不意に、遥は私の唇に指を置いた。何のつもりだと目で問いかけるも、遥はその指で唇を撫で続けた。

「ねえ、俺とあいつと何が違う?」

口調こそ一緒だけど、遥の纏う空気は一瞬にして変わった。私はほんの少し自分の体が震えるのを感じた。それでも遥にそれを感じ取られないように精一杯虚勢を張る。

「ふざけてるの?遥と遠夜は違う人間じゃない」

「そういう意味じゃないってわかってるくせに」

遥がきっと私を見据えて真面目な顔で言うから、私は何も言えなくなった。


遥はそんな私を見て言葉を続ける。

「俺のほうがあいつよりも沙羅のことを何倍も愛してるよ」

嘘でしょ、とは言えなかった。

茶化す雰囲気は全くと言っていいほどなく、私はただ遥を見つめるしかできない。

「もう、あいつに傷つく沙羅を見ていられない。

なあ、俺を利用しろよ。今は俺を好きでなくてもいい。傍に、いろよ」

遥は真剣な表情でそう言った。

私は意を決して本当の意味で遥と向き合った。

「・・・・・・それはできない」

静かに答えた私に、遥はどことなく怒った雰囲気を醸し出した。

「理由は?」

「私が、遠夜を愛してるから」

私がそういうと、なぜか遥は眉をひそめた。そしてすぐにちっと舌打ちをして私を引き寄せた。あまりにも突然のそれに私は抵抗することはできずにそのまま遥の腕の中に飛び込んだ。

逃れようとすればするほど、腕の拘束は強くなった。

それでも尚暴れ続ける私の耳元に遥の唇が近づいた。

「なあ、なんで沙羅はそんなに一途なわけ?

俺に悪いとか思うなよ。いや、悪いと思うなら俺と付き合えよ」

「だからさっきから言ってるじゃない!

私は遥を好きになれないわ」

「俺もさっきから言ってる。それでもいいって。

よく言うだろ?二番目に好きな奴とのほうが幸せだって。

それに俺は有り余るほどの愛情も注げる」

あまりに真剣な遥の眼差しに、言葉を失う。

そのまま視線を泳がせていると、遥は私の髪に口付けた。

そして口を離すと、私と目を合わせた。

「俺の願いを聞いてくれ」

「・・・・・・いつになったら遥を愛せるかわからないのに?」

遥は黙って、私にまわした腕に力を込めた。


* * *

いざ付き合ってみると、遥はとても尽くす彼氏だった。

私がどんなに残業で遅くなっても迎えに来て家まで送ってくれる。

しかも、一ヵ月毎に夕食に連れて行ってくれる。

そんな遥の優しさに包まれて、私の遠夜への愛はだんだん過去のものへとなっていった。


「沙羅!」

そんなことを考えていたら後ろから声をかけられた。

振り向くと、遥が私のところへ向かってきていた。

――珍しいな。いつもは運転席から私を呼ぶのに。


「今日はどうしたの?は・・・・・・」

遥、と続けようとしたら、遥はぎゅっと私を腕に閉じ込めた。

一瞬驚いたけど、心地よい人肌に黙って身を委ねる。

トクン、トクン、と響く心音はいつもよりほんの少し速かった。


ふと、遥が腕から力を抜いた。どうしたんだろうと考える間もなく私の唇は遥によって塞がれた。


伝えられる熱に、体が疼き出す。

遥は身をよじらせた私に気づき、唇を離すと共に私を車に連れ込んだ。


そのまま部屋へと連れて行かれて、ベッドに沈み込んだ。


「愛してるんだ。もう、誰にも渡さない」


呟く声が聞こえたのは、幻聴だったのかもしれない――。




* * *


「お前、何してる」


沙羅の会社の前で沙羅を待つ遥の耳に届いたのはそんな声だった。

それは忘れもしない、あの「遠夜」のものだった。

遥は苛立ちと嫉妬に苛まれながらそれでもそっと様子を窺った。


遠夜は、けばけばしい女と向き合っていた。

一定の距離を置いて、遠夜は女を睨みつけていた。

女は身を縮ませながらも、声高に叫ぶ。

「何って、何もしてないわよっ!」

「嘘をつくな」

その女を静かにさえぎる遠夜は青い炎をその瞳に宿らせていた。

「沙羅に何をしようとした?」


――そこで何故あいつの口から沙羅の名前が出てくるのか。

遥は狂いそうな自分を律して続きを見る。

「なっ・・・・・・。だってあの女狐が悪いのよ!

あたしの遠夜に色目なんか使うからっ!!」

「【あたし】の【俺】ねえ?」

遠夜はせせら笑った。次の瞬間、本来の獰猛な性格を露わにした。

「ふざけるな。お前とは別れた」

「あたしは了承してないわ!」

遠夜はそこでふっと微笑を浮かべる。

「勝手にほざいてろ。そこはどうでもいい。

問題なのは、お前が沙羅に手を出したことだ」

女はそこで目を見張った。

「あなたは自分で振っといてまだあの女を愛してるって言うの!?」

遠夜は黙って煙草を口にくわえた。

シュボッと音を立ててそれに火をつける男の口元には笑みさえ浮かんでいた。

満足そうに煙を吐き出した遠夜はもう一度女と目を合わせた。

そして、口に乗せた言葉を聞いた女は何も言わず走り去った。

『とにかく、もう沙羅には手を出すな。

もし沙羅に何かしただなんて情報が俺の耳に入ったら煙草を持つ手がすべるかもしれない』



「待てよ」

木にもたれている遥を一瞥した遠夜は立ち止まることなく通り過ぎようとした。

「待てって言ってんだろ!」

声を荒げた遥に、遠夜はようやく足を止めた。

「なんか用か?――新橋遥」

ニヒルな笑いを浮かべ、遠夜は悠然と足を組んでそう言った。

「・・・・・・なんで俺の名前を知ってる?」

「調べたからに決まってんだろ。医者のくせにそっちのほうは頭が回んないんだな」

くっと遥の質問を一蹴し、くいと顎を動かす。

「どうせだから答えてやるよ。ほかに何かご質問は?」

「・・・・・・沙羅を振った理由は何だ」

「ああ、それか。

俺は沙羅がお前に心を奪われていることに気づいていた。沙羅は気づいていなかったが、どうしようもないほどにな。

だから俺はあいつを振った」

こっぴどく振ったほうがあいつの心に一生残るだろ?

付け加えられた言葉に、遥は踵を返した。

遠夜はそれを嘲笑い、空いた煙草の箱を握り締めた。

――待ってるさ。沙羅が再び男に裏切られて立ち上がれないほどに傷つくことを。

そうしたら、あいつは今度こそ俺しか見えなくなる。




絡まった糸は、ほどけない。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 遠夜の思わぬ腹黒さにビックリしたのと同時に、大人の色気に陥落しました、はい。 遥そっちのけで遠夜にキュンキュンしっぱなしでしたね。ミステリアスな色気にクールなヤンデレ。こういう人、大好ぶt…
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