こちら最前線異常なし
俺の名前は、大谷茂雄。
陸軍に入隊して間もないまだまだ半人前のこの俺が最前線に立ったのは”ある事件”のせいだった・・・
今からちょうど3週間前、俺は山奥の鎌野町第7陸軍基地に配属になった。
「おい、お前聞いたか?あの話」
「ん?何?あの話って」
入隊した時からずっと一緒だった加藤が聞いてきた。
「お前、マジで知らないのかよ」
「最前線に行った3万人の兵が消えた話だよ」
「ああ、知ってるよその話、でもなんかの間違えだろ」
「間違えでもあるかよ、レーダー上から消えたんだぜ、おまけに無線にも応答なしって怖え~だろうが」
「おい、お前ら私語は慎め」
「すみませんでした、軍曹!」
このいかにも怖そうな顔。
出た、小森軍曹のお出ましだ。
「まじ怖ぇ~よ、あのだるま」
「オイオイ、聞こえるぞ」
その時だった。
基地中に響く警告音。
「こちら本部、緊急出動命令発令、総員出動準備。」
「うぁ~最悪、一体何だよ今度は。」
顔色を悪くした加藤が慌てて準備する。
「もしかして最前線に行くんだったりして」
俺は、加藤をおちょくるつもりで言ってみた。
「おい、ホントにマジそうゆうのやめてくれよ~」
「ウソウソ冗談だって」
そうして基地の中央ホールに集められた俺たち。
「諸君、よく聞け、我々は最悪の事態に直面した。」
待てよ、まさかもしかして・・と思っていた矢先に。
「最前線に出撃する。」
うっわ、マジだまさか本当になるとは。
「おい、おっ大谷マジでお前の行ったこと本当になりやがったぞ」
加藤は完全に血の気が引いてしまっていた。
「諸君、先日の兵隊消失事件の際多くの人材を失った。それにともなって今回は別ルート並びに調査班との連携での出動となる。更に最前線基地との通信もできない状態に陥っているとのことだが我々の任務遂行に問題はない、以上、諸君の健闘を祈る。」
いよいよ出撃だ、正直、俺もかなり不安だった、でも加藤ほどでもない。
「ああああ、どうしよ~おいおい、マジかよ、まだ親孝行してね~のによ~、畜生。」
「どんだけだよお前、別にそんなに心配するもんか?大丈夫だって。」
「そっそうだよな、何俺こんなに焦ってんだよ、落ち着けっつーの」
そう話しているのに俺達は何故か輸送車両に足が進む。
「いいかお前らここからは生きるか死ぬだ、心せよ」
軍曹はいつもと変わらぬ態度で俺達に言っていた。
「サーイエッサー」
そして輸送車両に揺られかれこれ3時間。
ついた、最前線に・・な、何もなかった、何もなかったんだ。
本当に。
「コレが最前線なのか、そしてあの事件の原因・・・・」
一面、見渡す限りの崖。
一体内があったのだろうか?
今になっても謎のままである。