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ヤサグレ聖女とエクセル騎士

ヤサグレ聖女は恋愛相談に向かない

作者: 瀬田えいち
掲載日:2026/09/22

目の前に、うるうるした瞳でこちらを見ているご令嬢。

えーと、誰だっけ。廊下を歩いていただけなんだけど、なんで、わたし、こんなか弱い令嬢に捕まってるんだろ。


なぜか、わたしに恋愛相談をすると幸せになれるというジンクスができたようなんです。誰だ、そんなデマ流したやつ。おかげで廊下を歩いていただけで、知らない令嬢に捕まっちゃったよ。

こういう時に限って、氷壁をつくってくれるエクセルがいないんだよねぇ。

あ、違うわ。エクセルがいないから捕まってんのか。


「えーと、何のお話でしたっけ?」

「気になる人がおりまして」

「はぁ」

「その方がわたくしのことを初恋の人に似てるとおっしゃるのです」

「はぁ。……で?」

「わたくしがその初恋の方の代わりなのではないかと」


……そんなん、知らんよ。めんどくさいな。どうでもいいわ。


「似てるんだ」

「はい」

「別に問題ないのでは?それって彼の好みのタイプってことでしょ?わざわざ彼好みの女にならずともいいってことでしょ。ある意味、ラッキーなのでは?」

「まぁ、そういう考えには至りませんでしたわ!」

「ああ、そうですか。まー、でも、どうせなら、そう考えればいいんじゃないかな?」

「はい!……あ、ちなみに初恋の彼女が忘れられないとかになったら、どうしましょう?」

「その初恋の彼女がどうなってるかしらないけど……今、彼の近くにいるのがあなたなら、そのままずっとそばにいて、がっつり塗り替えてやればいいのでは?知らんけど」

「確かに!そうですわね!聖女さま、どうもありがとうございます!」

「どういたしましてー」


棒読みになったのはしょうがない。でも、ご令嬢は気づかず、優雅な礼をすると足取り軽く、どこぞへと歩いていった。

まぁ、幸せになってくれ。


「神子さま、お疲れ様です」

「これも神子のお仕事なのですか?」


新しい護衛のルドくんとブルーが話しかけてきます。お茶会でゲームをしたせいか、なんか最初から気安い感じでやりとりできて、いい感じです。


「神子の仕事のわけないじゃん。なんか知らんが、わたしに恋の相談をすると幸せになるという謎のジンクスができたらしいよ。もう、勘弁してほしいわ。人の恋路なんて、興味ないっつーの」

「うわぁ、身も蓋もありませんね。俺は恋を諦めようと思う時に神子さまに相談するようにしますわ」

「ははは。そうして下さい」

「ブルーは?どういう時に神子さまに相談する?」

「う〜ん、多分相談はしない……あんまりしない方がよい気がする……」

「ちょっ、どうしてよ!さすがに名前も知らない令嬢と同じ扱いはしませんよ!」

「じゃあさ、相談するとしたら、誰にする?」


ルドくんが突っ込みます。うん、わたしも聞きたい。

エクセルがいないので、ちょっと三人とも弛んでます。エクセルがいたら、二人とももっとピシッとしてるもんね。たまにはこういう時間もいいよね。


「実際に出来るかどうかわからないけど、相談するとしたら」

「うん」

「うん」


真剣に考えるブルー。


「相談したら恋が叶うという聖女さまの他、ご令嬢一番人気の氷の貴公子のエクセル、スーパー侍女のメリーさん、バーサーカーの騎士団長、フレンドリーな同僚、べらんめぇ気味のくうちゃんと人間は異世界人、王族、貴族、一般人と幅広く、おまけに付喪神まで。よりどりみどりですけど」


あれ、なんでわたし、売り込んでるのかしら。

また、真剣に考えるブルー。

2、3分後、ようやっとシミュレーションが終わったらしい。


「で、誰?誰?」

「……該当者なしで……」


あれだけ考えて、まさかの該当者なしか!なんだよっ!


そして、ブルー情報なんですが、わたしが恋の相談にのると幸せになれるっていうのは、きつい意見でもズバッと言うわよ!が受けている、ということが判明いたしました。

言っちゃなんだけど、リザードマンってちょっと怖がられてると思ってたんだけど、誰よりも情報通だった。なぜだ。と思ったら、人間以上の聴覚のせいだった。すごいね。


そして、元々の始まりは、わたしがウダウダ悲劇のヒロインタイプの匂わせアピールを、恋愛相談だと思わず、バキバキにへし折ったことだったらしい。そんなことあったかな。覚えてない。多分、しょうもないことを言われたんだと思う。何か別のことをやってる時に言われてなんとなく返した言葉だったんじゃないかな。うん、さすがにそうだったと思いたい。


しかし、そのおかげで、ズバリと言われた本人が目が覚め、生まれ変わったとか。

へー。そうなんだ。そんなもんで生まれ変わるのかね?だったら、もっと前に生まれ変わりそうだけど。お嬢様だから、直球で言われたことなかったのかもね。それで、わたしが人気?う〜ん、口が悪い占い師とかオネエとか人気あるもんね。絶対にその枠じゃん。


でも、自分の耳に痛い言葉をちゃんと聞けたんだから、偉いか。うん、幸せになれるよ。

何言ったか覚えてないけど。ただ、ちゃんと言われたこと、取捨選択した方がいいと思うよ。

今回は終わりよければみたいだから、よかったけど。


わたし、記憶にありませんが、「だったら、やめちまえ」まで言ったそうです。ひどいね。


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