一章 1-3 大切なのは命?金?
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ダンジョンへの新規参入者を確認しました。
ステータス及びスキルの付与を実行します。
………完了しました。
個体名〔三笘輝真〕のステータスを表示します。
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ダンジョンに入った瞬間、頭の中で女性のような無機質な声が響いたと思ったら、目の前に半透明な板が現れた。
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三笘輝真 LV.1
HP:30/30
MP:10/10
攻撃力:14
防御力:16
魔 力:3
精神力:28
敏 捷:11
幸 運:8
スキル:トレード(U)
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(これがステータスってやつか。さっぱりわからんが、初期値としては良い方なのか?)
「ステータスは確認できたかしら?」
宮前の問いかけに頷き裕太を見れば、得意そうに頷いて親指を立てていた。
「まずはステータス獲得おめでとう。基本的にステータスは他人から確認出来ないけれど、開示するという意思があれば他人にも確認可能になるわ。パーティを組むのに、開示を要求されたりすることもあるから、覚えておいて。ちなみにこんな風に一部分だけを開示する事も可能よ」
彼女は手本を見せる様に、自身のステータスを見せてくれた。
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宮前花蓮 LV.81
HP:1760/1760
MP:2040/2040
攻撃力:1627
防御力:1023
魔 力:1360
精神力:2047
敏 捷:2381
幸 運:43
スキル:風魔法(S)・剣術(C)
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「ちなみに私の切り札となるスキルは開示していないわ。貴方達も見せていいものとそうでないものはきちんと考えるようにね。ダンジョンの中では何が起こるかわからないから」
彼女の言葉にに嫌なニュースを思い出してしまった。今では稀になったが、半年前に宝箱から出た【万能薬】を巡りダンジョン内部での殺人時間が起きた。この事件は大々的にニュースで取り上げてられ、犯人はハンター資格剥奪のうえ、徴兵付き終身刑の判決を下された。
そんな事件があったばかりなので、彼女の忠告は俺たちの気を引き締めるのに充分過ぎるほどの効果があった。
「はいはい。そんなに強張らなくていいわよ。今日は私が守ってあげるから、さっさとモンスターを狩に行くわよ」
パンパンっと手を叩き、場の雰囲気を切り替えた彼女は、洞窟といった様相のダンジョンを歩き出した。
ダンジョン内は、義務教育で観た映像と同じように、岩壁自体が青白く微発光しており、少し薄暗いながらも先まで見通す事ができた。たまに大岩があり死角になる箇所もあるが概ね問題はないように感じ大きく息を吐いた。
「全然いないな〜」
モンスターを探しはじめてから十五分ほどがたったが、いまだ発見することができず、裕太は緊張が切れたようで頭の後ろで手を組み、通路に転がっていた石を蹴飛ばした。
「あれだけの人数がダンジョンに入ったのよ?1階層は多分狩り尽くされてるわよ」
「え〜!じゃあ2階層まで行かなきゃいけないの?」
「そうよ。2階層への階段に向かう途中でリホップしたのがいればラッキーぐらいの競争率になってるはずよ」
「それなら早く2階層に行って狩った方が効率がいいね」
「慌てる必要はないわ。どうせ他の受講者は2階そうには行けないから」
他の受講者が2階層に行けないなら、効率はグンと上がるが、どうして行けないのかが気になる。
「なんで、他の受講者は2階層に行けないの?」
俺が疑問に思っていても、尋ねる事ができないことを平気で尋けるのが裕太の凄い所だ。
「単純な話しよ。スキルの連発でMP切れを起こして動けなくなる。それをフォローするのに、その場に留まる。その繰り返しで2階層まで来られる初心者が居ないのよ」
「なるほどね〜。なんか子供みたいだね〜」
「ほんと、それ!いくら注意しても言うこと聞かないバカが多くて困るのよ!こっちはやりたくもないお守りをやらされて、怪我なんかされようものなら、文句は言われ、ギルドからの評価は下がるしで踏んだら蹴ったりなんだから!」
「「た、大変だったんだね…」」
鬼気迫る彼女の愚痴に、珍しく裕太が引いている。かくいう俺も彼女の苦労を理解しながらも、引いてしまった。
「ま、まぁ、貴方達はちゃんとわかってるみたいだから助かるわ」
「いや〜、そもそも俺たちスキルの使い方もわかんないし」
フイっと赤く染まった顔を背け、取り繕う彼女に追い討ちをかけたのは裕太だった。俺には無理だ。お前が勇者だ!
「えっ?わかってて聞かなかったんじゃないの?」
裕太の言葉にウンウンと頷く俺を見て、自分の勘違いに、ますます顔を赤らめた彼女は年相応に見えた。
「お、落ち着くのよ!こんなのレッドワイバーンを狩った時に比べればなんともないわ!だから落ち着くのよ!」
(いやいや、聞こえてますよ?というか、キャラが壊れてきてないか?)
「ん、んんっ。スキルの発動にはMPと想像力、そして発動の意思が必要よ。例えば私の風魔法ならこんな感じで風の"球"を"想像"して、"造る"という"意思"で発動するわ」
彼女が掌を上にむけると、説明とともに直径10cmほどの球が浮かんだ。
「え〜っと、こんな感じかな?」
そんな声に横を向けば、同じように掌を上にむけた裕太が、水の球を浮かべていた。
「あら、水魔法を取得してたのね。よかったじゃない。」
2人が簡単にスキルを発動させていたので、俺も使ってみようと【トレード】に関する事柄を思い浮かべ、発動を念じるが…。
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当該スキルの発動はキャンセルされました
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(つ、使えない!?)