7話 霧のゾンビ村 2
魔除け効果はある霊木の灰を全員被り(煙い)、俺達は慎重に密猟者達の拠点へと足を踏み入れた。
「結構規模あり過ぎ。村じゃん」
「資料には元は小鬼族の棲み処だった可能性というのもありましたね」
「長く放置されてるっぽいしな~」
「むぅ・・」
「うわっ、頭の葉っぱに虫が凄い集りますっっ」
様子を見つつ資料と照らし合わせ、中身が空の檻がちらほら転がってる酷い有り様の密猟者拠点を進むと、
「っ! いるっ。あそこもっ、そこもっ、あっちもっっ。多過ぎだぁ!!」
警戒スキルで感知しまくったユーレアっ。
視線の先の傷んだ家屋の暗がりには・・
「イイィッッッ」
「ギギギッッッ」
日光を避け、密猟者の慣れ果てらしきゾンビ達がみっちり詰まってた!
「やっばっ、燃すか?」
固まってはいる!
「火系魔法ですか? 日光も効きますし悪くはないと思いますが、1軒燃したら一斉に破れかぶれで襲われる、かも?」
「じゃあの櫓の上から・・ボロ過ぎかぁ」
拠点にはボロボロになった物見櫓があった。
「ゾンビのいない建物の屋根の上からというのはどうです?」
「いいなそれ、ヤポポ賢いぞ」
「デヘヘ」
「何しても1ヵ所で長く注目されるのはマズそうだぞぅ? 腹ペコに見える!」
建物の陰のゾンビ達は我慢の限界がきているようだっ。壁、ガンガン叩いてる!
「ユーレア! 警戒スキルで『警戒の必要の無い』建物を探してくれっ、なるべく見晴らしのいいとこで! なる早でっ」
「ええっ? 入口まで戻る? 戻り過ぎ? 見晴らし・・あ! あの奥の小屋いいかもっ」
俺達はユーレアが探知した、他の場所より一段高くなった場所にあった傷んではいる小屋に向かって走りだした!
わりと櫓に近いな。
と、近付くとその小屋に魔力を感じた。
「魔除け? 魔除けだ! あの小屋生存者ありっぽいぞっ!」
「調査部員かもしれんぞぉっ」
小屋の周囲にはだいぶ薄れてはいるが霊木の灰が撒かれ、内部からも魔除けの基点になる物の気配を感じた。
俺達はここがゾンビが詰まった家屋から離れている事や、数ヶ所ある閉められてはいるが板張りまではされていない小屋の窓から屋根に上がる動線を確認してから、ユーレアに小屋の鍵を開けてもらった。
「ライト」
照明魔法の明かりの先行させるラダ。反応は無い。中に荒らされた形跡は無かった。
「行こう」
「警戒スキルに反応無いよ?」
中に入る。おおよそ中央くらいに魔法道具、魔除けの石神像が置かれている。
環境によるが発動させると数日魔除けの結界を張る、そこそこ高価な道具だ。ヒビが入り魔力は切れ掛かっていた。
「建物の外を霊木の灰で覆って負荷を軽減させて長持ちさせてたようです。素人の手際ではありませんね」
「でも、人もゾンビも、何も気配が無さ過ぎ何だけど・・」
俺達は無人に見える魔除けの消え掛かった小屋の中でちょっと途方に暮れた。と、
「ん? あれ! ギルドの手帳じゃないですかっ!」
棚の一つの上に確かに汚れたギルドで売られてる手帳があった。
早速中を読んでみると日記の記載がある。
〇〇の月〇〇日、ゾンビと遭遇! 相棒とはぐれてしまったが、この呪い原因は魍魎の小箱と推定される。あの妖術師のような化け物が・・ああ、ダメだ! 小屋が見付かったようだっ。最後の手段を講じるしかない。くそっ、帰ったら酒場のあの娘に告白しようと思ってたんだが、おお神よ!
という所で日記は途切れていた。
「小箱?」
「最後の手段というのも気になります」
「それより自分でフラグ立て過ぎっ」
とユーレアのツッコミが入った所で、
バタン!
突然開けていた出入口のドアが閉まり、直後に、スゥゥ・・・と、
ドアや窓の隙間等から霧が入り込んできた。石神像が呆気無く砕け、小屋の魔除けも消える!
ユーレアが即断して窓まで駆けて伺った。
「ゾンビが来てる! 超多過ぎっ」
「霧で日光を遮ってますね! これは攻撃ですっ」
マジかっっ。
「うわっ? 走るヤツらいるよっっ。ヤバいヤバいっ」
ユーレアが転げるように窓から離れたっ。
ギムオンに目配せし、俺は武装を片手剣から槍に替え、ギムオンも銅の護拳を腰の留め具にキープしつつ三節棍を収納ポーチから引っ張りだした。
「ウゥバァーッッッ!!!」
ボロ小屋の窓を破って腐った死体のアンデッドモンスター、腐屍鬼2体が上半身をねじ込んできたっ。
俺とギムオンが銅の穂先の槍と三節根を振るって、2体の頭部をブッ潰すっっ。
飛び散る腐った脳髄と目玉と舌。窓枠に挟まったままビクビク痙攣する2つの胴体。その後ろの霧の向こうから迫る、さらなるゾンビどもっ!
「ぎゃーっ、です! 臭気持ち悪い~っっ!!」
「うわっ、ローブの裾に歯茎がぁっ?!」
「この小屋っ、囲まれ過ぎぃーっっ!!」
画なら画風が変わってるヤポポ、ラダ、ユーレア。壁もドアも叩かれまくるっ!
どうする? まずは屋根にっ、どうやって?? その時、
「こっちだ!」
天井の戸板が外され、マントを羽織った黒い肌のフェザーフット族の男が顔をだした。おおっ?