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4話 マーリクギルド訓練所

マーリク市の冒険者ギルドの訓練所とその宿舎は市の外れの農地や淡水水産物養殖地に隣接したエリアにある。


合格者30名ちょいに滑り込んだ俺は共通体力訓練で屋外教練コートで延々走り込みをしていた。

問題無く合格してるギムオン、ラダ、ユーレアも参戦中。


「オラぁっ! 社会不適応のビチ〇ソどもっ!! ヘバってんじゃねーぞっっ?!」


火を吹く赤色種の騎竜に乗った教官が最後尾からドヤしてくるっ。


「はぁはぁ、これはっ、明らかにパワハラですね!」


布の服の上から1キロの重し入りのベストを着せられて必死に走ってるラダ。眼鏡はバンドで固定。


「野外やダンジョンのモンスターは裁判じゃ引いてくれないじゃないの? 甘過ぎっ」


3キロの重し入りのベストで涼しい顔で走るユーレア。


「はっはっはっ、なせばなる! しっかり走ろうっ!」


40キロ(!)の重し入りベストでドスドス走るギムオンっ。


「何だかなぁ」


俺は重し10キロ。普通にキツい。この後、重しベスト着たまま『ひたすら懸垂』の訓練が待ってんだよ・・



そんな感じで午前中の体力系トレーニングで絞られた後はドカ盛りの昼食と安価なポーションを平らげ、ギムオン以外は胸焼けしながら食堂前で職種ごとの座学や技術系講義を受ける為に別れる。


戦士職の座学は、基礎医療、基礎兵法、把握しておく必要のある領兵や国軍兵関連の基礎知識、マフィアやテロリストに邪教徒に関する基礎知識、魔族への対応、ダンジョン知識、モンスター知識、野外活動知識、教会関連、ギルド周りの法律知識、ありがちなトラブルシュート等々・・どれも基礎的だが多岐にわたる内容だ。


こりゃ腕っぷしがあっても中等1年の座学はできないと確かにお手上げだろな、て感じ。

出身地や極端に貧乏な出自だと不利な気もしたが、『越えてこい』てとこか?



戦士職は午後4時過ぎくらいから技術系訓練。


担当教官から必修の格闘と短剣以外に、近距離2種と遠距離1種、専攻する武器を選ぶように言われ、俺は『片手剣と盾』『槍(両手持ち)』『弩弓(どきゅう)』を選択した。


近接は教練傀儡(トレーニングゴーレム)という木製の等身大くらいのゴーレム人形相手に模擬戦を繰り返す内容だったが、遠距離は障害物コースを駆け回りながら的を次々射っていった。


技術系講義が始まると春季2次合格の戦士職志望は5名だけだったから(戦士職はわりと余りがちだから定員が少ない)、ちょっと競い合いになって教会中等学校の体育の競技みたいで個人的には楽しかったりもした。



そんなこんなで訓練所に入所してから3週間後。

俺達今期生は全員マーリク市近くのギルドが買い上げて魔除けの塀で囲ってある演習用の森に来ていた。


「ビ〇グソどもっっ! クソ補習生以外は今回が最後のクソ野外実習だっ。今から7組、(パーティー)を作れ! 友達いないクソぼっちはここでクソ死ねっっっ」


酷い事しか言わないなっ、この教官!


俺、ギムオン、ラダ、ユーレアのイツメンはすぐ組めたが、1人、


「ひぃ~っっ」


と半泣きであぶれてる植物人(ワープラント)族の小柄な女子がいた。


「あの子、僧侶職だよ。今期の女子ばっかりの僧侶職志望で1人だけ地母神信仰でワープラントも1人だけだから、わりと宿舎でもハブられ過ぎ」


女僧侶同士でもハブったりすんだ。何かショック・・ま、しょうがないな。


「お~い。俺らのパーティーに入るか? このままだと教官にクソクソ言われるし」


「あざまぁすっっ!!!」


勢いっ。ダッシュでこっち来たっっ。


「よーしっ、〇チグソども! クソ慣れ合って、偽りの仲良しごっこで集まりやがったな? クソがっっ」


どーやってもクソって言われる。


「これから7つのコースに別れて多少は魔除けを効かせたクソ林道に入ってもらう。事前に大雑把なマップと、コース指定の無い森で出現するモンスター及び採取可能な素材の一覧資料をクソ配布する! モンスター部位を含め、総売却額が40万ゼムになるように収集し、午後6時までにゴール地点に到着しろ! 遅刻っ、金額不足っ、全滅! 全てクソ補習送りだっ。全滅したパーティーは蘇生費を借金させて活動を始めさせる!! 貸与、支給物資は受付でクソ確認しろっっ!! クソ注意して、だが全滅しろっっ、現実はクソ無慈悲っっっ」


ある種の才能を感じる。

演習自体は最後だけに総合力の確認だな。


「地形からリストのモンスターと素材の位置を判断しろ、という事ですね」


「時間配分によっても違ってくるかと・・あ、わたしはヤポポ・グランリーフですっ。故郷の寺院の神官になる為に勉強してますっ」


「ラダ・エルダーブックです。魔法道具屋の三男です」


「マサル・ヒースヒルだ。元馬番だぜ?」


「ギムオン・アイアンパンである! 私も修行だっ」


「前に宿舎でも言ったけど、ユーレア・コンドルハート。あんた隙あり過ぎ」


「は、はい~」


自己紹介は済んだ。うむ。


貸与の防具は革や甲羅製。物理系武器は概ね石器製だった。まぁ、普段の訓練よりマシ、てくらいか。


糧食何かの通常活動用品以外の消費道具は安価ポーション3本、毒消し薬2本、魔法石の欠片1個、光り玉2個、癇癪玉2個と諸々仕舞える魔法道具、収納(しゅうのう)ポーチが全員に支給された。

う~ん、物資はカツカツな加減だな・・


「演習だけに狭い地域でもやたらモンスターの種類が多過ぎだね」


「素材も豊富であるぞ?」


「素材はある程度利用できます。僕は多少錬成(れんせい)職能力(アビリティー)があるので」


「わたし、植物探知敏感です!」


「スコアを競うワケでもないしさ、固くいこうぜ? 危ねーし」


俺達はマップとモンスターと素材の資料を囲んで、ミーティングを詰めていった。


が、気の早いパーティーはさっさと出発したりしだして、もう5つのコースしか残ってないや。

そんなゆっくりもしてらんないか。

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