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マサル・ヒースヒルの冒険記  作者: 大石次郎


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29話 形の魔法 3

多数の図形が集まった鳥の群れに乗り、俺とアージガンテは『形の世界』飛行していた!

浮遊物が多い空間だから回避しながらの飛行はわりと強引っっ。


「うっはっ!」


「落ちないようにな。ラダに魔法石の欠片を買ってこさせてはいるが、私の魔力は有限だ。『無駄な事』に力を使わせないように。始末と救助。仕事は2つ」


「了解・・」


しばらく進むと、ラダ発見! 図形でできた『蟲のような物』の大群に追われてるっ。


平服だが眼鏡バンドをしたラダは図形でできた『馬』に乗りながら『図形の弓』を使って時折応戦してる。矢は周囲の図形を操って成形できるようだ。

ラダが騎馬射撃とか、訓練所でも見た事無いぜ。


「いたいた! 何なんだ? あの蟲達っ。モンスターだよなっ?」


「のような物である。まず、前提として『魔法がある限り、その世界に魔物は現れる』という法則がある。本は不完全ながら1つの世界。それも魔法の書ともなれば、『魔物のごとき物』つまり蟲も涌く」


言葉遊びがそのまま形になってるような? いや、まぁ『本』は文字で構成されてるしな・・


でもってふと思った。


「じゃ、魔法が無い世界にはモンスターはいないのか?」


「推測だが、おそらくそのような世界でも『魔』は違った形で現れるだろう。魔法がまた、そうであるように」


「???」


わかったようなわからんようなっ、取り敢えず半泣きで逃げてるラダのレスキューだ!


「ラダ!」


「マサルっ? 君さ! 何で立入禁止のとこに入ってくるかなっ! 本にまで入ってきてるしっ、それに僕、魔法の行使中だったよねっ? 危ないよねっ?! アージガンテさんもっ」


怒りの長文モードに入ってるっ!


「マサル、ヤツは話が長い。片付けるのだ」


「了解! ええっとっ、『コイツ』で」


俺は収納ポーチにしまっていた『図形のワンド』を取り出した。何となく万年筆っぽい。


「腕力は特別必要無いが、中で直に始末するには身体性は必要だ。ラダはその辺りはもう1つだったが、マサルよ。魔法は使えずとも、『短剣』は振るえるな?」


「戦士職だぜ? 鳥のコントロール任せた!」


俺は飛び回る鳥の上で立ち、踊るように図形のワンドで宙を『斬った』。その先に蟲達がいる。


ザシュッ!


その一撃は『文に記されたように』回避も防御も叶わず、蟲達を抉って消滅させてゆく。


「凄っ。『無双戦士マサル』状態だぞっ?!」


「それは魔法を行使しているだけだ。勘違いするなマサル、お前は『いくらか配慮して飛ぶ鳥達の上で演武できる』というだけだ。その杖の魔法も私が発動している」


「ツッコミ厳しいなぁ、アージガンテ! もっと盛れたら後世に技が伝わったんじゃないか?」


「・・賑やかしは好かない」


機嫌悪くなっちゃった。言い過ぎたか? まぁ今はよし! 俺はガンガン蟲達を消していったっ。

援軍が入った事で、ラダも落ち着いて援護射撃できるようになり、俺達は蟲軍を殲滅する事に成功したっ。


「ふうっ、これで終わりか? って、めちゃ薄くなってる??」


喋らなくなったから機嫌悪いのかと思ったら、アージガンテは透けた姿がかなりスカスカになって今にも消えそうになっていたっ。


「う~む・・数が多かったな・・」


「マサル! アージガンテさん! 一旦降りて下さいっ、処置しますっ!」


アージガンテは鳥達を降下させ、解除し、俺はスカスカのアージガンテを抱えて(身体、軽過ぎるっ)図形馬で駆け寄ってきたラダの元に急いだ。


「うう、蟲どもにトドメを・・」


「本の蟲の完全処理は外に出てから行いますっ。まずはあなたを再構築しないと!」


図形馬から降りて解除したラダは、収納ポーチから魔法石の欠片を3つ取り出し、ちょっと前に買った中古の『(ともしび)の杖』もポーチから取り出し、構えた。


この杖はラダと相性がいいらしい火の属性。


すぐに炎が点り、魔法石の欠片を砕きながら凄い魔力濃度の輝く炎の変わっていった。


「馬と弓は下手くそだったが、それはいい錬成だ。『形の魔法』を学んでよかっただろう? ラダ・エルダーブック。あとは『自分が戸締まりを忘れたのに友達に八つ当たりしない事』等を学習するといい」


「心得ました、マスター・アージガンテ。まだこれからも御教授、お願いします」


薄らぐアージガンテの再構成が始まった。魔法は詳しくないが、火と魔力だけじゃ足りないんじゃないか? と思ったが、ラダは周囲の図形の世界を砕いてアージガンテの存在を補いだした。


そうか、この人、俺達とは(ことわり)が違うか・・


「私は亡霊、いや、本質的にはヤツら本の蟲ともはや同質の者だがね」


「僕は貴方が『喋るヌイグルミ』でも特に気にしませんよ? では、錬成を、完了させます!」


輝く炎が図形と一体となり、アージガンテを元の少し透けた程度の姿に安定化させた。


「・・ふん。外の世界で同じ事ができると思わず、己の技の限りを見誤らないようにな」


「そこはありがとうでいいだろ?」


「マサル」


ともかく、一段落ついたようだ。


それから俺達はアージガンテが作ってくれた『図形の門』を通って現実に戻ったワケだが、外は『発炎筒騒動』で大騒ぎだった。が! ラダは本の蟲の最終処理に即、専念。

俺は、燃したのが俺という事もあって代わりに平謝りだった。


ラダは煙害の現状回復に錬成アビリティーで有効だったのと『他の魔法書の本の蟲対策』もできるようになった為、ラダが趣味で登録していた立入禁止エリアでの閲覧可能になる追加有料会員権は失わずに済んだ。


さらに『形の魔法書』の貸し出しまで、修行を修めてから論文を出す事を条件に許可された。

そうつまり、


『むしろ大体俺の手柄と言っても過言ではない』


のだ!! ふっふっふっ。



そして後日、


ラダは樫木亭の一階の食堂の窓辺で1人、形の魔法書を読み込んでいた。アージガンテが外に出てくる事は今のところ無いようだが、日々内容が変わるらしい。


「アレ、俺の手柄だかんな? ふふ。ラダが出世したら、切っ掛け、『俺』な」


ルートビア片手間に他のメンバーに自慢する。ドヤぁっ!


「『図書館の放火魔』が調子乗り過ぎ」


「放火してねーしっ。めちゃ配慮したしっ、兜の内側焦げたしっっ」


語弊があるぞっ?


「ラダが錬成術を高めたら、ローストチキン等も錬成できるんじゃないですか?」


「ヤポポ、ローストチキンはチキンとスパイスとタレを用意して、下処理して、オーブンで根気よく焼くと作れるぞぉ?」


「それは錬成ではなく『調理』ですからぁ!」


珍しくギムオンがヤポポにツッコまれ、現実世界でも一段落ついた形の魔法騒動だった。

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