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マサル・ヒースヒルの冒険記  作者: 大石次郎


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28話 形の魔法 3

雑然とした通路をずんずん進んでゆく。何かの夢の中の景色みたいだ。


作業ゴーレムがたまにいるくらいで人気は無かったが、ここまで2人だけ、作業ゴーレム達に指示を出してる司書と山積みの本を掻き分けるように目当ての本を探してる司書を遠目に見掛けていた。


あちこち別れ道もあったから、これで合ってるかはなはだ怪しくなってきたが、一応一番人の通りがあるらしい多少は片付いた通路を進んでいた。


勝手なイメージだが、ラダがユーレアのように障害物をヒョイヒョイ避けて素早く移動するのあまり想像できない。

俺はそこそこ早歩きで進んでいるが追い付いてない所からすると、『通り易い道』を通ってる確率は高い気がした。


のだが、


「ん?」


行き止まり来てしまった。いやよく見ると、左に積まれた本でできた細い道。右には床に散らかった品々を跨いでゆけば通れそうな道というか、『通れないではないスペース』があった。


「・・・」


基礎的な『追跡』については訓練所で習った。重要なのは観察と想像力。


ラダはよく着てるローブ風のゆったりした平服だった。裾もカパカパしてるヤツ。

ラダの運動神経からするとずっと手帳を見ていなくても、右の通路を進めば、積んでる物を全く崩さないって事はまず無い。


俺は屈み、収納ポーチから望遠鏡まで取り出して調べた。


天井からポツポツ吊るしてる暗めの魔力灯の明かりを頼りにしっかり見る。


「・・違うな」


ラダ以前にしばらく誰か人が通った形跡が無く、埃がうっすら積もってる。

対して左の横歩きが必要な程狭い通路は床に埃がそう積もってない。


「左だ」


俺は左通路へと進みだした。



果たして、ラダはいた。それも魔法の書籍や関連道具等が積まれたブロックの魔法陣の上にいた!


魔法の本を一冊本を広げ、小声で呪文を詠唱している。


魔力が高まり陣が反応し風が起こるようにして魔力が渦巻きだす。広げた魔法の本も激しく呼応っ!


何だぁ??


「ラダっ?!」


「! マサル??」


物陰から呼び掛けにギョッとしたラダ! 途端っ、


「あ」


陣の展開が乱れ、魔法の本の発動も不安定化しっ、ラダはあっという間に開いた魔法の本に吸い込まれてしまった!


「ちょっ?!」


俺は慌てて駆け寄ったが、陣は静まりきらず、ラダを吸い込んだ魔法の本も中に浮いたまま、魔力を放ってる。


「う~っっ」


俺は必死で最善手を考えた結果、収納ポーチから兜とギルドの発炎筒を取り出し、逆さにした兜の中に着火させて煙を噴出させた発炎筒を慎重に立て掛け、周囲に書籍等が無い床に置いた。

これで程無く司書か作業ゴーレムが飛んでくるはず!


「よっしっ。6級のラダが平服でちょっかい出せる程度の魔法の本だ。イケる!」


自分にそう言い聞かせ、俺は発動の止まらない魔法の本に右手を差し向けた。


想定の5倍くらいのパワーとスピードでっ、俺も本に吸い込まれた!!


だぁーーーっっ??!!!



・・・気付くと、何だここは???


「図形??」


そう、図形。全てが魔力で描かれた図形の世界だった。

地面の図形だ。立てる事は立てた。

無数の『図形でできた湖』の上にいるようだ。


「どーいう事だよ? おーいっ! ラダーっ!!」


返事は返ってこない。この空間は図形の湖だけでなく、大小の、あるいはそれらが固まった『図形の塊』も浮遊している。壁のような形態を取る、塊も見えた。


「何かの・・魔法のトレーニングの本?」


「正解だ。図書館で発炎筒はどうかと思ったがな」


目の前に図形が集まり、ローブを着て杖を持った半透明の袋熊人(ワーコアラ)族に変わった。たぶん高齢だと思う。


「おお?」


「私はアージガンテ。錬金術師だ。お前達の時代からすると大昔の者さ。この本『(かたち)の魔法書』には私の思念と魂の一部を込めてある。まぁ亡霊さ」


ぬいぐるみみたいだが、皮肉な表情をするアージガンテ。


「錬金術師は特に、魔法陣を多用する。『形を書き換える魔法』だからな。ゆえに、私は錬金術師は図形の扱いに長けるべきといった主旨の教育論を唱えたが、現在の世界を見る限り広まるどころか私も私の論も、忘れられられてしまったようだな。ふん!」


さっきより皮肉な顔をするアージガンテ。コアラ顔のバリエーションに感心してしまう。


「お前が探しているラダは、たまたま錬金術の素養があり、たまたま埋もれていたこの本をここで見付け、私のカリキュラムを受ける事になったのだが、1つ問題があった。お前が余計な事をしたせいで問題が2つになってしまったが」


「いや、あれ? さっき呼び掛けちゃったから、だろな。はは」


冷や汗止まらんっ。


「笑い事ではない。ラダには『本の外から』安全に作業させるつもりが、こうなっては中から始末をつけるしかなくなった」


「始末? 何を??」


急に不穏だ。


「決まっているだろ? ここは本の中だ。本の敵といえば、『本の(むし)』だ」


当然といった風に言ってくるアージガンテ。


本の蟲?

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