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マサル・ヒースヒルの冒険記  作者: 大石次郎


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27話 形の魔法 1

マーリク市に戻ってきた俺達は『4~5日休業』を決めた。雨季の終わりから何だかんだで休めてなかったからさ。


久々の樫木亭は妙に混んでいて、大部屋が取れなかったからコスパ悪いが男子3人は中程度の部屋。

女子2人は『どうせ寝るだけだし、洗面台とちゃんと飲める給水樽(きゅうすうたる)があったら何でもいい』と(主にユーレアが)言って、小部屋を借りる事になった。


装備の補修や消耗品の補充は途中の街で済んでいたし、装備の更新をするには段々求める品の価格も上がってきたからちょっと早い。

当面、買い物は日用品を買ったりするくらいかな?


オフ初日はユーレアはよろず屋フルカに冷やかしにゆき、ギムオンは指圧だか整体だかを受けにゆき、ヤポポは安定の食べ歩き、俺は取り敢えず実家と水晶通信で連絡を取る事にした。


ラダは俺とギムオンが出掛けるタイミングで、寝巻きのままシリアルにミルクを掛けたのをモソモソ食べていた。


「ラダは出掛けないのか?」


「午後から有料図書館にでもゆこうかと思ってます・・」


今、午前9時半。だいぶゆったり動くつもりだな。


「そっか」


「戸締まりするのだぞう?」


「了解でーす」


俺とギムオンはラダを置いて出掛けた。



一番安いギルドの水晶で実家と連絡取るだけのつもりだったが、


「マサル・ヒースヒル! マサル隊のリーダーだな?」


とギルド職員に掴まって、これまでのクエストのレポートの甘い所を直すように言われ『2時間』がっつり食堂の机で書類書かされた。トホホ・・


「あー、実家は妹が何か珍しい物送れ送れ言ってくるし、書類書かされるし、いまいち休暇になってないなぁ」


愚痴りながらマーリク市のギルド本館を出て、大通りの方に歩いてみる。

収納ポーチは付けてるが、平服に汎用ダガー1本差してるだけの楽な格好。


「・・・」


馬車や竜車もガンガン通る都会の景色も、もう慣れっこさ。


都会の俺。俺と都会。むしろ俺が都会? みたいな。ふ、ふふふふふ。


「お?」


何とはなしに顔を上げると、市の有料図書館ゆき、の乗り合い馬車の停車場があった。


「ラダが行くとか行ってたな。そういや俺、行った事ない。有料っていくらだっけ?」


別に読書家でもないが、暇だし、食堂でマラサダ摘みながら書類を書いてたから腹も減ってない俺は、気まぐれに有料図書館とやらに行ってみる事にした。

どっかにいるはずのラダは詳しいだろう。



馬車で到着してみると、思ったよりデカい建物だ! さすが有料施設っ! シルエットがロールケーキ的だ!! このロールケーキ、有料っっ!!!


「・・入るか」


一通り内心でリアクションが済んだので俺は図書館に入館した。


有料で!


中に入ると、時を経た紙とインクと保護剤の匂いする。あっちもこっちも書架のダンジョンの如し景観っ。

そして静寂。自分の足音が響く。


「さすが、有料だな・・」


無料だと金持ちエリア以外はもそっと治安悪いだろう。


俺はいくらか緊張しながら歩き回った。本はそれこそ山程あったし、蛙の魔女の本何かは気になるが、よく考えたらえればあれは児童書!

くっ、『ダガーを持った男』が児童書ゾーンをウロウロするのは中々ハードだ。


俺は冒険者だが、そこは冒険しないぜ?


「どうしていいかよくわからんから、取り敢えずラダを探すか」


が、ラダは遠目にすぐ見付かった。児童書ではないが、蛙の魔女の歴史資料等からその実在を浮かび上がらせる、的な本を流し見してる。

バンドは外してるが、いつもの強化眼鏡にローブっぽい平服だ。


「・・何て、探し回り甲斐の無いヤツだっ。ゼロ点だ!」


しょうがないから俺は『ラダに見付からずに肩を叩いて振り返らせる』というルールを自分に課し、密かに近付く事にした。


気配を消し書架から書架へ、スッ、スッと隠れて移動する。時に司書が押す本を積んだワゴンの陰に隠れて移動する。


順調に距離を縮めた。しかし!


パタン。


あっさりと蛙の魔女の実在を調べた本を閉じると、ラダはさっさと書架の奥へと歩き去った。


(淡白ぅ~~っっっ?)


俺はラダのドライさに困惑しつつ、今さらやめられないので気配と足音を殺してラダの後を追った。


その内、立ち止まってまた何か本を手に取るだろう。その時がチャンスだ!


迷わず奥へ奥へと進むラダ。密かに追う俺。


進むラダ。追う俺。


進む進むラダ。とにかく追う俺っ。


ラダは壁側まで歩くと、いつの間にか手にしていた手帳を熱心に見ながら『関係者以外立入禁止』と札を掛けられた扉を開けて中に入ってしまった。


「え~っ??」


どーゆう事? 何の関係者だよ???


俺も入るか? 入らないか? ・・周囲に他の来館者や司書の視線は無かった。


鍵は、掛かってない。


「ええい、見付かったらローリング土下座するだけだっ!」


俺も勢い任せで扉に入った!


「・・・っっ!」


中は狭い通路だった。通路には正式な書架スペースと違って、古書店のように雑然とあちこちに本や巻き綴じ書(ロール)、その他、本でもない古物や雑貨の類いが置かれている。


「こっちか?」


ラダが扉を閉めてから去った気配は確か入って左だった。俺はそっちに歩きだした。


「お邪魔してまーす・・」


一応小声で言いつつ、歩く。しばらく進むと、


「!」


小型の魔法傀儡(ゴーレム)だ。軽作業用らしいの木製のが2体、進んでる通路の扉も無い脇の小部屋でロールと綴じ本と雑貨や古物を整理していた。


「片付ケテモ片付ケテモ散ラカス。人間達、ダラシナイ」


「今度、すとらいきシテミヨウカ?」


愚痴ってる小型ゴーレム2体! めちゃ自我あるぞ??


まぁいいか。だが、このまま通ると感付かれそうだ。俺は周囲を見回し、ゼンマイ式の鼠の玩具の雑貨を見付けた。


(やるか)


俺はそいつを持って一旦通路を下がり、なるべく音を立てないようゼンマイを巻き、それをキープして再び通路脇の小部屋の出入口の所までくると、角度を調節し、ちょうどゴーレム達の背後の踵の辺りを通り過ぎるよう放ったっ。


シャーッ!


軽快に走る鼠の玩具っっ。


「ウワーッ?! 鼠??」


「イヤ、コレハ機械ダゾ? 同類カ?」


「魔力こあヲ感ジナイゾ??」


ゴーレム達は作業を中断し、ロールの山に突っ込んだ鼠の回収に向かった。しゃっ。


俺は素早く出入口を通り過ぎ、やり過ごした。

ああいう玩具、陽動に使えるな。よろず屋フルカで売ってたっけな?

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