25話 ビスケットクラウン 2
うん、状況を整理すると、
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1、コンテストに関して
ビスケットクラウンの伝統菓子部門は事の始まりのビスケットマフィンをベースにした菓子を作る部門。
この部門は数十年前から1グループに付き1つのエッセンスをベースに創作する習わしがある。運営はエッセンスが被らないよう昨年度のグループの活躍を見て被らなそうなグループを選出している。
マクシアングループはミストキャラウェイの扱いが得意でそのつもりで選ばれ、当人達もそのつもりで準備してきた。
2、トラブルに関して
しかし先日突然近隣の菓子素材市場で元々希少なミストキャラウェイが何者かに買い占められた! さらにマクシアン達がストックしていたミストキャラウェイも倉庫に侵入した何者かが酢を掛けて(酷っ)台無しにしてしまった。
マクシアングループは代替え素材で試作をしているが、急過ぎた事もあり、上手くはいってない・・
3、トラブルシュート案
予算や時間的に誰かがミストキャラウェイが自生する鳥系モンスターが多く出る近くの『夕霧の丘』に行って採取してくるしかないが、これまた予算や時間的に都合良くやってくれる冒険者を見付ける難度が高かった・・
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といった話をマクシアン達から聞きつつ、調理場の脇にあった小さな試食スペースで試食菓子を俺達は食べていた。
「ん! 結構美味いけど?」
「どれも丁寧な仕事だ。ふむ」
「優勝でぇす!」
「市販菓子なら正解な印象です」
「まぁコンテスト菓子って感じじゃないね? それに希少エッセンスのミストキャラウェイ使う前提だったんでしょ? 言っちゃ悪いけど、普通過ぎだね」
「やはり、ですか・・・」
肩を落とすマクシアン達。俺達は顔を見合わせた。
「マクシアン、ヤジフのギルド支部へのクエスト発注、上手くいってないのか?」
「はい、期日や支払い額の問題もありますが、ドストイグループは老舗かつ、このヤジフで最大手なので、菓子産業で成り立つこのヤジフの冒険者達はちょっと、あんまり・・」
「あ~、そういうヤツか」
「めんどくさ過ぎ」
「それなりに発達した地方都市のギルド支部は似たり寄ったりなところがあるとは思います」
ここで、ヤポポが立ち上がった!
「お引き受けします!! わたし達は通りすがりの旅人っ。後腐れありません! それにぃ~っ。こんなのスィーツへの侮辱です!!! 美味しい! 甘い! 素敵!! それだけがスィーツの全てなのでぇす!!」
「同感ですっ、ヤポポさん!!」
盛り上がるマクシアンととヤポポ。
「あ~、引き受けちゃった。マサル、片付いたらすみやかにズラかる準備しなきゃだよ?」
「・・・」
取り敢えず、水晶通信でマーリク市の方の冒険者ギルドには話通しとこっ。
やるとなったら急がないと! 何しろコンテストは明後日だ。
速攻でヤジフの町から近いらしい夕霧の丘に行きたくなるが、段取りやタイミングの調整が必要だった。
まずマーリク市ギルドへの連絡と、ヤジフのギルドや衛兵の同行何かの確認。それからやっぱり本当にドストイグループの犯行か調べなくては。これでマクシアンの勘違いだったら話変わってくるし。
ギルドや衛兵方面はラダとギムオン。残り3人でドストイグループの調査を丘に行く前にざっと済ませる事にした。
「ここか。さすがに老舗の大手だと規模が違うな」
ドストイグループのアトリエは3階建ての雰囲気ある立派な建物だった。あれ? お高い宿屋ですか? みたいな。
「潜入だけならユーレアだけの方がいいか? 俺らは聞き込み」
「い~や・・・ちょっとそこらで待ってて、大手って言っても地方の菓子屋で、ここは本店じゃなくて作業場だよね? 見た感じ、『スカってる』し」
スカってる? チョロそうって事か??
俺とヤポポが困惑して近くの物陰に隠れる中、確かに建物の裏手は人気は無い上に、搬入口があるらしい荷驢馬の馬留めはも柵が開けっぱなしだ。
ユーレアは『物好きな観光客が道に迷いましたよ?』て顔でふらっと建物に近付き、留められてる驢馬が「?」て顔をする中、前触れなくひょいと畳まれた柵の上に飛び乗り、そこから1階の庇、雨樋、2階の庇、雨樋、3階の庇、雨樋、屋上と、あっという間に昇り、そのままさっと歩き去ってしまった。
「え~?」
「大泥棒ですぅ~っ」
鍵師ヤベぇな。というか、雨樋、防犯的にはアレ何だな・・
暫くすると、屈んでまた屋上の端に姿を見せたユーレアがちょいと手招きしてきた。
「俺らも来いってか?」
俺とヤポポはどぎまぎしたが、留められてる驢馬に(さっきから何だよ?)て顔されながら、一階の壁側まで近付いて、そこで雑談しながら搬入口から急に出てきたドストイグループの職人達にギョッとして、植木の影に隠れ!
立ち去ったのを確認して、まずヤポポが屋上の柵に蔓を絡めて上がり、続いてそのヤポポに蔓で「むぎっ」と俺は吊り上げてもらった。
「ありがとヤポポ。つか、ユーレア、俺らまで呼ぶ必要あったか?」
「話早いし、こっち。いいタイミングだったわ」
俺とヤポポはユーレアの案内で屋上をこそこそと道か見て側面の方の一角に移動し、とある3階の窓の上に来た。
話し声がする、
「いやしかしドストイさん! 上手くいきましたねっ。酢を掛けてやったのに気付いたマクシアン達の落胆ぶりたるやっっ」
「買い占めたミストキャラウェイはコンテストが終わると市価が暴落する。間抜けなマクシアン達が調理を始めたタイミングで売りにだすっ。そこなら大した損失にはならないはずだ!」
「審査員も2人は買収できましたし、日報紙3紙と評論家も何人か買収できました。今年こそ、我々格式あるヤジフの菓子業界の秩序の守り手足るドストイグループが優勝ですね」
「当然だ! がっはっはっ。我々ドストイグループの利益こそ、ヤジフの菓子業界の良心だ! 今年も町の文化振興費をガッポリ、ロンダリングしちゃうぞ?! がっはっはっはっ」
「ほっほっほっ!」
また絵に描いたような悪人がいたもんだな、て思ってると隣で凄い魔力の高まりっ。
ゴゴゴゴッッッ!!!
ヤポポの頭の上で咲く花が食虫植物に変化し、蔓にもトゲがっっ。
「スィーツへの侮辱っっ、万死に値ですっっ」
「落ち着けヤポポ、ダンジョン最奥にいる『魔王的なナニカ』になりつつあるっ」
「・・裏は取れた。バレる前にズラかるよ」
ユーレアは素早く撤収を初め、俺もヤポポが暴発する前に脇に抱えて屋上から離脱を始めた。




