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マサル・ヒースヒルの冒険記  作者: 大石次郎


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24話 ビスケットクラウン 1

砦の竜車で数日ショートカットできた俺達は日程(旅費的にざっとは決めてた)に余裕ができて、途中にあった焼き菓子で有名な町『ヤジフ』に寄る事にした。主に、


「やたー! ヤジフにわたしが、来たーーーっっ!!」


ヤポポの猛烈なアピールでさ。


甘い香りの立ち込めるヤジフの町はかなり賑わっていた。何ならこの地域で一番発達してるマーリク市より人が多い。


「『ビスケットクラウン』開催中で~す! お一つどうぞ~っ」


ピエロが案内看板を持った着ぐるみのケムシーノ(可愛いと言えないでもない)をお供に焼き菓子の包みを配ったりしてる。


ヤポポが町のチビッ子達に混じって(サイズ的に違和感無い)急行しているが、雨季明けでまだ夏の暑気も厳しくない今の時期、ヤジフでは焼き菓子の祭典ビスケットクラウンが開催されていた。


古くは俺達の住むリラドラド国の当時の国王がたまたま、まだ無名の農村だったヤジフの郷に滞在し出された素朴な焼き菓子『蜂蜜と林檎ジャムの稗ビスケットマフィン』を食べて、


「いいね、これ」


と言ったのが切っ掛けで『菓子の村』として有名になり、村が発展していったのを記念して始まったらしい。


王様、すげぇなって・・


元々焼き菓子を中心に菓子店の多いヤジフだが、開催期間中はあちこちで出店が出る他、様々なテーマの菓子コンテストも開催される。


菓子好きには堪らない、血糖値も上昇しまくりなフェスティバルなのだった。


「いいですねぇーっ、いいですねぇーっ」


この調子だと所持金が心配になるペースで菓子を買い食いしまくるヤポポ。と、不意に立ち止まった。


「お?」


「ヤポポ、どうしました?」


「何?」


「むぅ?」


「・・ん~っっ、開花!!!」


ヤポポの穴空き帽子の頭頂部から生えてる葉っぱに花が咲いた!


「「「おお~っっ?!」」」


動揺する俺達っ。


「何だっ? ヤポポ? どういう状態異常だ??」


「ふっふっふっ、マサル。これは状態異常ではありません。『絶好調!』という事なのです!!」


「・・へぇ」


ま、そんな感じで? 俺達はやや浮かれて菓子祭のヤジフの町を散策していた。

のだが、ヤポポが道の脇の高い位置にある菓子の形の看板を見たがったのでギムオンが持ち上げてやっていたタイミングで、


「おっとごめんよ」


「あっ、はい」


すぐ前の人混みの中、帽子を深く被った男が小洒落たジャケットを来た人に肩がぶつかり、一言詫びて俺達の方に歩いてきた。ちょっと違和感はあった、かな? とは思った次の瞬間っ。


「待ちなっ!」


ユーレアが最近覚えた『糸使いアビリティーワイヤー』の『ハム縛りスキル』を突然使って、ワイヤーで男をボンレスハムみたいに縛って道端に転がしたっ。


「どぉああっ?! 何だぁっ??!!」


パニックになる帽子の男っ。どよめく他の通行人達っっ。


「ユーレアっ? 何でハムにしたっ??」


「コイツだよ」


「ちょ、待っ」


ユーレアは転がってる男のポケットから洒落た財布を引っこ抜いた。


「あ、それは私のっ!」


男に肩をぶつけられた小洒落たジャケットの人が驚いていた。


「あんた、油断し過ぎ」


スリかぁ。ユーレアの前で仕事するとは、持ってないヤツだぜ。



スリは衛兵に突き出し、俺達は礼をしたいというマクシアンという名の小洒落たジャケットの人に、人の出入り落ち着いた菓子職人の『内工房(うちこうぼう)通り』という通りに案内されていた。

マクシアンはとある職人グループの菓子職人長らしい。

見た感じ、オーナーでもあるっぽい。


「マニアは来ちゃいますが、ここは直売り禁止の作業に専念できるエリア何です」


「ほぉ~」


さすが菓子の街。町の設計にまで組み込まれてんだ。


「感じますっ。このエリアの『菓子力(かしぢから)』は10万シュガーですっ!!」


「何、その単位? はしゃぎ過ぎ」


「ハハ、ヤポポさんはユニークですね。ああ、ここです。ここが私達、『マクシアングループ』のアトリエです」


そこは看板と甘い香りがなければ一見菓子屋の調理場ではなく、中小事業主向けの小型の貸し倉庫のようだった。


「皆さんには消毒と調理着とマスクの着用をお願いします」


「え? 調理場見学みたいな??」


てっきり応接室で試作菓子でも食べられる物だと思っていた俺達はヤポポ以外は戸惑った。


ともかく言われるまま準備スペース? 的な所であたふたと消毒し、白い調理着と帽子を被り、同じく消毒して着替えたマクシアンと調理場へ向かう。


「「「お~」」」


中に入ってみるとガッツリ広々した調理場と貯蔵庫だ。


「か・ん・げ・きっ、でぇす!」


「いやしかし、さすが菓子工房、端から端まできっちり整えられています。『菓子は数学』と言いますからね」


確かに几帳面に感じる程、清潔かつ理路整然と整理されていた。

スィーツではなくフードメニュー店だとセントラルキッチンでも中々こうはいかないだろう。


職人3名がせっせと、量が少ないから試作かな? 菓子を作っていた。


「我々マクシアングループは明後日開催のビスケットクラウン『伝統菓子部門』にエントリーしているのです。皆さんにはその試作を食べてもらおうと」


「やたぁーーっ」


いややっぱ食べさせてはくれるんだ。一回作ってる所を見せてくれた感じ?


「ですが実は・・我々は・・創作に行き詰まっているんですっ!」


マクシアン唐突に号泣っ。情緒!


「『ミストキャラウェイ』さえあればーっ!」


「『ドストイグループ』が買い占めたに決まってるっっ」


「去年、ウチに競り負けたから逆恨みしてるんですよ!!」


職人達も悔し泣きしだした。


「え~と」


『試食』まで中々たどり着かないぞ?


「大体状況はわかり過ぎたけど、しょっぱそうな菓子ね」


「ユーレア」


「てへっ」


たまたま隣にいたから珍しくギムオンにツッコまれるユーレアだった。

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