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マサル・ヒースヒルの冒険記  作者: 大石次郎


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22/31

22話 時間は見逃してくれないから 2

ケムシーノは回転体当たり『スピンアタック』が強烈で、移動手段としてもめちゃ速い! 大型種なら中近距離限定で騎竜を超える速度を出してくるっ。


ケムシーノ種が多いエリアだから警戒したが、クィックを使っても下手に逃げてたら普通にバックアタックされてるところだったぜっ。


木を盾にしてもアレの『最速状態』とかち合うのは賢くないな。


「ヤポポはレトレトをフォロー、ラダは足止め、ユーレアは1体止めてくれっ」


「やります!」


「ですっ」


「はいよ~」


見えてるにせよ、まだ遠いがラージケムシーノ達は『殺れる』と踏んだらしく、這うダッシュからスピンアタックに切り替えて、加速して転がりだしたっ。


茂みどころか半端な木々なバキバキ薙ぎ倒して突進する!


「ひぃーっ!!」


弓を手に縮こまるレトレト。


「サンダーショット!」


電撃の基礎攻撃魔法3連打で3体の突進を一時止め、1体は強固な『回転形態』自体を解除させた。


残り2体は俺の銅矢とギムオンの投石で威嚇っ。


ユーレアは残り1体に起動させた癇癪玉を器用に、前使ってなのより大きい『ハンターパチンコ』で露になった腹部に撃ち込みまくって釘付けにする!


「ムッシィッ!」


回転を維持した2体の内、パワーで劣る俺が威嚇した1体が抜けてきたっ。


「ラダ、ユーレアのにトドメっ」


言いながら武器を持ち替えた俺は木の陰から出て、鉄亀スキルで盾でだいぶ勢いは落ちたラージケムシーノと激突し、回転形態を強引に解除!


ラダは腹への癇癪玉連打でパニックになったラージケムシーノにサンダーショットを撃ち込み仕止めたっ。


「ムシッ」


回転を解かれ、粘りつく糸『粘糸(ねんし)』を苦し紛れに吐いてきたが、喉が膨らむ予備動作で見切り躱したのだが、


「うわぁっ?」


援護しようと? 木の陰から出ていたレトレトが構えた盾ごと粘糸まみれにされて、動きを封じられた。


「ヤポポ!」


「はいですっ」


ケアは任せ、鉄の槍で砲突きスキルで横っ腹を貫いて仕止めた。


ギムオンの方は『投石オンリー』で外骨格ごと撲殺していた・・投石、つっよ。


「セパレイト!」


ヤポポの分離魔法で粘糸を解かれるレトレト。


「いやぁ、皆、7級なのに手際いいですねぇ~。いっそ領兵に志願したら出世できるかも? へへへへっ」


「「「・・・」」」


全員、微妙な顔。


レトレト、ちょっと負け癖がついてるのかもな。確か、奨学金で私立高等教会学校に進学したが学校で富裕層生徒にイジメられて退学、そっから何だかんだあって親類を頼って僻地の砦に兵士見習いで就職、か。


思うところがあるがこれきりの俺達にできる事といったら、


「ケムシーノの動きや死臭に反応して他のモンスターまで寄ってこない内に、安全圏まで離脱だ。急ぐかんな、走れるな?」


「・・了解で~す」


茸もゲットしたし、ヤポポは俺が、ラダはギムオンが背負い、俺達さとっとと走ってその場を離れる事にした。



早朝出た事もあり、砦へは思ったより早く帰れた。


ルィージ茸をサトサトさんに渡し、件のヌルいシャワーを浴びて平服に着替え、砦からの支給の安価ポーション(どのメーカーも安定してマズいっ)を飲んだ俺達は、小1時間仮眠を取ってから、2つ目のクエストの倉庫整理の手伝いをもう今日片しちまう事にした。


その倉庫、に行ってみると・・


「へへへ、どうも~、何か、自分、全部の件に同行する事になっちゃって。へへへ」


兵装から領兵の簡易制服に着替えたレトレトもいた。


「うん、まぁよろしくな」


作業は俺達とレトレトだけでなく、砦の事務方の備品管理担当の人達も来ていて、その采配で俺達が動く。


重量物は俺とギムオン。軽作業はレトレトとユーレア。ヤポポは高所や奥まった所に蔓を伸ばして取るのに重宝がられ、ラダはリストの確認補助を担当していた。


「ほいっ」


「フン!」


ギムオンと2人で運びまくる。俺はギムオンの3分の1くらいだが、それでも外壁補修のバイトをしていた頃とはパワーが違うぜっ。

結構、効率よく作業できていた。


が、


「あっ!」


「ちょっとっ?」


積んであった廃棄品(一応業者に売りはする)を作業中のレトレトが引っ掻けるか何かして崩してしまい、軽く下敷きになり掛けた所をユーレアが突き飛ばし、代わりに自分の片足に廃棄品が落ちてしまった!


「ユーレア!」


「除けるぞぉっ」


「ヒールしまぁす!」


「待って、刺さってないですよね? 骨等も正しく直してからですっ」


俺達は慌てて駆け寄った。廃棄品をギムオンが確認してからガバっと除けるっ。

裂傷と捻挫はあるようだが、骨折はしてない。


「いやいや大袈裟過ぎっ。折れてないしっっ。というかあんた大丈夫?」


突き飛ばしたレトレトを気に掛けるユーレア。


「・・あー、大丈夫です。へへへ」


「キュアポイズン」


「マナハンド」


ヤポポが解毒魔法で浅い裂傷を消毒し、ラダが念力魔法でユーレアの骨等に触れて様子を診る。

しかし、バンドで留めた眼鏡の奥でラダの目が三角になっていた!


「笑い事では無いですよっ? 普通の仕事でも事故は起きるんですっ。貴方はずっとヘラヘラしているつもりですかっ?!」


溜まっていたらしいラダが、手当てしながら激怒してしまった。マズいっ。


「またレトレトか」


「使えないヤツ」


「サトサト氏のコネだろ?」


備品担当の人達が聴こえるように囁きだす。きっつ~っ。


「・・あーー、自分。ちょっと用事を思い出したので、へへ、治療費請求しておいて下さい。それじゃっ!」


張り付いた笑顔のまま、レトレトは倉庫から駆け出ていってしまった。


「もぅ~、面倒臭過ぎっ。すね当て装備しときゃよかったわっっ」


「取り敢えず手当てだ、ユーレア」


「大きな声を出してすいません・・傷口の異物の類は除きました。どうぞ」


「ヒールでぇす」


ヤポポが回復魔法を掛け、ユーレアの足の怪我は何の問題も無く治った。


別の問題が残ってしまったがっ。

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