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2話 都会を甘く見ない

メジハ村からマーリク市まで寝ずに魔除けの街道を歩き続ければ5日で着けるらしいけど、普通に俺は寝る!


途中の魔除けの野営地や、村に寄って、何だかんだで出発から9日後にマーリク市に着いた。


「うぉぉ・・今日は祭りか?」


初めて来たぞ? マーリク市! 人、人、人っ。


耳が長くすらっとしたエルフ族、小柄で丸っこいノーム族、やや背は低いががっちりしたドワーフ族、小柄を通り越して全員子供に見えるフェザーフット族!


獣人に爬虫類系種族や、植物系種族も! ゴロゴロいるっ。


特徴の無いロングフット族主体のメジハ村では中々見ない種族ばかりだ。


馬車や騎竜の牽く竜車(りゅうしゃ)も専用道をバンバン走っていて、気圧された。


「ちょっと、あんた。お上りさん」


「えっ?」


背後から同年代っぽい声の女子に話し掛けられた。


振り返るとハーフエルフらしい身軽な格好の女子が腰に手を当て、三白眼気味の目元をしかめて立っていた。


「ぼんやりし過ぎ、珍しがり過ぎ。今、話し掛けるまでに8回は腰のポーチの中身盗めたよ? 変なキャッチとかも気を付けなよ?」


「おおお?? そんな隙だらけだったか? 村の自警団ではよく『筋がいい』って村のオッサン連中に誉められてたが」


その延長線でノコノコ出てきたワケでさ。


「知らないよっ。ローカル過ぎ。村のオッサン達甘やかし過ぎっ」


『過ぎ』ってめちゃ言ってくるぞ。


「悪い、気を付ける。さっさと『マーリク市の第3衛兵番所』に行くよ。地図通り進み難そう何だよな・・」


地図を見直す。地図は平面で、こんな人や馬車は溢れてないっ。


「何? 迷子なの? もう~、世間知らず過ぎ! というかあんた何なの? 行商じゃないよね??」


「俺はメジハ村のマサル・ヒースヒル。馬借とかで働いてたんだけど、伯父さんにここの衛兵に空きがあるって、紹介されてさ」


「コネ枠採用かよっ、忠告して損したわ! もーっ・・ちょっと地図貸してみな。どこに行くって??」


お? どうやら案内してくれるらしい。



ハーフエルフ女子のお陰でマーリク市の第3衛兵番所まで問題無く来れた。


「目の前まで来たら迷わないでしょ?」


「はは、いやさすがに。でもありがとう。あ、お礼にここの前の村で買ったジンジャーストロベリーパイを1個あげるよ」


油紙に包まれたスパイスの利いたパイを1つ渡すと、ハーフエルフ女子は紙を剥いてムシャッと一口齧った。


「甘っ。でも、都会を甘く見ない事ね、人を見たら敵と思う事! 脇甘過ぎっ」


言うだけ言って、ハーフエルフ女子は最後まで名乗らず食べながら歩き去っていった。


「はは・・」


笑うしかない俺だった。



色々カルチャーショックを受けつつ、第3衛兵番所に入ってみると、番所というより役場だった。

結構の人の出入りがあり、忙しそうな人達に横目でチラチラ見られた。


「気合いだっ」


小声で呟いて、受付に向かった。


「あの、メジハ村のマサル・ヒースヒルという者ですが」


紹介状と領籍証(りょうせきしょう)をあたふた出しつつ、俺は取り次ぎを始めた。



それから小一時間。


俺は衛兵番所ではなく、マーリク市の冒険者ギルド本館前の広場の噴水の縁に力無く座って項垂れていた。


結論から言うと、衛兵の口は市の下級貴族の三男だか四男だかに横取りされていた。

こんな一般人の仕事に食い付くくらいだかやよっぽど窮してたんだろうけど、それでも貴族だ。競って勝てるもんじゃない。


で、代わりに冒険者ギルドへの推薦状を書かれて、何やら資料も渡され、現在ここまで来てガックリしている次第だ。


「冒険者か。はぁ~」


そりゃ出世すれば衛兵何かより遥かに儲かるし、名士扱いだが、基本的には不安定で危険な生業だ。


因みに伯父さんは9歳で村の近くで暴れてた重小鬼(ホブゴブリン)を1人でボコボコにして倒した逸材だっっ。


できる人って最初からできるじゃん?


『都会を甘く見ない事ね』


ハーフエルフ女子の忠告が骨身に染みた。参った。え~? これは、村に帰っちゃダメなのか? いや、もう旅費はほぼ尽きてるワケだけど・・と、


「貴方も出願で絞られたんですか? 毒舌ですよね、ギルドの受付の方! 都会だからかなぁ」


褐色の肌の眼鏡を掛けた法衣(ローブ)を着たロングフット族の同年代くらいの男が話し掛けてきて、そのまま隣に座った。おお?


「ここのギルド訓練所の春季の2次募集、今年は70人くらいだそうですよ」


「・・え? いや」


俺は番所でドサッと渡されてた資料をよく見てみた。


『マーリク市冒険者ギルド訓練所 春期2次募集推薦枠出願に関して』


と題されてる! ざっとみると傾向と対策とかビシった書かれてたっ。


「紹介って受験しろって事??」


眼鏡の人もヒョイと資料を見てきた。


「でしょうね。勧められて来たんですか。でも、推薦枠でしょう? 羨ましいなぁ。僕何て乗り合い馬車の連絡が上手くいかなくて1次募集に間に合わ」


眼鏡の人の自分語りスィッチが入る中、俺は噴水の縁から腰を浮かせて資料を持ったまましばらく固まっていた・・

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