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マサル・ヒースヒルの冒険記  作者: 大石次郎


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19話 蛙達のララバイ 3

話は前後するが、里長の話したトーノサマ郷のワーフロッグ達の起源の言い伝えは奇妙な物だった。


───────


200年程前、宿敵『ミズヘビの魔女』を仲間達と共に打ち倒した雨蛙の魔女だったが、ミズヘビの魔女から死の呪いを受け寿命を奪われた(この時点で童話と全然違うハードモード!)。


雨蛙の魔女は亡くなる前に自分の蛙の眷属達をワーフロッグに変化させ、自分の廟を守り、長い年月を掛けて自分の死体を魔物に変えようとするミズヘビの魔女の呪い(2段構えで酷いっ)を音楽の魔法で祓うよう、命じていた。


その使命を帯びて人型に化けた眷属蛙達こそが、トーノサマ郷のワーフロッグの始まり・・


───────


本当に変化したかどうかはともかく、未だに年一で廟を整備し、浄めの儀式として特別な魔法曲を演奏している。アズマンはその指揮を担当するらしい。


俺達が中に入ると内部のいくつも置かれた燈台に薄暗い陰火(いんか)が灯る。


魔除けの補修が必要でも年一で管理されてる施設だからかな? 内部は想定より清潔で水漏れも見当たらない。

だが蘇生所に似た香の臭いは立ち込めていた。気温は外より低い。


渡されたマップ通りなら一階は狭くても地下は段々広がる構造だ。


ケルピーは魔除けに弾かれるので使用できなかった。


「明かりは大丈夫ですが、地下2階からは天然の洞窟を利用していて水滴が多いです。そう遠くもないので、皆さんはレインコートのフードを取るくらいにしておいて下さぁい」


「ゲーコ、一階の損耗は例年通りくらいか・・」


「ブレッシングは掛けておきますね。ブレッシング!」


「補修作業もあるので、ディフェンドを前衛の2人とアズマンさんモーリンさんにだけ掛けておきますね。ディフェンド!」


ヤポポが全員に幸運魔法を、ラダが俺とギムオンとワーフロッグの2人にだけ防御魔法を掛けた。

ラダには後衛援護にだけ専念させた方が安全な気はしたが、依頼の内容的にやむを得ないか。


「一応、警戒スキルは張っとくよ?」


「よろしくユーレア」


「・・ふむ。一階は魔除けの効果が強いようだ」


俺達は一定間隔で設置されてる蛙の魔除けの像を補修しながら、進行を始めた。と、


「ゲコゲコ」


「グァグァ」


廟内は閉じた状態では暗闇だろうに、妙にサイズの大きい蛙が多く生息している。


「・・ひょっとして、コイツらは童話に出てくる雨蛙の魔女の眷属だったりして?」


「そうですよ?」


「「「えーっっっ??!!」」」


浅いエリアではモンスターはまだ出ない様子だから、冗談で言ってみただけだったから俺も皆も仰天した。


「ゲコ。正確にはこの子達も元眷属です。変化せずにただの蛙として、魔女の廟を見守る事を選択した眷属も少なくなかったとか。今いる蛙達はその子孫ですね」


「この蛙達も特別だゲ~コ。ダンジョンバット亜種を除けば唯一ここに自由に出入り可能何だ」


へぇ?


「蛇と蝙蝠は?」


「蝙蝠は加工前の地下の天然洞窟に元々暮らしていたのです。しかし、蛇はミズヘビの魔女の呪いなのでぇす」


「毎年雇った冒険者と自警団で全滅させても、必ずどこからともなく毒蛇達は涌いてくるんだゲーコ・・」


顔をしかめる2人。


ミズヘビの魔女。童話では、多くのストーリーで雨蛙の魔女に挑み、その都度撃退される悪役だ。

事実はそう甘くなかったようだが。


「でもさ、童話とかだと最後は王子様と結婚してハッピー過ぎなエンドだったじゃん? 何で嘘の童話だけ広まったんだろ?」


「嘘って・・ゲココっ」


アズマンが泣き出してしまったので、ユーレアは慌てた。


「ちょっ、何で? ごめんごめんっ。アズマン、あたし、言い方強いからっ!」


「どうも、この地方に楽しくて、ハッピーエンドの雨蛙の魔女の童話を広めたのは彼女の仲間達だったみたい何です。元々当時から雨蛙の魔女は人気はあったみたいだから、せめて、ゲコっっ、物語の中では楽しく、ハッピーエンドに・・ゲココっっ」


アズマンがいよいよ大泣きしてしまったので、俺達は一旦進行を止める事にした。



まだ安全そうでも一応は霊木の灰でヤポポに魔除けの陣を張ってもらい、休憩になった。

大弱りのユーレアと、ヤポポとラダが一緒にアズマンを落ち着かせてる。


「楽士だから繊細何だろうな~」


「200年前だとこの地方には冒険者ギルドは前身組織がいくつかあったくらいか? おそらく当時のマスタークラスのパーティーの結末としては、厳しい物ではある」


「・・フィクションだけは残されたが、詳細な話が実際『現実』を管理する我々に残されなかったのは、我々の初代がそう決めたから何だ。その点だけは明確に記録が残ってる」


小腹が空いたのか冷たいパンにスモークチーズを挟んだ物とハーブ水で軽食を取っていたモーリンが話し出した。


「『子孫達よ、その忠節の血から、お前達はおそらく全てを詳細に伝えてしまうだろう。だが、雨蛙の魔女の物語は楽しく人々に残されなければならない。ミズヘビの魔女の呪いに決して屈しない為に。故に、我々はその忠節の全てから、愛しい彼女の事実の多くを忘れる事にした。願わくば、楽しき夢を、音色に変えて』」


言い伝えを暗唱したらしいモーリン。


「ゲーコ・・依頼としては補修完了までだが、よかったら浄めの演奏も聴いていってくれないか? アズマンも喜ぶ。ただしこのクエストの詳細は、ギルドとは既に申し合わせているが、他言無用で」


俺とギムオンは顔を見合わせた。


「勿論だって」


「誓ってだ」


他愛無い童話と思ってたが夢が秘密で守られてる物なら、黙ってるさ。

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