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マサル・ヒースヒルの冒険記  作者: 大石次郎


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15話 爽やかクエスト 4

外から見ると無人の岩場だったが、連中の張ってる『幻像(げんぞう)の魔力障壁』に突入すると、そこは粗末ながら中規模程度の野営地!


「うぉおおっ?! 何だテメェらっ??」


酒を呑んでたウラカ一味は大混乱になったが、さすがにすぐに立て直してくるっ。混戦になった!


「中心部が広場があるっ。四方を囲んでるから他に行き場は無いから! 逃げられる前に攻めてみようっ!」


いつもより強気なトトミーの案内で野営地の中心部を目指す!


密猟者達は防具は殆んど付けてないが、元々手元に置いてたらしい武器は手にしてる。

殺さないように手加減するのに加え向こうは殺る気のある不利はあっても、飛び出してきた1人か2人にこっちは万全の態勢の4人だっ。補助魔法も多重に掛かってる!


トトミーの弓とユーレアのパチンコの援護を受けつつ、俺の銅の穂先の槍で牽制してあとはギムオンの三節棍で叩きのめす連携で、次々ゴロツキどもを昏倒させたっ。


途中、檻から放たれたらしいデカいアヒルみたいなルゴンモドードー達の一団ともカチ合って慌てたが、広場まで抜けた!


が、がちょっと上手く抜け過ぎた。俺達トトミー隊だけ突出して前に出ちまったっ。


「オイオイ~っ、素人臭ぇのばっか集めやがってよぉ!」


ウラカだ。 鼠人(ワーラット)族の男。防具は兜だけだが、曲刀(シミター)を2本構えてる。二刀流アビリティー!

種族的に夜目も利くだろうが、近くに焚き火や篝火の灯りもある。

夜鷹薬のせいでちょっと眩しいくらいだ。


さらに手下が2人付いてるっ。

ヤベェな・・と思いつつ俺は槍から岩鱗の盾と衛兵の剣・改に持ち替え、ギムオンは三節棍から鉄のサックに持ち替えた。


「ギムオンとユーレアで手下をっ! 私とマサルでウラカを『アレ』してやるわっ」


「心得たっ」


「大丈夫なの?」


心配しても即応して癇癪玉を手下2人に投げ付けて分断を計るユーレア。ギムオンも手下達に突進した。


「俺に何するってぇ? 怖ぇなぁっ、ヒヒヒっ!!」


粘着質に言って、俺と俺の背後に控えて弓を構えるトトミーを威嚇するウラカ。


件の腕輪は『左腕』にしてる。装備は万全じゃなくても明らかに俺より格上。さて、腕前を見させてもらうかんなっ!


「おりゃっっ」


トトミーが追撃してくれる前提で盾に魔力を込め、スキル鉄亀でまず突進してみる!


まず交差して構えたシミターで器用に受けきられ、即座に俺の片膝の裏を蹴って体勢を崩し、右の刀で押して盾を抑えると同時に左の刀で喉を突きに掛かってきたっ。


そこへトトミーの矢撃ち込まれて、飛び退いたが、退いた側から転進して突っ込んできて俺の身体をトトミーに対して『壁』にしながら猛烈に双刀で連打を放ってくるっ!


「ぐぉおっ?!」


動き、はっや~っっ。7級と6級相当ってこんな差があんの?? 補助魔法無かったら速攻ズタズタにされてるとこだ!


「トロいぜっ? 蘇生所で『ぴえーんっ、ママ、たちけてっ!』て後悔しとけぇっ!」


速過ぎてこっちのスキルを使う暇が無いっ。


ううっ、考えろっ、向こうはこっちを雑魚だと思ってる! ほぼ事実だがっ、背後ではずっと射てなくて焦れてるトトミーの気配っ! 取り敢えず勝てなくてもプリズンオーブを使わせたらこっちの勝ち確だ! タイマンじゃないっ。ダサくて良し!!


ん~~っっ、思い付いた!


「だぁっ!!」


俺は最速で! 俺は武器を捨てて仰け反り『ブリッジ』をしたっっ。


「おっ?」


虚を突かれたウラカにトトミーが矢を放つ! 矢は正確にウラカの右肩に撃ち込まれた。

がっ、ウラカは即、左のシミターをトトミーに投げ付け、弓を砕いてトトミーの左脇腹に手傷を負わせたっ。

毎度、悪党連中の往生際の悪さっ!


「んがッ」


起き上がり様に収納ポーチから銅槍を抜き直してウラカに打ち掛かったが、ウラカは素早く飛び退き、ニッと笑って転送効果の腕輪に魔力を込めたが、


キンッ! とカン高い音っ。コインだ。魔力が籠ってる。トトミーのコイン! 指で弾いたのか? それは腕輪に命中し、転送の為の魔力の集中が切れたっ。ここだっ!


「おおーッ!」


再充填させないかんなっ、俺はヤケクソ気味に槍で再度打ち掛かる!


「このガキんちょっっ」


ウラカは的確に回避をしながら力の入らない右のシミターを左に持ち替えようとしたが、


「よっ」


不意に、残り1人になってる手下をギムオンに任せて死角から接近していたユーレアが、実戦で使ってるのあまり見た事ない護身用のロンデル(鍔無しの簡易な短剣)をヒョイっと、ズレた位置に軽めに放った。


「?」


だがロンデルの柄頭の突起にワイヤーを結んでいた! ワイヤーがシミターに掛かると、作業手袋をしていたユーレアは素早くワイヤーを操ってシミターを絡め取ろうとするっ。

これに咄嗟に抵抗してしまったのが運の尽きだ! 隙ありっ。


「せぇあ!!!」


俺は槍の石突きの方で、スキル『三段突き』を防具の無いウラカの胴体に放ち、


「かっはっ?!」


吹っ飛ばして昏倒させてやった。


「ふぅ~~っ、・・ウラカ、御用だぜ?」


呼吸を整え、振り返るとトトミーはリジェネレーションの効果でどうにか起き上がれるようになっていた。ギムオンも残りの1人をボディブローで昏倒させていた。


「癇癪玉、結局足りなかったけど、あたしのワイヤー捌き完璧過ぎだわ」


「いやホントに、助かった」


対人戦は駆け引きだとも思い知った。


「トトミーも、大丈夫か? ポーションあるぜ」


「ありがと。オーブの使い所、意識し過ぎたかもね」


確かに、『普通に倒す』つもりならもう一手ぐらいスマートに押せたかも? ま、そうは言ってもだ。


「結果、オーライだ」


他のウラカ一味もこの後、物量で制圧されていった。


ちなみに後方支援のラダとヤポポも外に逃げた手下の1人を『杖と石を掴ませた蔓でフルボッコ』して捕獲していた。


2人とも4人分の補助魔法の遠隔維持で魔法が使えなかったからかなり野蛮な対応になったようだ・・こっわ。



ルゴンモ高原に風が吹く。

強い風は魔除けと風避けの魔力障壁に当たって和らぎ、そして、


ジューっ! 甘辛タレ付けの羊肉が膨らんだ形の鉄板で焼かれる美味しい匂いの煙をいい感じに吹き払ってくれた。

これ、風無いと凄い煙いっ。


俺達、ウラカ一味捕獲隊の面々は、一網打尽を祝う慰労会に参加していた。

レンジャーギルドのテントの脇の特設会場でだ。

吟遊詩人を呼んで演奏までしてもらってる。

作戦前は渋い顔をしていた駐在衛兵達も手柄になって上機嫌さ。


ヤポポは爆食し、ラダはレンジャーギルドの技術部門の連中と計測機器に関して何か熱心に話してる。


「改めてありがとうマサル隊! 急に無理させてごめんね」


トトミーさんはルゴンモ高原の民族衣装を着てた。へぇー、て感じ。


「いいよ。報酬良かったし、勉強になった。それより傷大丈夫?」


「うん、ヤポポのリジェネレーションもあったし、手当てもしたし! レンジャーギルド隊員はこれくらいじゃヘコたれないよ? それにコインもウラカのヤツにバッチリ決まったしね。スカっとしたよ」


また弾いてみせるトトミー。


「おー」


「指で弾いてたね。器用過ぎ。あんなスキルどこで習ったの?」


「確かに見事だったぞぉ」


「あー、アレ」


なぜか少し赤面するトトミー。ん?


「実はアレ、毎年レンジャーギルドの年始の宴会芸用に練習してただけ何だ。あの時、他に使える物がなかったから・・」


「何だぁ」


「冒険者ギルドに講師に来てよ?『コイン弾き過ぎ魔、トトミー』として!」


「そりゃいい! 人気の講義になりそうだ。はっはっはっ」


「だからっ、宴会芸だって!」


ますますトトミーが照れてた。

それから計測警護の残りも数日で問題点無く片付いた。


俺達のルゴンモ高原のクエストラッシュはこうして爽やかに? 広大な景色と風と美味しい煙の思い出に包まれて、終わったのさ。

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