13話 爽やかクエスト 2
翌日、ギムオン以外の俺達は乗り易い小型種の騎竜にを駆ってルゴンモ高原を駆けていた。
ギムオンはウェイトがあるので通常種の騎竜だ。
「いいなこれ!」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと速くないですかぁっ?!」
「ラダ、甘いですよぉ? わたし何て乗る前から『あ、無理』と見切ってユーレアの後ろに乗っけてもらってますからねぇ?」
「それは自慢にならな過ぎ~」
「風がいいぞぉっ!」
はしゃぎ気味の俺達を先導してるのは依頼してきたレンジャー、トトミーだ。
「最初の計測地までもうすぐだよ?!」
そう、計測。トトミー達は地形の変動のあった気配の箇所の内、計測漏れエリアを計測して周っているらしい。
俺達はその護衛。
本来こんなゾロゾロ付いてくる事はないから、6級くらいのそこそこ腕の立つのを1人か2人連れてゆくのが単価が上がっても一番コスパがいいらしい。
が、そうギャラがいいワケでもなし、1週間は拘束され、何よりルゴンモ高原はマーリク市等の都市部から離れていて、都合よく6級冒険者を雇えないんだってさ。
そこで俺達が一本釣りされた。
で、最初の計測地に着くと、
「うーん、地の力が暴れてますねぇ・・」
ギムオンにヒョイっと摘まんで騎竜から降りるのを手伝ってもらいつつ、渋い顔をするヤポポ。
確かにトトミーの目当ての計測地は奇妙な事になっていた。
草原の大地があちこちボコボコと隆起していた。所々魔力の高まりによる発光現象も起きてる。
よく見ると、数は少ないが地の精霊ブラウニーと風の精霊シルフがチョロチョロ姿を見せている。
「ルゴンモ高原は大地と風の魔力が強いからさ~、しかも同じ性質の環境が延々続くでしょ? 毎年、所々に魔力の吹き溜まりがランダムに出てくるんだ。これはキッチリ把握して、ここらで活動してる皆で情報共有しとかないと大変だからさ」
自分の収納ポーチからあれこれ計測道具らしいのを取り出して、ガチャガチャ組立てたりしてるトトミー。
「トトミー、毎年ってのも大変だなぁ」
「どうだろ? でも、マサル君。漁師がずっと海を見たり、農家がずっと畑を見てるのと変わらないと思うよ?」
「ああ・・」
そういう感じか。
「よし、できた!」
トトミーが皿とポットを重ねたような形のやや機械化された道具の内蔵の魔力動力で起動させると、その道具は浮遊し、上昇を始めた。
「魔力式光画器みたいですね」
騎竜酔いで自分に念入りにヒールを掛けてたラダが、バンドで留めている眼鏡をクイっと上げながら言った。
光画器は静止画像を写し取る道具だ。
「それに近いかな? 中に記憶結晶も仕込んであって、上空から地表情報を読み取ってくれるんだ。これはモモキ社のイ・0875型をベースにしたのを特注してるんだけど」
「モモキ社ですか。確かイ・0875型はヨ・0871を姉妹機ながらより野外活動に特化し」
「そうそう、ほんとは防水機能を高めた」
「ヨ・7954型ですか、あれは革新的な」
「だよね、ヨ系はさぁ」
2人は業務用機器の専門知識トークに熱中しだした・・
「え? 俺らどうしよ?」
「警戒でしょ? ま、ここら精霊もいるし、むしろこっから離れなきゃ楽チン過ぎだと思うけど」
「ここ一点でもない、それも1週間の長丁場! 集中を切らさずにしっかりやろうではないか」
いつも方針がシンプルなギムオンの言う通りに、俺達は機器トークも程々に他の機材も使ってあれこれ計測をするトトミーの周囲をバッチリ警戒した。
訓練所では時間的制約もあって警護系訓練はやり方を教わるくらいだったが、実際やると『延々と警戒を続ける』ってのは中々大変だった。
集中力が持たんっ!
まぁそうは言ってもユーレアの見立ては的中で、魔力の高い地は大体精霊が住み着いていれば変質してるなりにエリアは安定していて、モンスターの襲撃リスクはそう高くもない。
移動も魔除けを首から提げた騎竜で素早く、環境を理解してるトトミーの先導で合理的に進むからやはり早々モンスターに襲われる事はなかった。
せいぜい俺のクロスボウかギムオンの投石で少し威嚇するとか、ユーレアが光り玉投げ付けるとか、ヤポポの鎮静魔法のスーズかラダの睡眠魔法のスリープを掛けて大人しくさせるくらいだ。
・・午前中だけで4ヵ所計測を済ますと聞いた時は、地図上の距離から言ったら無理じゃないかと思ったが、案外あっさり完了。
俺達は昼休憩を予定していた『釣り場の野営地』に到着した。
その名の通り、敷地内に窪地に釣り場の池がある野営地だ。
「お疲れ~! お陰で捗ったわー。簡単に思ったかも知れないけど、ソロだとさすがに全箇所毎回運試しになっちゃうからさー」
「いや勉強になったし、魔力の強いとこでずっと遠くの地平線とか見てたら視力良くなった気がするよ」
「ふふっ、そりゃよかったわ! よし、昼までちょっと時間あるし、ちょっとそこの釣り場で新鮮な魚、釣っちゃう?」
「今から?」
今、午前11時過ぎ。昼からも計測予定はあるはずだが・・
「いや、ここ『生け簀状態』何だよ? いい野営地だけど辺鄙過ぎてレンジャーしかほぼ来ないし、雨季は水没するし、水没後の使用不能期間も長いし、冬季も放置されるから、ウチら界隈以外からは信用度低い野営地認定されちゃっててさ~」
「・・・」
ルゴンモ高原の冬季は長い。今、聞いた範囲だけでもおそらくここ、合わせて年に4~5ヶ月しか使えないとこだな。
俺達は顔を見合わせてりしながらも、鼻唄混じりにコインを弾きながらとっとと窪地に降りてゆくトトミーに付いていった。
釣り具は一応全員持ってるのでそれぞれ自分の道具を収納ポーチからだして、トトミーに「適当でいけるから!」と言われるがまま、窪地の池の周囲で疑似餌で糸を垂らしてみた。すると、
「うおおっ?」
「食い付き過ぎだわっっ」
釣れるわ釣れるわっ! 淡水魚やデカいザリガニ何かがガンガン釣れた。入れ食いだったっ。
信じ難いが、開始10分足らずで昼飯の主菜に十分な淡水水産物が獲れた!
野営地の簡単な調理場で下処理して焼くか酒蒸しか辛いスープで煮るかの簡単な料理をして食べたが、これがウマいっ。新鮮!
「納得した! ここはいい野営地だっ」
「でしょ? 自然は好きだけどたまにこういう御褒美もあるから、レンジャーはやめられないんだ」
笑って塩焼きのルゴンモ岩魚を噛るトトミーは多少俗っぽくはあっても、何だか真っ当な気はした。




