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マサル・ヒースヒルの冒険記  作者: 大石次郎


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12話 爽やかクエスト 1

空が抜けるように青い。高原に吹く風は涼やかで、蝶々が舞い、小鳥がさえずる。


「ん~~、爽やか」


「マサル! 1匹そっちにいきましたよぉ!!」


「お?」


ユーレアと組んでたヤポポが蔓で掴まえようとしてすり抜けられた、ハイランドグラススライムがこっちに突進してきてる。


パチンコや癇癪玉とか使ってくるユーレアや、ロックショットを撃ったり蔓を振り回すヤポポより、同族を側で1体倒していても空を見上げて呆けていた俺の方がチョロいと見たらしい。


奇襲が成功してたら確かにそうだったかもなっ。


「ミュー!」


突っ込んでくるハイランドグラススライム(略称が『ハイスラ』なので以後そうするっ)はその名の通り高原に生息する草を生やしたグラススライムの亜種。

グラススライムは草と共生してる分、身体の流動性は低下してるが形はハッキリしていて栄養の摂取効率もいいらしく、身体も普通のスライムより一回り大きい。

草が豊富な環境のハイスラはさらにもう一回り大きく、そのパワーとタフネスは中々厄介だ。


だがしかぁし!


「せぇあっっ」


盾を囮に突進を横にヒョイっと避け、前回不発だった突進して魔力を込めて一気に突く砲突きスキルで核を貫いて仕止めた。


これだけ見晴らしが良く、明るく、単体でシンプルに突っ掛かってくる相手くらい、霧のゾンビ戦を経た俺には何て事ないぜ? ふふん。と、


「マサル君! そっちに『4体』行ったぞぉ?!」


「いや4体は多いでしょっっ?」


「「「ミューッッッ!!!」」」


囲まれそうになったので俺は慌ててラダと組んでるギムオンの方に駆けてった・・


俺達はマーリク市から乗り合い馬車を乗り継いで3日掛けて、ルゴンモ高原に来ていた。


クエスト的には『雨季を前に、大繁殖を避ける為に区画ごとにハイスラを間引きする』という物だ。


最低限度戦力の揃ったビキナーパーティー向けの定番のクエスト。

報酬は安いしマーリク市から遠いが、倒した大量のハイスラから得られる素材は討伐数確認後に総取りできるからそこそこ儲かる。


何よりルゴンモ高原はマーリク市周辺より2~3週間程雨季に入るのが遅いから、鬱陶しい季節を少しはやり過ごせる『一石二(いっせきに)ダンジョンバット』な素敵クエストだ!


ゾンビ村クエストで反省をした我らマサル隊は、雨季の始まりから逃げるようにこの無難なクエストを受注し、ルゴンモ高原に来ていた。


それなり苦労するターンもあったが(魔除けの街道から離れているので普通に他のモンスターも出るし、思ったより固まって群体のハイスラと当たる事もある!)、俺達は担当区域での間引き討伐を昼前に終えた。


「ふぅ~っ、まぁた装備がガッタガタのスカスカになったが何とか片付いたな」


「変な野良モンスターに絡まれる前に街道に戻るよ? 平原だから隠れるとこ無さ過ぎ」


「でもハイスラって何となく『ヤポポっぽい』ですね? あはは」


「似てません! どのタイミングかで言われるとは思ってましたが、似てませんっっ!!」


まぁ頭に『草』は生えてはいるな、と。


「一応、霊木の灰を被ってゆくか? 今回はゾンビは見当たらんがなっ、はっはっはっ」


報告にも必要な素材も回収し、ポーション飲んで魔法石の欠片を使っても疲れは残るし、装備が心許なくなった俺達はギムオン案を採用して霊木の灰を被って(煙い)一番近い草原の風吹く街道へと向かった。



担当区からマーリク市まで戻るわけじゃない(遠いにも程がある)、ルゴンモ高原の大規模野営地の1つがハイスラ間引き隊の拠点だ。

ここは高原の遊牧民が副業で運営してる拠点で、住宅街こそ無いが宿、商店、食堂、劇場、教会、蘇生所(そせいじょ)等々と冒険者を含む野外活動者達に必要な施設の円柱型のテントが一通り揃ってる。


まずハイスラ1体につき1つしか取れない『ハイスラの根核(こんかく)』を討伐した分だけ提出。

書き物が得意なラダと目敏いユーレアが共同で書いたレポートも提出。

クエストギャラ(安い)根核の買い取り額(高い!)を受け取った俺達は、ホクホク顔でギルドの出張所になってるテントから出てきた。


「さらに他の部位素材も売れるかんなっ」


「今回美味し過ぎ~」


「旅費と滞在費と装備の補修費と補充費はそれなりであるがな」


「それでも結構余りますよぉ? 何か珍しい物食べましょうよぅ~」


「ここは品揃えも価格もマーリク市と比べるとアレ何で一先ず無事帰れる程度にしておきましょう。珍味くらいは食べれるでしょうけどね?」


「やた~! ですっ」


売る物を売って、補修や補充をざっと済ませた俺達は名物のシンプルな味付けの羊肉料理を食べたり酸っぱい馬乳酒を試してみたりした。

後はちょっと広めの蒸し風呂のある宿のテントを探そう何て皆でミタラーシ団子(甘い)を食べつつ話しながら、そこそこ人の多い大規模野営地内を歩いていると、


「あれ、野伏(レンジャー)隊じゃないの?」


前方から揃いの制服装備の一団が歩いて来ていた。うん、レンジャーだな。


レンジャーは冒険者ギルドと違って国や地域ごとにギルドを組んで、レンジャーギルド同士で緩やかに連携する感じだ。

環境保護や調査、研究をしつつ素材採集やモンスター討伐で生計を立ててる。ほとんどの国と地域で冒険者ギルドとは友好関係にある。


今回のハイスラ間引き討伐もその時期、規模、区画割り、今期の注意点の事前調査はルゴンモ高原のレンジャーギルドの担当だった。


一団の1人は癖なのか片手でコインを弾きながら隣の隊員とも話して歩いていた。

そのまま俺達に近付いた辺りで、


「ふぇっくしょん!」


不意にくしゃみする件の隊員。手元が狂ってコインが近くの泥水の水溜まりに落ち掛けた。が、


「おっと~、です」


ヤポポが蔓を伸ばしてヒョイとコインを落ちる前に掴んでレスキューした。


「はい、どうぞ~」


「ありがとう」


そのロングフット族の若い女(と言っても俺より年上っぽい)の隊員は、礼を言う流れでワープラント族が珍しいのかしげしげとヤポポを見て、さらにヤポポのミタラーシ団子を見て、それから同じく団子を持つ俺達を見回した。


ん? 団子、食べたいのか?


「君達さ、ハイスラ狩りが終わった感じの冒険者ギルドの人達だよね?」


俺達は顔を見合わせた。からのユーレアが脇をつつくので、俺が答える。


「そうですけど、何ッスか?」


「ハイスラ狩りをサクッと完了させる腕前! ミタラーシ団子を食べ歩く暇そうなムーヴ! あのさ、ちょっともう一仕事してみない?」


「ええ?」


まさか団子の食べっぷりで依頼されるとはっ。

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