11話 買い物しようぜ!
ババンバからの帰りの乗り合い馬車の中にいた。
俺達の人数が多い事もあって他の客は2人だけ。行商の女と旅装の学生? だ。
俺もついさっきまで寝てたが、他の皆は全員寝てる。
ヤポポは寝相が悪く、前に乗り合い馬車から落ちそうになった事があるからユーレアが抱えて座って寝てる。
ユーレアの着てる合い服の野営外套(外套というか厚手の二重布で布団代わりにする)で2人ともくるまる形だ。
身長はともかく身体に厚みのあるギムオンはこれが文字通り外套に見える。
ラダは眼鏡を外し、1人だけ転がって野営外套にくるまっていた。育ちがいいから訓練所で野外での安全確保に必要と習っても座って寝るの苦手何だよな。
「・・・」
ゾンビ騒動は結構ヤバかった。一応リーダー担当だし、クエストの選択は気を付けないと。
流れがあるから動き出すと仕方無いところはあっても、入り口でのリスクの度合い判定は慎重にしないとな。
「気を付けよ」
皆の平和な寝顔を見て思ったさ。
何だかんだで、マーリク市に戻ってきた。
ガッポリ目の報酬で残金に少し余裕が出てきたのと装備がガタついてたり消耗品の補充も必要になってる。
今回は提出を求められたのでギルドにゾンビクエストのレポートを出した後でギルドの食堂に寄り、マサル隊結成以来初の、
『ちょっと金余ってるけどどうする?』
というバブリーな会議をする事になった!
のだが、
「え~、その前にだ。まぁ最低限度はババンバで済ませたが装備や持ち道具だいぶアレな状態ではある。あとギルドの保険費、税金何かも・・」
「初手からテンション下げ過ぎ」
「まず装備が損耗してますしそういった点では、0の状態から今マイナスですよ?」
「ふむ、追加で補修費や必要な物のリスト等を作るといいぞぅ?」
「それいいギムオン。ちょっと計算してみるか? 下取りは一旦無い物としてさ」
足りない通常物資、光り玉、癇癪玉、魔法石の欠片、ポーション、霊木の灰。装備の修理費用、飛び道具類の弾の補充、大体だが20日分の5人の滞在費、ちょっとは貯金、何か地産品とか実家に送る費、でもって保険、税金等々・・
「思った程は残りませんね」
「温泉で少々財布を紐を緩めていたからな。はっはっはっ」
誰だ、「せっかくだから『スシー(高い)』食べようぜ?」とか言ったヤツ。
俺だ! 美味かったっ。
「あたしは自分用の癇癪玉を買い増しするわ。半端にちょっとだけいい短剣とか買い直しても、今のあたしじゃね。あ、あと工作用のワイヤー買おっかな?」
具体的な話は早いユーレア。
「なら俺は中古の鉄製の片手剣買いたいな。銅剣は攻撃力以前にリーチがキツい」
小剣だし。
「私も護拳を鉄製にしてみるかなぁ」
ぶっちゃけるとギムオンは『投擲しまくる』のが一番強い気もするが。
「僕は苦手なヒールの魔法を習得します。割高な魔法書を買えば僕でも覚えられるはずっ」
ゾンビ村で『ヤポポが寝たらヤポポを回復させるのがムズいっ』という一点で全滅待った無しまで詰められたかんな・・
「じゃあ、わたしは魔法石の欠片を買い増ししときますね。いざとなったらラダや皆にも分けられるし」
方針は決まった。
小腹が空いていたから皆で食堂のホットケーキセット(安い)を平らげつつ、
「よっし、買い物しようぜ!」
俺達は魔法書屋に行くラダと一旦別れ目当ての店に向かった。
・・よろず屋フルカ。白鼬人族達が営むギルドの認定協力店だ。
店員がヌイグルミみたいで可愛い。
「らっしゃーい! 安いよぉ?!」
確かに安い。中古新古が多い。道具類も充実。ただしさほど強力なのは置いてなく、全体的に小粒な専門店ごとにあちこち回るのが面倒なビギナー向けの店だ。
同じ店舗の中にドワーフ族経営の金属武具補修調整店とフェザーフット族経営の布革製品の補修調整店も入ってて便利。
ここは道路沿いにタコヤーキ店も入ってる。あの丸くて熱いヤツ。
「タコヤーキ美味しそうです~」
「さっきパンケーキ食べたろ? 食べ過ぎ」
「むぅ~」
ワープラントは栄養を『溜める』事ができるらしい。クエスト中は自重してるが、普段はほっとくとどんどん食べる・・
ともかく買い物や装備の補修と調整はサクッと済んだ。ギルド認定店だから値下げ交渉とかも有り無しの線引きがハッキリしていて早い。
俺はマーリク市衛兵隊のサーベルのお下がりを再調整した物を買った。いわゆる『鉄の剣』だ! しゃっ。
「そんな衛兵隊入りたかったの? しつこ過ぎぃ」
「ちが~う。たまたま条件合うのがコレだった! それだけだっ」
「へぇー」
「鉄のサックが安く買えたから皆にタコヤーキを奢るぞぉ?」
「やたぁーっ、です!」
ラダには悪いが俺達3人はアツアツのタコヤーキをギムオンを奢ってもらった。ラッキー。
ラダとの待ち合わせは俺達の定宿、樫木亭だ。2階と3階が宿になってる。ここもギルド認定協力店。概ねビギナー向けの宿。
一階の酒場兼食堂で雑談しながら待っていると、ラダが萎れた感じで帰ってきた。
「はぁ~、習得はできましたけど。基礎魔法にこんな苦労するとは・・ここまで治癒魔法に向いていないという事は、あるいは僕は人間的に問題があるのかもしれません。思い起こせば、5歳の頃、犬を飼っていたのですが」
ラダの『自分語りスイッチ』が入った。
俺達は萎れたまま語り続けるラダを近くの長椅子に静かに寝かせて毛布を掛け、しばらくそっとしておく事にした。
「うむ、何にせよ我らがマサル隊はヒール要員が2人になったぞ? めでたいっ」
「ポーションは外傷以外は経口摂取できないと効率悪いかんな」
「わたし達は前途有望ですねぇ!」
「この調子で6級冒険者認定もチョロ過ぎかもよ?」
俺達はそれぞれ軽く勢い付きつつ、ラダにも4人で何か甘い物を奢ってやる事にした。
準備は万全! 次のクエストに挑むぜっ。




