帰る日
ふと目が覚めて、ごそごそと動き出すと、タブレットで時間を確認する。
……朝の6時か。何時に眠りについたのかわからないから、どれだけ睡眠をとったのかわからないけど、意外とすっきりしている。
まぁ、いつも短い時間しか寝ていないし、それでもすっきりしていた私。それと同じくらいに感じた。
意外と眠れたな。なんて思いながらキッチンに行くと、すでにムーナが起きていて、キッチンで朝食を作っていた。
「早いな。ムーナ」
「そういうエルもね。朝食もあと少しでできるから」
手際がいいムーナは、2口あるコンロの両方に置いたフライパンを交互に振って、焼き目を付けた昔ながらのフレンチトーストが皿の上に流れてきた。
「こんなものでいいでしょ」
「相変わらず手際がいいな。久々に料理なんてしただろうから楽しかっただろ?」
「いつもは、アリンとイルの2人が食事を作ってくれるからね。なんとか腕が鈍ってなくてよかった。って思ってるくらい。それに、昨日もいろいろ作ったからね。なんとなく休暇の感覚になってるよ」
まぁ、わからないでもないか。仕事をするわけでもなく、ただただ、警察から詩について聞かれたから調べに来ただけ。それも、わかればラッキーだなって言う感覚で。
ましてや、私の部屋から、探しているものと見たようなものが見つかり、調べ物が終わってしまうという……。今日は今日で帝都に戻る日になるかな。
「これを食べたら帝都に戻るか」
「だね。一緒に探してくれてありがとう。やっぱり、ここは書物がありすぎて困るね」
「かといって、わざわざ帝都に持って行っても肥やしになるだけだし、それに、持ち込んだところで、みんな気になることがあればタブレットで検索してだれも読まないだろう?」
「エルだってタブレットで見つけようとしていたもんね。私は地道に書物で探していたけど」
まぁ、そうなんだよな。途方もなくあてもなく書物を漁るよりも、タブレットでほんの僅かにかすったものを探すほうが早いと思ってそうしていた。
結果は、ムーナが地道に調べるほうが早かったが……。
「とりあえず、昨日の本をタブレットに読み込ませて持って帰るか。エル、部屋に入らせてもらっていいよね?」
そうか。証拠を持ち帰ったほうが信用してもらえるか。
「あぁ、いいぞ。他にも気になった奴があったら、本自体を持って戻ってもいいんじゃないか?」
「そうさせてもらうよ」
ムーナはそう言うと、私の部屋にぱたぱたとかけて行った。
さて。私はもう少しゆっくりさせてもらって、ムーナと一緒に戻るか。
そんなことを思いながらキッチンに隠していた酒をチビチビと飲む。
昨日は、ムーナのことを気にせず、たくさん飲めるかななんて思っていたけど、まぁ、そううまく行くわけはないよな。
あと、ここに来る回数は、もう少し減りそうだから、ここに置いてある酒を何本か私邸に持って行くか。
あとは、アリンとイルに見つからないようにしないといけないから、隠すとするなら、やっぱり私の寝室だな。
「エル~、もういいけど、何か持って行くものあるの?」
もう持って戻るものを選んだのか、ムーナが食堂に戻ってきていた。
私も慌てて酒を何本か選んで自分のカバンに入れ、ムーナには「少し待ってくれ」とだけいって、カバンを持ったまま自室に向かう。
そこで持って行くのは、昨日に少しだけ開栓して飲んだ酒。
さすがに開栓して口をつけたものを置いておく勇気はない。ここで発酵してすごい匂いになるのも困るしな。
そんなことを思いながら、その酒ともう1本をカバンに入れる。
いろいろ酒を詰め込んだかばんは、まぁ、重い。
酒をもちかえることをムーナに悟られないように、カバンの口を締め、重さを感じていないようなふりをしてやり過ごそうとする。
「もういいんだ」
「あぁ、持って行きたいものは、最初の時に持って行ったからな。とはいっても、もともと私の荷物が少ないだけなんだがな」
そういうと、私は先にアジトを後にする。
もちろん、スルスルと後ろからムーナもついてくる。
「久々のアジトもよかったね。懐かしい感覚だったし」
「あぁ、そうだな。なんというか、帝都の私邸も、ここに似せて作らせたけど、長年あそこで暮らしていた感覚とは違うからな。私も懐かしかったよ」
帰りはそう急ぐもなく、ムーナとゆっくりと話しながら山道を降りていく。
そこで私は昨日の夜に考えていたことを思いだした。
次話は9月3日13:20に更新いたします。
また、この先、3日おきでの更新になります。予めご了承ください




