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Snowdrop ~雪の華 あなたの死を望みます~  作者: 黒龍
番外編 新年度編
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新年度P5

 さて。お時刻はちょうど日の出のお時間でしょうか。そろそろクラシア様を起こして身なりを整えさせていただきましょうか。


「クラシア様、おはようございます。お時間でございます」


 これで起床されたら御の字ですが、まぁ起きることは滅多にないです。

 ただ、今日は就寝の波長があっていたのか、1度で目を覚まされました。

 これがずるずる行くと、身体を揺さぶったり、酷いときは、ビーロイアの『スノードロップが奇襲をかけてきました!』と絶叫している録音ボイスを利用すると言うことまで。

 さすがに、長年の癖は染み付いてしまっているご様子で、一度流すと、ガバッと起き上がられます。

 今日に関しては、すっと起きられたので、これ以上のことをすることはありません。


「おはようございます、クラシア様。お気分はいかがでしょうか?」

「あぁ、アリアス。おはよう。今は何時だ?」

「ただいまは午前6時半でございます。朝食のご準備はいつも通りできております」

「そうか。ありがとう。それじゃあ、先に朝食をもらおうかな。そのあと、着替えて面会だな。はぁ。今日は長いぞ」


 クラシア様がそうおっしゃると、一つ大きく伸びた後、寝台から降りて、食堂へと向かわれます。

 そして、すでに並べさせていただいた席にお座りになると、ゆっくりとした手つきで召し上がられます。

 その所作一つひとつが誰に見られてもいいように静かで美しいもの。さすがに、諸外国との食事会などで器を測られるため、繰り返すうちに身に着いたご様子です。


 ゆっくりと朝食を召し上がられたクラシア様は、わたくしに「おいしかったぞ」と声をかけていただき、更衣室に潜られ、わたくしも一緒に更衣室に入らせてもらい、正装へ着替えるお手伝いを。

 この正装が面倒だといつもクラシア様はおっしゃられますが、わたくしもそのように思います。というのも、普段から首長というイメージを崩させないために、お堅い服操で公務をこなされるクラシア様。

 それはもちろん、わたくしも把握しております。が、ほかの長と面会や会談となると、さらに高貴なイメージが求められるようで、さらにお堅いイメージのつく服装で人前に出られます。


 正装に着替えられた後は、専属のスタイリストの方に来ていただき、そうしてクラシア様をメークアップしたあとは、共に執務室へと出向き、各省庁のトップを待ちます。

 本来であれば、副首長の立場であるエルトゥーヤさんが先陣を切りますが、昨日、お越しになっているので、本日の準備には少しだけ余裕がありました。


 そして、10時になりますと、防衛省のトップから順に30分ほどずつ面会を実施。その中で、挨拶から始まり、要望や要求、予算の拡大を狙ってお話をされておりますが、クラシア様は顔色一つ変えず、耳を傾けるだけ。各省庁のトップたちは、話を聞いてもらえたことに満足なのか、すっきりしたお顔で執務室から退室されます。


「本当に自分のことだけしか考えてないよな。あいつらは。そろそろ一斉に人事更改してやろうか」


 朝の予定をこなされたクラシア様がボソッとつぶやくのを、わたくしは聞き逃しません。


「特に、防衛省なんかは、汚職が発覚してからまだ数か月しかたっていないのに、なんだよ、あの態度は。大きい態度が気に入らん。ゴマをする前に、謝罪から入るところだろうし、予算要求より先に、帳簿や経費の使った履歴の報告が先だろう。なにより、何一つとも報告しなかったのが気に障る。せっかくどこにも属していないムーランを起用したというのに。これなら、レイチェルのほうが断然マシだぞ」


 あっ、このクラシア様の雰囲気。スノードロップのときと同じです。これ以上、不機嫌にされますと、爆発してもおかしくありません。

 とりあえず、今は、お食事とデザートで機嫌を直していただかないと。


「クラシア様、お食事の準備をいたしますね」

「あぁ。頼む。それから、食前にブラックも頼んでいいか?あいつらの話を聞いていると、私の機嫌も悪くなるし、眠たくなるしで仕方がない」

「かしこまりました」


 えっと、わたくしの思っていた以上にクラシア様のフラストレーションは溜まりに溜まっておられます。そう急に解消しなければなりませんね……。

 とりあえず、キッチンにもぐり、水の入ったポットの中に私の炎魔法を少しだけ発動させ、お湯を沸かします。

 瞬間的に沸きますので、そのお湯で少し濃い目のコーヒーを。こうも不機嫌で眠そうなクラシア様には、少し濃い目のブラックコーヒーが一番落ち着いてもらえるものなのです。

 そんなクラシア様に尽くすのはとてもやりがいを感じますね。

 準備できたコーヒーと早朝に作っていたサンドイッチをもってクラシア様のもとまで。


「クラシア様、お待たせいたしました。本日の昼食でございます」

「あぁ。すまないな。あと、さっきはお前がいる前なのに、愚痴を言ってすまなかったな」


 クラシア様に謝られますが、わたくしとしては、あまり気にしておりませんので「お気になさらず」とだけお答えさせていただきます。


「お飲み物もこちらに置かせていただきますね」

「あぁ、すまない。ありがとう」


 クラシア様は、置いたコーヒーを手に取られると、何かの資料を見ながらお飲みになります。おそらくですが、このあと面会を行う省庁のトップの方々のことでしょう。

 さすがに十いくつの省庁のトップを名前は憶えていようとも、性格や経歴までは忘れておられるでしょう。そして、今、お読みになっている資料は、以前に感じた性格や経歴のことかと思われます。

 クラシア様のことです。性格や経歴を重視されますので、しっかりと読み込まれておられることでしょう。

 こうなることとはつい知らずでしたが、サンドイッチをご用意して正解でしたね。これで、パスタなどを用意すれば、両手がふさがり、業務の邪魔になっていたかもしれません。


 資料を読み続け、食事の量に歯止めが効かなくなってしまわれたクラシア様。次から次につままれ、ついにはなくなってしまいました。

 確かに、たくさん準備は致しましたが、わたくしもご一緒に食そうと思っていたものですし、昼食として余れば、間食か、リメイクして夕食にお出ししようとしていたのですが……。ものの30分で3人前を召し上がられてしまわれました……。

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