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34.最終決戦

 最終決戦に向けて、官邸を出た私たち。目指すは数百メートル先にある情報庁。ここでいやでも決着をつけるという。

 歩きながらエルの話を聞いていると、闘技場とは比べ物にならない広さを持っているらしい。これには、5千人が待機しているかもしれないというエルの情報は信ぴょう性がある。

 カナも、透視をして周りを見るけど、敵反応がぐるっと一周しているようで、さらにその手前に5つ反応があるらしい。

 さすがに、反応を数えられるのはその5つのみで、あとはとんでもない大群だということを改めて思い知らされる。

 そして、カナは、その最終決戦の場がどれくらいの広さなのか、身をもって分かったようだった。


 10分も歩いていないだろう。あっという間に情報庁の正門についた。

 静かな場の空気は、この先に待ち構える惨劇を物語るようだった。

「みんな、無線機だけオンにしておいて。私とカナで先に上って状況を確認する。マリア、私とカナをこの屋根に上げてくれない?」

「オッケー。城壁のほうでいいの?」

「できたら。建物のほうは高すぎる」

「了解。それなら、タイフーン!」

 マリアがそう言って、下から上にてを振り上げると、私たちの足元から上に向かって風が吹き、私たちの体は一瞬で浮かび上がる。

 そして、地上から4階ほどの高さまで体が持ち上がると、そっと風の力が弱くなり、優しく城壁の屋根に降り立った。

 静かに、城内覗く。

「思った以上に広いね。これで大勢に囲まれたら恐怖だろうね」

「そうだね。あれなら、マリアちゃんにもここに来てもらったほうがいいかもしれないね」

「とりあえず、この状況を伝えてあげようか」

「そうだね」

 ということで、無線機を通じて、ルナを呼び出す。

「ルナ~、取れる~?」

『どないしたん~?』

「状況を伝えるね~。正門からぐるっと囲うように政府の兵士たちがいて、一番手前に5人、女性かな。立っているみたい。で、正門をくぐったところになにかあるっぽいから、それを超えたら、戦闘の合図になりそう。ただ、暗くて見えにくいっていうのが一つ何点かな」

『オーライ。まぁ、明るいのに越したことはないけど、うちらは月明かりさえあれば、暗いのは慣れてるからいけるやろ』

 ルナからはグリーンライトか。それなら、あとはルナから情報を聞いたエルたちに任せるかな。

『アカリ~、取れる~』

 と。ルナから無線が飛んできた。

「どうぞ~」

『エルがもう行くって。また上から見てうちらキッシングナイトに指示頂戴』

「了解。エルに言っておいて。ご武運をって」

『オーライ』

 ルナからの返答があったすぐあと、一斉に広場が明るくなった。

 目線を上げると、大量の発光器が広場を照らしていた。

『ようやく来たか、負け犬どもめ。いつ来るかとずっと待ちわびておったわい』

 無線機越しに聞こえる会話。どうやら、すぐには戦闘にならないみたい。この間に指示をしておくか。

「ルナ、マリア、ユカリ、一方的に作戦を言うね。とりあえず、私たちキッシングナイトは、スノードロップの言葉通り、デパーチャー、おそらく、正面にいる5人組に集中させたいと思う。キッシングナイトは、周りの兵士の対応を。エルたちが無駄に攻撃されないように、できるだけ守ってあげて。私から技は問わない。できるだけ不殺を心に命じて。私も上からできるだけ援護はするつもりでいる。カナには、どこに何人いるか伝達をお願いするね」

『オーライ』

 みんなからそれぞれ返事が返ってくると、私も気を引き締める。

 私はとりあえず、上からミーティアシャワーになるだろうな。できる限りの足止めをしたいっていうのもあるけど、コントロールしやすい。

 ただ、問題は、風かな。広場が広いうえに、城壁が高い。上に登っていても、風が回るのを感じる。風魔法使いなのに、弱点が風って、やっぱり、なんで?って思われるところもあるのよね。

「カナ、エルたちと、一番遠い兵士たちまで何メートルある?」

「一番遠いところで、400くらいかな」

「了解。ありがとう」

 距離の確認をしていると、無線機を通じずに、話が入ってくる。

「ずいぶんとずさんな部下に飼われていたようで。貴様らの情報は全部私のところに入ってきているよ。ぜ~んぶ、ここにいるレイチェルがしゃべってくれたよ」

「レイチェル、貴様~」

 なんだろう。声が大きいな。普通ならこんなに声が届くことはないと思うんだけど……。

「ごめんね~、クラシア様~。私、こっち側の人間なんで~。あっ、今は、呼び捨てでもいいのか~ごめんね~、クラシア」

 レイチェルさん、相当煽っているな。これ、本当に大丈夫なのか?そして、煽られたクラシアと呼ばれる女は微動だにしない。動揺はあるけど、顔には出ないタイプみたいだ。

「それはそうと、過去から連れてきた助っ人はどうした?逃げられたか?」

「ふん。そんなわけないだろう。ちゃんと全員最後まで私たちスノードロップの味方だよ」

「こちらは5人と聞いていたが、3人しかいないように見えるが?それでも逃げられていないときっぱりと言えるんだな。強い心だ。お前が忠誠心を誓えば、すぐに高官になれただろうに。もったいない」

「馬鹿を言うなよ。ババアよ。お前たちは何も知らないんだな。すでに戦いの準備を整えてくれているよ」

「ふん。いつまでも強がりを。そうだ。最後に言い残したことはないか?今なら聞いてやるぞ?」

「ふん。馬鹿々々しい。貴様らこそ、最後の言葉を残さなくていいのか?」

「小娘どもに残す言葉などない。さて、どうやら、最後に残す言葉もないみたいだし、そろそろ行くか。いざ」

 そういうと、クラシアは、静かに手をかざした後、自らも戦闘態勢に入ったのがここから見ていてもわかった。

 ただ、ここでミーティアシャワーを打つわけじゃない。あくまでも、敵が動き出してから私たちも動き出す。正当防衛という既成事実を作るためにね。

 そこから、にらみ合ったまま数分、しびれを切らしたのか、相手から一人、こちらからはナターシャさんが飛び出し、剣をぶつけあう。

 剣がぶつかり合った瞬間、全員が一斉に動き出し、場内が一瞬で騒がしくなる。

「ミーティアシャワー!」

 私は上から、一番遠い場所を狙い、道をふさぐように矢を飛ばす。そして、近距離戦が苦手なマリアは、自分自身を魔法で担ぎ上げ、私たちと同じところに。

「ごめん、やっぱりここじゃないと、私、戦えない」

「そんなことだろうと思った。マリアも最初からここに連れてきたらよかったと思ったよ。とりあえずさ、固まっているとまずいから、マリアは、ルナたちの支援してあげて。二人で360度はたぶん難しいと思うから」

「了解。とりあえず、囲まれそうな両サイドから行くよ。グリッドウォール!」

 一瞬で出来上がる砂の壁。あくまでも一時的なものだろう。

「タイフーン!」

 そういうことか。中の10人の邪魔にならないようにそうしたのね。天然マリアも眠気に負けず頑張っている。

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