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Snowdrop ~雪の華 あなたの死を望みます~  作者: 黒龍
戦闘

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28.収容所 p1

 エルが言うには、いつになく冷静に事が進んでいる。らしい。

 正直、行き当たりばったりになっている気がするのは気のせいだろうかと思うほど、戦闘の回数が私の想定以上に多い。

 私たちが先に南側に向かうことになっていたけど、待ち伏せられていたかのようにこちらからけん制攻撃を仕掛けることも多かった。

 もしかすると、私たちもやっぱり敵判定されているみたい。

 エルに話を聞いてもそうだった。

 山岳警備隊のせいなのかもしれない。だけど、そりゃそうなるよね。自分たちに攻撃を仕掛けてきたら、敵認定にするよね。

 そして、100人くらいの集団に襲われて、入った戦闘。前線は近距離戦士3人が戦闘不能にして、中列以降の兵については、マリアの強烈な風で真ん中から両サイドの建物へ吹き飛ばして、戦闘は終了。

 ここから収容所に向かって、スノードロップの仲間を救出らしい。

「ここか。とりあえず、あの門を爆破して、中に侵入しよう」

 エルが少しにやついたのを見逃すことはなかった。

「マリア、少し風を貸してほしい。手りゅう弾を少し遠くまで飛ばしたい」

「ごめん、その前に休憩させてほしい。少しアルカイックランの反動が来ているのかも」

 カナが少し待ってもらうように言う。たしかに、ずっとカナが補助魔法を担っていた。

さすが6時間持つよ。と豪語していたものの、同時に透視を広い範囲でしていたらさすがに疲労がたまるよね。

 普段、サナミを相手にするときは、なにかを同時に発動させるなんてしないはずだし、今回は、生と死がより近く感じる。その緊張感も合わさって、より疲労感を出しているのかも。

 実際に、カナの顔はかなり疲れた表情をしていて、肩で息をしていた。

「すまない。慎重に行っているぶん時間を気にしすぎていた。カナの顔を見る限り、少し辛そうだな。気づかなかった。すまなかった」

 エルは、いろんなことを気にしているようで、ケアはしているけど、ケアが追い付いていないようにも見える。

 とりあえず、カナにリカバリーをかけてあげようか。

「カナ、おいで」

 優しく呼んであげて、カナにリカバリーをかける。

 ただ、相当消費していたのか、私も少し魔力を吸いとられる感覚に陥った。

「カナ、どれだけ魔力消費していたのよ」

「ありがとう。でも言えないよ。こんなに敵がいるなんて想定もしていなかったんだから。それに、サナミのときと違って、今回はずっと走り回ってるから、そのせいもあるかも」

 えへへと笑うカナの顔は少しばつが悪そうな表情を浮かべていた。

 確かに、遠距離からサポートする私たちは、近距離でサナミを相手するルナやユカリに比べて、大きく動くことは少ない。スタミナの面で大きく差が出ている。

 今はこれくらいで済んでいるけど、後々、とこまで響くか。

 一連の戦闘が長引けば長引くほど、遠距離の私たちは厳しくなっていくだろう。


 カナにリカバリーをかけると、エルは安心そうに私たちを見て、目線の先をマリアにかえる。

「マリア、10メートルほどでいい。風を吹かしてほしい」

「手りゅう弾を投げるって言ったっけ?りょうかい。よいしょ」

 マリアが少し強く手を扇ぐと、後ろから少し強い風を感じた。

「エル、乗せるなら今だよ」

「あ、あぁ。助かる」

 少し驚いた表情を見せたエル。

 そういえば、エルって、マリアが2種類の風を操れること知らないんだっけ?

 ここにきて、見せていない手が出てくるって相当怖いことなんだと思うけど、私たちも、エルのもち技すべてを知っているわけじゃない。そこは、お相子になるかな。

「それ!」

 暗闇の中で、暗い色をした手りゅう弾は、マリアが起こした風に乗り80メートルほど離れた収容所の門の前で落ち、破裂した。

「敵襲だ!」

 声が聞こえる限り、死人は出ていないみたい。そこはエルも手りゅう弾の威力を調整しているみたい。

「さぁ、行くぞ!」

 声を張り上げて、突っ込んでいくエル。仲間がこの建物に捕らわれていることがわかっているみたいで、血気盛んに突っ込んでいく。

 そして、門兵たちは、砂ぼこりが収まるとすぐに、エルの姿が見えたのか、さっきの南門のときと同様、さらにパニックに陥っている。

 ただ、後ろのほうで待機していた兵については、私たちが襲撃してくることを予想していたのか、冷静に、エルを取り囲もうとしている。

 さらには、私たちの存在にも気づいたのか、私たちも取り囲もうとしている。

「さすが、リスク管理だけはできてるね~。私が急に現れても驚くことすらしない。狙われ続けているだけのことはあるね~」

 エルが関心そうに言うけど、私たちはプチパニック。

 なんせ、サナミに私たちが囲まれることなんて一度もなかったから。

 そして、唐突に囲まれたため、私たちキッシングナイトは、いつもの隊形をとることができなかった。

「アカリ、こんなところで、流星とかライズとか打っても意味ないよな?」

 ルナが聞いてくる。なんとかして、自分たち有利に運びたいのはわかる。だけど、これは少ししんどいかも。

「効果でないから難しいかも。せめて、20メートルは離れないと」

「やんな~。うちらがジャイアントスウィングで飛び上がっても、アカリたちが危ないし……」

 私も必死に頭を回転させて作戦を立てようとするけど、さっきの方法しか思いつかないかも。

「ルナ、ユカリ。さっきのコンビ技、2人で行けそう?」

「さっきのって?……あっ、スプラッシュバード?」

 いつの間にそんな名前が出来上がってるのよ。そんなことは口に出さず、私の思っているわざと、ルナの思っている技が一致しているのを確認してから、お願い。と伝える。

「オーライ。ユカリ、さっきと同じように、前を走って」

「了解。ずぶぬれにしてもいい?」

「かまへんで。そのほうが電気がよく通るしな」

 2人ともピンチという状況を楽しんでいるようにも見えるのは気のせいだろうか。

「それじゃあ、お先にコスモスプラッシュ!」

 ユカリのコスモスプラッシュは、派手技が好きなユカリにはぴったりだ。

 威力は少し弱いものの、水を剣にまとわせ、斬りつける。そして、斬りつけられたはずみで、水の膜が割れて、水滴が飛び散る。

 そして、ルナのサンダーバードは、電気を剣にまとわせ、相手を斬りつける技。少しでも触れるとしびれるため、サナミの動きを一時的に鈍らせるために使うことが多い。

 この2つの技をコンビネーションとして使うとき、ルナのサンダーバードがさらによく効く。

 さすがに、今は、人間が相手だから。ルナのサンダーバードは威力を最小限にしているみたいで、血を流したり、電撃の熱で熱傷を負ったりということはなく、みんな気絶で済んでいる。

「見惚れとったら知らんで!サンダーバード!」

 ユカリのコスモスプラッシュのすぐあと、ルナのサンダーバードで前方にいた兵たちはみな気絶。あとは、後方、私たちのところだけだ。

「ルナたちが来てくれるまで、短剣で応戦する?」

「危ない気もするけど、それしかできなさそうだね」

 言ってもおそらく30秒ほど。それだけ我慢できれば、なんとかなるだろう。

 ただ、エルのほうも気になる。先に行ってしまった分、エルが単体で囲まれている。

「ルナ!ユカリ!先にエルの支援行って!私たちは何とかする!」

「ええんか!?ユカリだけでもそっち向かわすけど」

「大丈夫!マリアもいるし。エルの支援してあげて!」

「了解!」

「マリア、グリッドで私たちを覆うように壁を作って。正面からの攻撃はできるだけ防いで、応戦を待とう」

「確かにそのほうがいいかもね。エル一人でもいいんだろうけど、ひとりだけ囲まれて対応するっていうのは難しいだろうし」

「だね。おっけー。グリッドウォール!」

 私たちも一応、防御態勢に入るために、マリアに壁を作ってもらう。

 マリアは、地面をぐっと押して、砂の壁を出現させる。

 イメージで強度も大きく変えることができるから、私たちも安全だね。

 そして、壁の向こうでは、エルたちが必死に交戦している声が聞こえる。建物の中に入ったらリカバリーをかけて、回復してあげないとね。そんなに軟なスタミナ、魔力じゃないことはわかっているけど。

「これで終わりだ!ジャイアントスウィング!」

 エルの豪快な声が聞こえたあと、地面が少し揺れる。

 イライラしていたときのユカリの威力より少し強く感じた。

 そして、風圧もマリアの砂の壁がなかったら、油断して確実に飛ばされていたかもしれない。

「エル、豪快にいったね」

「みたいね」

「アカリ!そっちの支援行くわ!って、砂の壁で身を守ってたんかい!」

「攻撃できないもん!仕方ないでしょ!」

 正直言うと、しようと思えば、マリアに任せることはできる。

 ただ、100人くらいに後ろ半分を囲まれていて、マリアに風の渦を頼むと、一か所に固まる恐れもある。それで、圧死されたら困る。流れる風を頼んでも同じことになるだろう。

 吹き飛ばす力は、どこに飛んでいくかがわからないから、むやみに強い力で使えないという難点がある。

 それに、私は、矢を風の力で飛ばす。少ない人数や長細いところは十分に対応できるが、大人数だったり、相手との距離が近かったりすると、私の長所は発揮できない。

「ジャイアントスウィング!」

 ルナの声が聞こえたあと、少し地面が揺れた。

「アカリ、もう大丈夫やで」

 ルナの声が聞こえたのか、マリアが砂の壁を解放した。

 わずか1分。さすがだ。マリアも強固に守ってもらえたし、ルナも早く終わらせたいのか、大技で飛んできてくれた。

「2人ともありがとうね」

「よし、先を急ぐぞ」

 私たちの無事を確認したエルは、建物の中に入っていく。


なんとか、半日早くどうにかすること出来ました。


続きはまた明日ですね、、、

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