23.油断
ばたばたとした1日がもう少しで終わろうとしています。
帝都民の避難もすべて完了し、各隊からの臨時報告もメールですべて届き、目を通し、特攻部隊の準備も完了しております。
これでスノードロップを捕らえる準備はできました。空から来ない限りは、ある程度大丈夫でしょう。
ただ、危惧しているのは、襲撃してくる時間がいつになるのかわからないこと。それさえわかれば、楽なのですが、さすがにね……。
とりあえず、少し気を抜いても大丈夫そうですかね。
クラシア様にデザートをお持ちしましょうか。
「クラシア様、失礼いたします。本日のデザートをお持ちしました」
「そうか。少し一服しようか」
クラシア様にデザートをお渡ししようとしたとき、唐突に床が揺れて、危うくお皿に乗せたデザートを落としそうになりました。
地震ですかね?窓もビリビリと大きな音を立てて揺れましたし。割れなくてよかったです。
「クラシア様、お怪我はありませんか?」
「あぁ、私は大丈夫だ。アリアスは大丈夫か?」
「お気遣いいただきありがとうございます。わたくしも大丈夫です」
「それにしてもびっくりしたな。完全に油断していた」
「さようにございますね。落ち着いたと思いますので、私は少しばかり割れたものなどがないかほかの部屋も見て確認してきます。割れたものなどがあれば同時に処分してまいります」
「あぁ、頼む」
双方にけがはないようです。それだけは安心してもいいような気もします。ただ、先ほどの地震。かなり短かったかのように感じます。
♪~
……?わたくしのタブレットに着信?このような時間にどなたでしょうか?
「はい、アリアスです」
『あっ、アリアスさん!?ジュリエッタです!今の揺れでお怪我とかはありませんか!?』
ジュリエッタ様でしたか。どうされたのでしょう。それに、今、地震とは言わず、揺れとおっしゃいましたか?なにか含みを持ったような言い方ですね。なんでしょうか?
「えぇ、わたくしもクラシア様にも無傷でございます」
『今、どちらにいらっしゃいますか!?』
やはり、なにか焦っておられますね。何かあったのでしょうか?
「えっと、わたくしもクラシア様も官邸にいますが」
『そうですか。それでは、そこから西側の窓を確認してください!煙が上がっているのがわかると思います』
煙?ですか。さっきの地震の土埃ではないのかと思うのですが……うん?あっ、あれですね。うっすらと見える。黄色いのは、帝都特別防衛部隊でしょうか?
『わかりましたか?』
「うっすらと見えます。それと一緒に帝都特別防衛部隊と思われる大群も」
『おそらく、先ほどの揺れは、スノードロップが何かしらの手段を用いて引き起こしたものだと推測されます。どこから襲撃してくるかわからないので、帝都特別防衛部隊を中心に緊急配備を敷いています』
す、スノードロップ!?完全に油断しておりました。これは、クラシア様に速報しなければ!
「そ、そのまま繋いでいてください!クラシア様に速報いたします!」
そういって、通話をつないだままクラシア様の執務室に飛び込みます。
「うぉ!びっくりした。何事だ?」
ノックもせず、扉を乱暴に開けてしまったせいで、クラシア様が飛び上がるほど驚かせてしまいましたが、今はそれどころではありません。
「ご無礼失礼いたしました!クラシア様!先ほどの地震と思われる揺れは、反政府勢力スノードロップが意図的に引き起こしたものだと判明したとジュリエッタ様が申しております!」
「何!?ジュリエッタとは連絡は取れるのか!?」
「はい、通信はそのままにしていただくようにお伝えさせていただいています!」
「そうか。ありがとう。ジュリエッタ、私だ。聞こえるか?」
『はい、聞こえております。先ほどアリアスさんの口からもお伝えいただいた通り、先ほどの揺れは、反政府勢力スノードロップに寄り、意図的に何かの方法で爆発を起こし、揺れを引き起こしたものだと推測されます。西側の窓の外を見ていただくとお判りだと思いますが、煙が上がって、ビーロイアが群がっているのがお判りでしょうか?それが証拠です!』
かなり興奮されておられますジュリエッタ様。相当早口になっておられます。
『あと、ムーンライトから午後の緊急映像放送のことについての補足をいただき、私もアナログ文献を調べたところ、ありえないと思いたいとある人物の可能性が出てまいりました』
「ありえないと思いたい人物の可能性?どういう意味だ?」
『はい。はるか昔の文献にほんのわずかしか登場してこなかったキッシングナイトと呼ばれる史上最強の女戦士たちです』
な、なんですって!?
「その表情、アリアス、何か知っているのか?」
「あっ、はい。ジェシー様もおっしゃられた通りで、わたくしも文献を見たり、人づてに聞いたりしたことしかないのですが……」
『私も今調べてみたら、百戦百勝で負け知らずのグループです。しかも、今の時代ではなく、今から350年ほど前、歴史に名を遺した女戦士たち。と言い伝えられています』
「ジェシー様の説明に捕捉いたしますと、頭がキレ、作戦を瞬時に組み立てられる弓使い、念力や透視が使える能力者、風、木の葉、砂を思いがまま自由に操ることができる魔法の使い手、素早い動きで相手をしびれさせることができる刀使い、パワーがグループ1の刀使いの5人です。それぞれの弱点を消しあい、連戦連勝を積み重ね、わずか3年という短い期間ながら、とんでもない強さを見せつけたと文献に表記されています」
ただ、なぜこの時代に過去の人間がいるのでしょうか……。
何かの拍子でこの時代に飛ばされたかという、おとぎ話のような話はありえないでしょう。だとすると、彼女たち自らがこの時代にやってきたとか?……それもあり得ない話ですね。
だとすると、エルトゥーヤ・エディーナがこの時代に召喚した?それが一番ありえそうで、一番あり得ないと思われます……。ではどうやって……。
「ただでさえ、やつら4人を潰そうとするだけで手間がかかるというのに、そこに史上最強と呼ばれる女戦士たち。仲間割れをしてくれるのを祈るしかないな」
確かに、なんなのでしょうか?名前を聞いただけで敗北を予感させる彼女たちの力は……。
「た、ただ、350年前に比べてテクノロジーは進化しているはず。その点を鑑みれば勝機はあるかと……」
「最新技術を集めた特攻部隊を全滅させられているのに、そんな奴らを止められると思うか?」
「そ、それは、エルトゥーヤ・エディーナがいただけで……」
「アリアス。特攻部隊はなんで制御不能になるのかわかっているよな?」
「は、はい。十分に存じ上げております」
「で、弱点を絡めて、お前はさっきに言ったキッシングナイトの説明は?」
うまくかわせたと思ったのですが、クラシア様はやはり甘くありません。逃げ切れず、クラシア様にかみつかれる始末。
「……素早い動きで相手をしびれさせる刀使い。と……」
「どう爆発させたのかわからん。しかし、高圧電流を流してショートさせるほどの力を持っていると見てもいいだろう。ただ、まだわからん。なにがしたいのか。ジュリエッタ。助かった。報告ありがとう。私もそちらに行く」
『かしこまりました。お気をつけていらしてください』
そういうと、通話がプツリと切れ、私のタブレットは静かになりました。
「よし、アリアス。情報庁に行くぞ」
「かしこまりました。すぐにお車を」
「そんなことしていたら奴らに見つかった時、なにもできない。テレポートを使って情報庁に飛ぶことはできないか?」
「あっ。そういえばそうでしたね。今は異常時でしたね。失礼いたしました。それでは参ります。テレポート!わたくしたちを情報庁に!」




