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2.協力要請

 ……うぅ。身体が、だるい。……そうか。魔力切れの反動か。アジトに逃げ込む直前まで無理してアルカイックランを使って敵を振り切ったからな。

 あれから何日がたっただろうか……。

 私は、そんなことを考えながらだるい身体を起き上がらせて食堂に向かう。

 もちろん、仲間はみなあの場所に置き去りにしてしまった。殺される前に救いに行かなければいけない。

 食堂に着くと、誰もいないことを確認して、一番近い椅子に座る。すると、どこからか、1匹の小鳥が私に近寄ってきた。

 そんな小鳥に人間の言葉は届かないとわかっていながらも声をかける。

「お前さんは迷子か?こんな洞窟で。そんなお前さんに出口を教えてやろう。向こうさ。お前さんも早く逃げたほうがいいぞ。ここは時期に政府の奴らが襲ってくる。死にたくなかったら早くお逃げ」

 そう声をかけるも、小鳥は「なんのこと?」」と言わんばかりに首をかしげる。

 ……うん?なんだ、この違和感。

 そう思うと、小鳥をよく観察する。

 ……なるほど。それで逃げなかったのか。よくみると、首元のあたりに小さな魔方陣が描かれている。

「お前さんは、誰かの召喚鳥か。誰の召喚鳥だ?」

 そんなことを聞いても答えてくれるわけもなく、私はその小鳥のあごの下を優しくさする。すると、気持ちよさそうにリラックスしている。

「お前さんは本当に人懐っこいな。誰かさんと違って」

 その誰かさんとは、私の召喚鳥。ここでのことは内緒にしておく。ただでさえ、ツンデレなのにいじけられると面倒だ。

 その時だった。小鳥の尾に何かが結ばれていることに気づいた。

 色が同じだったから、まったく気づかなかった。そして、小鳥の尾から結ばれている先をたどると、小鳥の下につながっていた。

「そうか。お前さんはこれを運んでいたのか。これは、私宛か?」

 そう問いかけると、「ようやくわかったか」と言いたそうに短く鳴いて、その場から少し動いた。

 小鳥の下から出てきたのは、魔力を込められて小さくなった一枚の紙。誰からだ?

 そう思って魔力の力で封印を解いて、中を読む。

 ……なるほどな。そういうことなら、少しばかり時間がある。まだなんとか体制を立て直せるはず。

「気づくのが遅くなってすまんな。お前さんも一生懸命運んできてくれてありがとう。主によろしく言っておいてくれ」

 そういうと、小鳥に少しばかり餌をやる。

 夢中についばむ姿を見て、少しほほえましくなった。

「お前さんなら、帰り道もわかるな?」

 ちゅん。短く鳴くと、そのまま飛び去ってしまった。主のもとに帰るのだろう。

 さて。ここからどうするか。か。もちろん、このまま脳筋のように突っ込んだところで、同じことになる運命は見えている。それなら、少しでも数を増やしたい。もちろん、味方のな。

 でも、どうするか。

 この世界で仲間になってくれるやつなんているだろうか。

 ……いや。いない。いたら、すでに仲間に取り込んで一緒に戦っている。

 それに、そんなやつらはみんな政府の奴らに捕らわれた。捕らわれてからの音信が何もないことを考えると、処刑された。と考えるのが自然だろう。

 何より問題なのは、この国の現状に満足している国民が大半だということ。これはすなわち、私たちのことを白い目で見ている。ということ。

 これにはどうしようもない。なんせ、政府が反政府勢力撲滅キャンペーンと称して、反政府勢力を見つけて報告すれば、賞金がもらえたり、税金を免除されたりする。そうなれば、金が欲しいやつらはそっちに流れるに決まっている。

 そうすると、こちらに味方するものなど、ほぼ皆無。しかも、国民の目が光るから、反政府勢力は見つかりやすくなり、捕まり、処刑される。まぁ、自然と反政府勢力の数は減るよな。

 ふぅ。もしこれで、一人でこの国を変えることができたなら、あの歴史上最強の戦士たちに並ぶことはできるだろうか。

 ……ふん。そもそも目的が違うか。

 あの戦士たちは、平和のために戦っていた。それに対して私たちは恨みを晴らすために戦っている。

 恨みを晴らしたいのはなにも私だけじゃない。政府の政略で親しい人を殺された私の仲間、無謀にも攻撃を仕掛け、政府に捕らわれたものたち。たしか、数は1千を超えていたような気がする。

 目的が違うと、さすがに並ぶことはないか。

 ただ、一度でいい。この世界に召喚して私と手を組んで、一緒に戦ってもらうことはできるだろうか。召喚したところで、私の意見に賛同されず、政府の仲間になってしまうかもしれない。それでもいい。やってみる価値はある。

 これで仲間にできなくても、元の世界に送り返せばいい。やってみる価値はある。

 私は、歴史上最強の戦士たちの名前を口に出す。

「私に力を貸してほしい。キッシングナイト。タイムスリップインパスト!」

 静かに魔法を作動させ、私は魔力を込める。過去から歴史上最強の戦士たち“キッシングナイト”を召喚するイメージを作り、静かに呟く。

 そして、私はまた魔力切れを起こしてその場に突っ伏す。そして、少しずつ意識が遠のく。

 やっぱり、完全に、回復、してなかった……か。魔力が、残って、いただけ、マシとしよう。

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