報告が遅れる原因
「ナターシャ何があった?」
『あっ、いや、えっと……。もしかしたら、コミットムーブしてるかもしれへん……』
コミットムーブ?どこかで聞いたことがあるが、どこだったかな……。
『エルがうちらが捕まった後に、なんやったっけ、変な5人組に助け求めとったやん。そのときの』
ナターシャがそこまで言ったとき、私も思い出した。
「キッシングナイトのカナにしてもらったやつか。……それって、この世界では現存しないんじゃないのか?」
『やと思っとってんけど、どうも、ミル王国は魔法に頼らずに洗脳できる機械を極秘裏に開発しとったみたい。その軍事利用ができるかどうかを戦争という形で実験してるみたいやわ』
「そんなことができるのか?」
『うちも絶滅した魔法技やから、今後一切そんなことはないと思っとってんけど、現に、今ミル王国にそれがあるからな。ちょっとクラシアに言うて、聞いてみるわ。まぁ、クラシアにもミル王国にもそんなものがあるわけもないし、できるわけがない。って言われるのがオチやろうけど』
「やってみるだけやってみな。とりあえず、私は警戒を強めるよ」
『そうしてくれると助かるかも。一応、北斗七星はそっちに向けっぱなしやから、なんかあればまた速報するわ』
「あぁ、頼む」
それだけいうと、私からリンクの通信を切り、隊長室に戻る。
「連隊長、作戦会議だ。状況が変わりそうだ。あと、悪いが、非番の連隊長も起こしてくれないか?」
「はっ、承知いたしました。ただちに」
連隊長はそういうと、さっと非番の連隊長を呼びに行き、私含め3人が隊長室にいる状態。
「で、作戦の前に、今、防衛庁から新しい状況と偵察の結果を教えてくれた。慌てないで聞いてほしいのだが、話によると、今日の12時に砲撃をかました後、歩兵が向かってくる計画を立てているらしい」
「歩兵、ですか。それは話にあった丸腰の状態で?」
「いや、そこまではなってみないとわからん。ミル王国での会話を録音して解析した結果だから、正確ではないかもしれない。だが、警戒を怠らないほうがいいだろう」
「それでは、そのように手配を行いますがよろしいでしょうか?」
「あぁ、そうだな。できれば防衛体制を強化してもいいだろうな。あとは、戦車を2台ほど前線に配置を変えようか。わかりやすく、各方面のトップナンバーとセカンドナンバーを前線に配置替えを命じてくれ」
「承知いたしました。 それでは、本部から各方面の部隊に伝達を行う。各方面の末番1(ひと)番と2(ふた)番の砲撃部隊は前線へ配置害を行い、歩兵部隊については、今までより防衛を強化すること。繰り返す……」
連隊長の指示に少しバタバタしながら動いているようで、指示してから30分ほどしても、どこからも配置完了とは報告が上がってこない。
それでももう少し待ってから、こちらから、配置完了しているのか問うてみようか。
「ここまで遅いのは珍しいですね。車両の配置に苦労しているのでしょうか?」
「そこまで苦戦するようなところか?」
「国境近くの草原に抜けるまでの間の道は細くなっていますので、普通に通るだけだと、特に問題ないのですが、隠すように配置するとなると、本通りから外れると坂のように落ちる可能性もあるので。少し難しくなるかと」
「どこの道もそうか?」
「はい。十数年前に水はけをよくするために、土壌の改善工事があったと聞いており、その際、本通りを30センチほどかさ上げしたので、戦車を隠しながら水平に保つのは難しくテクニックが必要かと」
「そういうことだったか。どおりで遅いわけだ。ただ、今から戻すのも危ないだろう。とりあえず、このまま行ってくれ」
「承知いたしました」
とりあえず、砲撃部隊の準備が整うまでもう少し待ってくれよ。そうじゃないと、ここまで準備した理由がなくなってしまう。
『臨第21ならびに22砲撃部隊から本部。臨第21ならびに22砲撃部隊から本部。遅くなって申し訳ありません!臨第21ならびに22砲撃部隊は戦闘位置確保、準備完了の報告です!』
「臨第21ならびに22砲撃部隊、戦闘位置確保、準備完了、了解。次の指示があるまで待機を命ずる。良ければ復唱!」
『臨第21ならびに22砲撃部隊は次の指示まで待機!』
「復唱よし。平和のために頼む。無線機は一度復位する」
ようやく報告が届いたか。時間は10時半。ミル王国からの砲撃想定計画時刻まで残り1時間半ほど。間に合ったという感覚が強いか。まぁ、それは仕方ないとして、これからが本番だ。なんとしても国民を守って見せる。
「ベン連隊長。お願いしたいことがある。構わないか?」
「はい。何なりと」
「おそらく、近くで医療班が待機していると思う。非番の者も含めて、自分の持ち場についてくれるように連絡を入れてもらっていいか?」
「承知いたしました。ただちに。一度席から外させていただきます」
「あぁ、頼んだ」
それだけ返すと、ベン連隊長はタブレットをもって別の部屋に入った。




