僕の妻
僕の妻は、世界で1番可愛い。僕より小さくて、髪がサラサラで、唇がぷっくりしていて、瞳が美しくて、スタイルが良くて…。今日は、そんな妻と僕のいままでの歩みを話そうと思う。
妻との出会いは、20年ほど前のことだ。彼女は、僕の妹の親友だった。彼女は、よく部屋で妹と遊んでいた。初めて彼女が家に来た日、彼女は妹と美容院ごっこをしていた。美容師役の妹にヘアセットをされて、ふんわりカールされた髪の彼女と、部屋の前をたまたま通り過ぎた僕は目が合った。その時、僕は彼女に一目惚れした。
妹から、彼女には彼氏がいることを聞いた。名前は、イサムというらしい。僕は、そいつに嫉妬した。どうにかしてイサムと彼女を引き裂かなければ。
僕は、駆け落ちした。妹にも、両親にも何も言わず、彼女を連れて。
結婚して20年。僕の生活はいまとても幸せだ。可愛い妻と2人で一緒にこれからも生活していく。 はずだった。妹が来るまでは…。
妹が突然家に押しかけてきたのは、昨日の夜のことだ。僕の友人から僕の勤務先を聞いて、住所を調べあげたらしい。
「お兄ちゃん。いままでどこに行ってたの!」
妹が10歳の時に僕が妻と駆け落ちしてから、会っていなかったから、そこに立っていたのは可愛らしい女の子だった妹ではなく、30歳の女性だった。
「お前。随分成長したな。」
「そりゃ成長するわよ!20年もたったんだから!今は結婚し
て娘もいるわよ!それより!お兄ちゃん!どうして家出な
んかしたのよ!」
「家出?僕は、駆け落ちしたんだ。妻と。」
「はぁ?妻?お兄ちゃん彼女なんかいなかったじゃない!
朝、大学行ったと思ったら行方不明になって。心配したん
だから!」 妹は急に泣き始めた。
「まあ、そう泣くなよ。僕はお前の親友と結婚したんだ。」
「誰よ!知らないわよ。私の友達は誰も行方不明になんかな
ってないわ!」
「ほら。よく部屋で美容院ごっこしてたじゃないか。あの子
だよ。」
「さくらちゃん?」
「いや、それは、僕の妻の親友だろ?」
「他に誰かいたっけ?…春子ちゃん?」
「そんな子いたっけ?」僕は、カタログを調べた。
「何それ?リカちゃんカタログ?」
「僕の妻の電話帳だよ。」
「お兄ちゃん?妻って、まさか…。」
「あっ紹介してなかったね。ほら、僕の妻だ。」
妹は、妻を見た瞬間、泣き止んで呆然とした。
「それ…!私のリカちゃんじゃないの!」
※さくらちゃんはリカちゃん人形の友達、イサムくんはリカちゃん人形の3代目ボーイフレンドです。