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第9話:騎士はひとときの幸せを得る


「いやもうおかしい! 笑いすぎて滅茶苦茶お腹痛い……」


 失意のうちに部屋に帰った俺を、ギーザはかれこれずっと笑っている。

 ベッドの上でひぃひぃいっている姿はかつての嫁を彷彿とさせて可愛いが、やっぱり釈然としない。


「だってあんな……あんな顔でモジモジされたら勘違いするだろ!」

「いやでも、カインは男だし」

「カイン×アシュレイを散々たたき込んだ君が言うなよ!」

「いやいや、現実と妄想は別物だって」


 クスクス笑いながら言われ、さすがの俺もムッとする。

 だからいつもなら詰めない距離を詰め、ベッドに寝転がっているギーザの横に腰を下ろす。


「そもそも、君はあの二人がラブラブなのを知ってたんだろ」

「まあ知ってたけど」

「何故言わない!」

「だってみたかったし、アシュレイとカインのデート」


 ほくほく顔で言うギーザの笑顔が可愛くて胸が詰まり、結局それ以上問い詰めることができない。


「眼福だったなぁ」

「たしかに、凄いニヤニヤしてたな……」

「気づいてたの?」

「気づかないわけない」

「ああでも、せめてケーキをアーンくらいしてほしかったな」

「そんなことしたら、今頃セシリアに殺されてるぞ」

「たしかに」


 言いながら、そこでギーザが何やら考え込む。

 そのせいで意識が俺からそれたのか、普段ある見えない壁が一瞬消えた。

 そしてギーザは、側にいた俺の膝の上にこてんと倒れ込んできた。

 膝の上に頭が乗る形になって俺は戦くが、彼女は自分のしでかしたことにまだ気づいていない。


 彼女は、前世の頃から俺の膝枕が好きだった。

 側によるとすぐ頭を乗せてきて、それは転生した後も変わらず、小さな頃からすぐこうして寄ってくるのだ。

 それがかわいくて、愛おしくて、俺もまた無意識のうちにギーザの頭にそっと手を乗せる。

 優しく頭を撫でながら彼女を眺めていると、そこでふと目が合う。


 ぶわっと、彼女の顔が真っ赤になったのは直後のことだ。

 飛び起きることも出来ずあわあわと戸惑っているのがまた可愛くて、俺はもう一度頭を撫でる。


「もうちょっとだけ、こうしていたい」


 懇願すると、ギーザが戸惑ったように視線を俺から逸らす。

 彼女を困らせてしまったと分かり、俺は慌てて手を止めた。


「すまん、聞かなかったことにしてくれ」


 嫌がることはしたくなくて、俺はそっと手をどけようとした。

 けれどそのとき、ギーザが俺の膝に頬を押し当てる。


「……もうちょっとなら、してもいい」


 ほんのちょっとだけならと、言葉を重ねるギーザの耳は真っ赤だった。

 でももう一度頭に手を置けば、嫌がるそぶりはない。

 髪を梳くように頭を撫でると、ゆっくりとだがギーザの強張っていた身体がほぐれていく。


 それが嬉しくて、幸せで、俺は顔を緩ませながら真っ赤になったギーザの耳を眺めた。

 可能なら今すぐにでも愛の言葉を告げたいけれど、下手に喋ると逃げられてしまいそうなのでここはぐっと我慢する。


 そのままゆっくり手を動かしていると、あまりの心地よさに睡魔がやってくる。

 昨日はデートが心配なあまり一睡も出来なかったため、そのツケが回ってきたのだろう。本当はもっとギーザの温もりを堪能したかったのに、彼女がくれる心地よさに結局俺は勝てなかった。

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