帽振れ
時は流れ2年後。雄大もル・ジャポネ・フィアゼの立派な戦力になっていた。ところが、今日は何か忙しそうだ。それを指示する正宗も何かせかせかしている。
場所は変わって長女空雪も、東京の大手デザイン広告会社で、せかせか仕事をしていた。次女の海美も都内のケーキ屋で、せかせか仕事をこなしていた。美奈子も美容サロンを忙しそうに経営していた。
山島田一家がせかせか仕事をしていたのには、理由があった。それは、明日に控えた次男元治が、防大を卒業する為に家族総出で、卒業式に出席する事であったからだ。
正宗の命令で、何があってもこの日だけは仕事を休むようにと、元治には内緒で集まるよう言われていた。
その全日、外出届のおりた元治は、久しぶりに集まった家族全員と、自宅で卒業パーティーを開いてもらっていた。仕事を早めに切り上げて正宗の自宅に集合した山島田一家(元治を除く)は、主人公である元治を動かさしてはならないと、疲れた体に鞭打って動いていた。料理を担当したのは、正宗だった。仕事以外で、調理をするのは何年ぶりだろうか。
「どうだ元治。これが金の取れる、つまり戦力だ。」
「2年前の雄大兄さんのフルコースが、この料理の前では霞むよ。」
「馬鹿野郎。今の俺なら元治が腰を抜かすような料理を作れるようになるよ。」
「この逸品、食べるのもったいないよ。ねぇ?スマホで写メしてもいい?」
「空雪、空気読めよ(笑)すきにしろ。」
「私は仕事柄デザートのスウィーツが気になるな。」
「お父さんの料理は私も久しぶりだわ。」
「まぁ、そうだろうな。」
「現役を退いて10年は立つからな。」
「もうそんなになる?」
「それにしても、父さんは料理の天才だね!」
「お前に言われてもなぁ。」
「いや。それは御世辞じゃないよ。俺も認める。」
「そんなに俺を誉め称えても何も無いぞ。」
「デザイナーも惚れ惚れする出来映えだわ。」
「ありがとうよ。」
「父さん、後でこのスウィーツの作り方教えて。」
「ああ、良いぞ。」
「今日は無礼講ね。楽しくやるわよ。」
「そうたな。主役は元治だしな。」
6人は久しぶりに家族が集まり、一家団欒を楽しんだ。今となっては、もう皆独立してそれぞれに生活している。家族が離れてしまったからこそ、家族のありがたみが分かるという事もあるだろう。
防大の卒業式には伝統の帽子投げがある。長女空雪は、その光景をパシャりと写して仕事に使うという。まだ、元治の海軍生活は始まったばかりである。辛いことも、苦しい事もあるだろう。
そんな不安と自信が入り交じった頼もしい顔をしていた。それを見に来た山島田一家は、それぞれの帽子を手に取り、遠洋航海実習に臨むため元治は、練習艦隊所属の駆逐艦晴海に乗船した。
「皆、ありがとう!行ってきます。」
元治は、帽振れの合図と共に海軍の制帽を思いきり振り、旅立って行った。 完
海上自衛隊のカレーは艦毎に違う。今回の物語の主役は、そんなカレーを作る自衛官(給養員)をテーマにしたものであったが、如何なものであっただろうか?何か挑戦した事のない分野で書き上げるのも難しかったが、書ききったという達成感の残る作品となった。レシピ本等も出ている海上自衛隊のカレーは美味なものであるが、それを作るのも自衛官なのである。
鉄砲を射つだけが兵隊ではないというのは、この給養員の存在からも分かる。どんなに時代が変わっても、武力による脅威がある以上軍隊は必要であろう。題名にも工夫を凝らした、このカレー(華麗)なるNAVYが読んでくれた人の心に残ってくれれば幸いである。




