山島田正宗が海軍を辞めるまでにやらなければならない事 その①身辺整理
山島田正宗が海軍を辞めるまでにやらなければならないこと
その①うみゆき及び横須賀基地にある私物の整理
長い海軍(海上自衛隊)での生活で、相当量の荷物がたまっていた。護衛艦うみゆきにあった私物は、そうでもなかったが、横須賀基地にあった荷物は、相当凄かった。
汚くしているつもりは一切ないが、塵も積もれば山となる、というヤツだった。何で棄ててないんだというものから、これはそこじゃないだろ?というものまであった。
この荷造りを始めたのは、秋であった。この時期より荷造りが遅れていたら、除隊に間に合わぬおお恥をかくところであった。一通り始末が付いたのは、それから2ヶ月後の年末だった。
「さて、この段ボールで終わりかな?」
「そうですね。やっと終わりましたか。長かった。」
若杉曹長は、物思いにふける様に長きに渡った片付け作業を振り返っていた。
「助かったよ。若杉曹長。」
山島田正宗の荷物は全て、新居である父元海の住んでいた都内の戸建て中古住宅に運び込まれた。
「俺の海軍の退職金の半分はここで消えた。」
家をリフォームした正宗は、家の柱を叩いて、その表情が何とも嬉しそうだった。
「もう半分の退職金は?何処へ?」
「子供が四人もいるからな。養育費かな。」
「子を持つ親の宿命ですかね?」
「お前も子を持ち、所帯を持つようになれは分かるさ。」
「そろそろ美奈子さん、帰って来る頃ですね?」
「ああ、そうだな。それより休みなのに悪かったな?」
「いえいえ、じゃあ自分はこの辺で失礼します。」
「おい、待てよ。飯くらい食ってけよ。それとも、愛しの彼女でも出来たか?」
「残念です。僕には彼女はいません。まぁ、マサさんが、飯くらい食ってけってんなら、そうしますよ。」
若杉曹長は、幸せ一杯の正宗が羨ましくて仕方無かった。
「あら、仁君。手伝ってくれたの?悪いわねぇ。」
美奈子が突然帰って来た。
「今日は寒いから、すき焼きよ。」
「良いですね‼僕も手伝います。」
若杉曹長は、すき焼きときいて、俄然やる気になった。
「貴方は子供の面倒でも見ておいて。」
普段あまり料理をしない美奈子の腕が心配であったが、若杉曹長もついてるし、大丈夫だと安心していた。
この夜、山島田家の食卓はどこの家庭よりも、盛大になっていた。この年の労を労っていた。
私物整理も、まだ家に持って来ただけという状態だったが、若杉曹長の力もあり山島田正宗3等海尉の身辺整理は一応終息した。寒い寒い年夜の夜の事だった。




