血の結束~ロシアと中国~
「佐世保は、良い街だな。」
「そうですね。でもなんだか雰囲気が、横須賀に似てますね。」
「そうかもしれんな。」
「飯は美味いし、中国はこらしめたし、これで当分平和でしょうね。」
「どうかなー?まだ一ヶ月くらいは、中国海軍の残党に気を付けないといけないからな。それにしても……。」
山島田が忙しさから開放された時に、多弁になるのは昔からのクセで、若杉一曹はその対処法を知っていた。
「マサさん。一服しませんか?」
そう。煙草を薦めるのが、山島田の多弁対策法だった。女と煙には巻かれろ。それが昭和生まれの山島田の生き方のモットーであった。
「何だ、誘っておいて吸わないのか?」
「珈琲がありますし、一応、まがりなりにも、給養員なもんで。」
「何だよ。昔はスパスパ吸ってたじゃないか?」
「今はもう禁煙中なんですよ。」
二人は無事を祝って、佐世保の街で夜遅くまで過ごした。
日米の圧勝で幕を閉じたかのように見られていたが、ロシアの本格的な軍事介入により、虫の息だった中国陸海空軍が、勢力を盛り返し再び結集しようとしていた。
近いうちに出動が、あるかもしれない。そう、森滝一佐からは下船の際に言われていた。ロシアのICBMや、SLBMを発射されれば、大都会東京は大混乱である。
再集結した中国及びロシア陸海空軍を叩かなければ、本当の日米の勝利ではなかった。近代兵器が、どのように使われるのか、興味は尽きない所ではあったが、問題はそこではなく、どのくらいの規模の戦力が残っているかという事だった。
日本の海上自衛隊とアメリカ海軍は、哨戒を続けていた航空機からの連絡で、中国東海艦隊のとある基地に戦力が集結しているとの情報を得た。だが、怖いのは中国海軍の雑魚艦隊よりも、ロシア海軍のミサイル駆逐艦や、航空戦母艦「アドミラル・ルザノフ」といった機動戦力である。ロシアの潜水艦隊も侮れない。
だが、第一次黄海海戦に比べれば、第二次黄海海戦の主力は、ほぼロシア海軍の艦艇であり、中国海軍に残されていたのは、50隻あまりのフリゲート艦と、多少の潜水艦だけであった。
ロシアがここまで、戦力を投入してきたのは訳がある。中国が、日米の支配下に収まってしまうと、戦後の世界の権力構造がよりいっそうアメリカに傾倒してしまう。挑戦半島は平和統一され、インドとの関係も良好になる。
その勢力図をロシアは恐れていた。ならば、死にもの狂いで、中国とロシアの血の結束を見せつける事で、ロシアとしてはそんなに深手は負わないだろうと、楽観的であった。
しかし、ロシア海軍太平洋艦隊の半分の戦力が、壊滅的となれば、ロシアとしては完全に深手だった。せめて、刺し違えても、東京にミサイルを落とすくらいの気概は持っていなければならなかった。
ずるずる中国と、共にロシアも引きずられてしまったが、振り上げた拳をおろす場所がないとはこの事である。




