勝利のビーフストロガノフ
うみゆきは、佐世保基地に到着後直ぐに修理のため、ドック入りする事になった。
乗員は、一時的に佐世保基地で寝食をとる事になった。
「怪我はないか?」
山島田は疲れ気味の寺倉三曹をおんぶした。
「やめてください!」
「まぁ、そう言うなって。体は正直だな。今、美味いもん作ってやるから。」
「それを言われると弱いです。というか卑怯です。」
山島田特製のビーフストロガノフが、今夜のメニューだった。
「佐世保の基地の奴に、調理場使う許可とってあるんだ。」
20分後、なんと即席ビーフストロガノフが、出来上がっていた。
「頂きます‼」
寺倉三曹は物凄いスピードで、食べていた。それもそのはず、二日間何も食べていなかったのだから。
「寺倉三曹休め。あとの仕事はやっとくから。」
「お言葉に甘えさせて頂きます。」
「自衛官になって3年足らずで、こんな大きな海戦に参加したんだ。そりゃあ疲れも出るはずだよ。」
「マサさん、俺も一っ風呂浴びて寝ます。」
「おう、お疲れ!」
こうして、うみゆきの対中戦争は幕を閉じた。ただ、現場海域ではうみゆき離脱後も、中国海軍残党の掃討作戦が、展開されていた。米国は、原子力潜水艦を増強し、中国海軍の息の根を止めにかかっていた。
ここまで、徹底されると中国海軍が可哀想にもなってくるが、これが現実のパワーゲームというものである。弱肉強食の単純な論理が現れるのが、戦争である。
きっかけこそ、日中の衝突であったが、米本土から日本を経由させた、米機動部隊と陸海空軍の統合作戦を、巧みに行った米軍の前に中国軍は、崩壊した。
犠牲者は米中合わせて約8000人。規模の大きさから考えて、有り得ない程少ないものであった。
中国は民主主義を取り入れた、新しい国家として、日本や戦勝国アメリカとの関係を改善しており、中国共産党は崩壊した。
民主主義的な中国というのは面白い。経済、政治、軍事力を併せ持つ東アジアのスタビライザーになっていく事になるのだが、それはまだ少し先の話であった。
中国がアメリカナイズされたわけではないが、新しい中国は、勝ったアメリカのスタイルが、正しいと間違った信仰の様なものが、流行化してしまい、悪い影を落としていた。
その一方で、日本といち早く講和し、平和友好条約を結ぶ事で、復興のスピードを早めると共に、また覇権争いに参加してやろうと、密かに狙っていたが、その覇権争いの想いは取り下げた。なぜなら、米軍に首根っこを捕まれた状態では、何も出来なかった。かつての日本がそうであったように。中国もまた軍事力は大幅に削減された。




