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カレーなるNAVY ~7日に一度のお楽しみ~  作者: 佐久間五十六


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湘南の海風に黄昏て

 山島田は、入隊以来ずっと給養員として、任務にあたっていた。

 隊員の食事を管理するという事は、武器を管理するより重要である。それが海上自衛隊第4術科学校の教官の教えだった。

 海上自衛隊の食のエキスパートは、この第4術科学校で教わる。

 兵站の重要性は、エリートじゃなくても分かる事だが、部隊に派遣されるまで、以外とその事は分からないものである。

 そして、艦上と戦場での真水の重要性について叩き込まれる。艦上だろうが、戦場だろうが、水は湧いて出ては来ない。海上自衛隊の場合、出航する前に積み込んだ分しかなく、あとは海水を使うしかない。だが、海水を真水にするコストや手間を考えても、多用出来るものではなかった。

 そんな術科学校時代の事を山島田は、湘南の海で思い出していた。そして、自分の階級章を見て驚いていた。

 「術科学校時代は、2等海士(昔で言う2等兵)だったもんな。それが、20年で3等海尉(昔で言う少尉)になったんだもんな。でも、今思えば、そんな事より大事な事があるよな。」と、物思いにふけていた。

 年功序列制度など、自衛隊とは無縁かと思いきや、そうではなかった。

 確かに防大出のエリート達は、エレベーター式に階級を駆け上がって行くが、下士官や兵隊(曹士隊員)のランクは、限りなく年功序列に近かった。

 そんな海上自衛隊での生活で、山島田が楽しみにしていたのが、夜釣りだった。最初は先輩隊員の見よう見まねだったが、20年もやっていると、プロの漁師顔負けの腕前になる。

 航海中、手の空いている者は、食料として魚を釣るのが、海自というよりは、世界の海軍の常識だった。

 教育隊と、術科学校時代を除けば、ほとんどの時間を、この護衛艦うみゆきで過ごした、山島田にとって、うららでの不祥事による転属返しは、忘れたいと共に、やっぱりうみゆきの方が、居心地がよかった。

 しかし、対極的見地から見れば、新鋭艦の給養員育成を目的とした山島田のうらら転属だっただけに、海幕の頭は痛かった。

 折角のchanceを山島田は不意にした。だが、古巣のうみゆきに戻せば、頭も冷えるだろう。それが、海自としては、最大級の温情だった。

 ならば、山島田もそれに答えなければならない。後輩の挑発に手を上げている場合ではない。

 そう思って、湘南の海を見つめていた。自衛隊をやめる事も、考えたがここで辞めるのは本意ではない。それが、山島田の本音であった。

 5日ぶりに隊舎に戻ると、寺倉美奈子3等海曹が待っていた。今日は土曜日だったなと我に返った。

 あれから二人は、毎週土曜日は外泊許可を得て、営外宿舎で過ごす事にして、結婚したらそこに移り住むことを考えていた。

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