自衛隊ラブ
麺食いなら、ダブル軒へ。ダブル軒という、魚介系と濃厚豚骨のダブルスープが売りの、拉麺屋に行くことになった。
「なぁ、寺倉三曹?戦闘指揮所(CIC)の方はどうだ?」
流石に、自衛官というだけあって食べるのが早い。拉麺一人前と餃子二人前を五分もしないうちに平らげた。
「マサさん、早いです。食べるの。」
寺倉三曹は、うららに来る前、山島田が三尉に昇進した頃から、彼の事をそう呼んでいた。
「うみゆきの時と、大差ないですよ。」
寺倉三曹の言う通りだった。艦は大きいものの、やる事は基本的に一緒だと言うのが、答えだった。
「部下を持つと変わるもんだな?」
山島田は少し馬鹿にしたように寺倉三曹に言った。
「マサさんこそ、士官になれたからって調子に乗ってるんじゃないですか?今頃、海幕ではマサさんを降格させようなんて、話も出てるんじゃないですか?」
寺倉三曹の挑発にキレた山島田が、あること無いこと捲し立てて言った。
「言って良い事と悪い事がある。」ダン!
そう言って、ダブル軒を出た。二千円置いて。
「まだ、肝心のスープが残ってるのに。ご主人、ご馳走さま。」
「あいよ。毎度ありー。」
「待って下さい。今日のマサさん、何か変です。食事に誘ってくれたのも、気味が悪いし、何か言いたい事があるんですか?」
「いや…ない。でも、俺もそろそろ、身を固めようかと。」
今日の山島田はやはり変だった。
「俺と結婚を前提に付き合って欲しい!」
月夜の中で山島田の今持ちうるありったけの勇気を結集して、言った。
「結婚って、急すぎるけど、私で良いんですか?」
寺倉三曹は動揺していた。
「気持ちがないのにこんなセリフ言えないよ。」
山島田はもっと動揺していた。
「じゃあよろしくお願いいたします!」
こうして、二人の交際は無事出港した。余談になるが、自衛官同士の恋愛というのは、以外に多いらしい。男臭い所に女性がいると、どうやら想像以上に効果摘面のようである。
戦前の日本海軍には女性がいなかった為、確証はないが、戦後自衛隊が発足し、婦人自衛官を採用したあたりから、自衛隊ラブは発生していた事は間違いはないだろう。
話を戻そう、山島田と寺倉三曹は横須賀基地に戻った。艦で航海に出ていない時以外は、原則として、所属する地方隊の宿舎で、寝泊まりをする。営外に戸建ての一軒家や、アパート暮らしの初任幹部はいるが、大多数の下士官や一部士官は、基地にいなければならないと、自衛隊法で定められている。
それは、自衛隊の任務の重要性を鑑みれば当然の事であった。




