いつものstyle
特に何もする事はない、いつものトマトチキンカレーを出すだけだった。
若かりし頃のアメリカ海軍士官や英国海軍士官相手の方がよっぽど緊張した。それに、気合いの入り方が違った。
それでも、その時にはない緊張感が、今回の艦上レセプションや、観艦式にはあった。
それは、安部防衛大臣が、無類のカレー好きである事と、長山一佐から嫌味のように伝えられた事が、山島田の中で影響していた。
ここで、艦上レセプションと観艦式について話しておこう。
観艦式は、日本国民に海上自衛隊の装備と練度の高さを見せる事、そして日本国民と触れ合うのが主な目的である。
それに比べて、艦上レセプションは、政府要人特に防衛大臣クラスと、艦上で交流をはかろうというものである。観艦式が、国民向けならば、艦上レセプションは、官僚向けのイベントである。
(これはあくまでフィクションの物語の中の話であり、実際のものとは少し違う。)
量より質をモットーにする海上自衛隊において、観艦式は練度の高さを、国民にアピールする場所でもあった。見るものと感じるものでは、やはり違うものである。
国民への情報開示という、軍事組織として避けては通れない道を、きちんと通りつつも、自らの思惑を満たす。それにうってつけの場所が、観艦式であった。
当然の事ながら、護衛艦うみゆきやうららも、自衛艦隊の一員として、観艦式に参加する事になっていた。
うみゆきは護衛隊群の縦列単縦陣を披露するために参加し、うららは、SH-60J シーホークの離発着を披露するために参加する事になっていた。P-3C 哨戒機や潜水艦部隊といった、機密度の高い部隊も参加していた。
話がそれたが、山島田は、観艦式にいつも通りのスタイルで、臨む事にしていた。偉い人が来るから、どうしたというのだ。そう、開き直る事が出来ていた。
観艦式当日は、会場に多くの一般人が、姿を見せていた。海の防人と一般人が、触れ合うのは、数年に一度のこの観艦式位のものである。
観艦式は、予定通り進んだ。問題なのは、この後に控えている非公開の艦上レセプションであった。正直言って、山島田は観艦式などどうでも良かった。レセプションで出すトマトチキンカレーの仕込みで、大忙しであった。
頭では分かっていても、大事な事であるのは確かであった。しかし、山島田は海幕を恨んだ。




