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カレーなるNAVY ~7日に一度のお楽しみ~  作者: 佐久間五十六


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19/98

10日後の金曜日 艦上レセプション

 その日は、突如訪れた。

 安部強(あべつよし)防衛大臣と、九村一太総理補佐官も出席して行われる、観艦式の日のおもてなし料理をうららで作ってくれないか。というものだった。

 安部大臣や九村総理補佐官の意向で、海軍カレーが食べたいという事もあり、20人前並のカレーを作らなければならなくなった。

 山島田は、若杉一等海曹に相談した。

 「いつものトマトチキンカレーじゃ正式な海軍カレーとは言えなくないか?」

 「マサさんらしくないじゃないですか?」

 「どういう意味だ?」

 「形とか伝統にこだわらないのがマサさんらしさじゃないですか?」

 「それはほめてるんだよな?」

 「いや、いつものマサさんなら、自分が最高に自信持っている、トマトチキンカレーを、何がなんでも出すぞ!って言うと思って。」

 「観艦式だからって緊張しているのかな?」

 寺倉三等海曹が、上官への発言の仕方とは思えない様な言い草で、若杉一等海曹と山島田の会話に割り込んで来た。

 「それはそうかも知れんなぁ。」

 山島田は気にする事はなく会話を続けた。

 「今回の艦上レセプションは、うららで行われるそうですね。」

 寺倉三等海曹が、話を最初に戻すかの様な口振りで、言った。

 「でも、マサさんこういうのはお手のものじゃないですか?少なくとも、自分は慣れないポークカレーや王道のビーフカレーより、いつものトマトチキンカレーがベストだと思います!」

 「いつもどおりは大切ね。ところで、今日の昼飯まだ?」

 明らかに下士官が士官に対して発言する言葉遣いではなかった。

 「はいよ。今日の昼飯は海鮮丼だよ。」

 若杉一等海曹が寺倉三等海曹に昼食セットを持って来た。

 がつがつと寺倉三等海曹は、胃袋に海鮮丼を流し込む様は、男性隊員と変わらない。

 「お前、お嫁に行けんぞ。」

 若杉一等海曹は、寺倉三等海曹に忠告する様な口ぶりで、言った。

 そう言われた寺倉三等海曹は、山島田をジーっと見つめていた。まるで、貴方か私をもらってくれるわよね?と言わんばかりの目付きをしたが、山島田は鈍感で全く気付いていない。

 「で、レセプションの日程は?」

 さりげなく寺倉三等海曹が若杉一等海曹に聞いた。

 「10日後の金曜日だ。」

 「よし、新メニューに挑戦をしてる余裕は無い。トマトチキンカレーで行く。若杉一等海曹、寺倉三等海曹有り難う。」

 山島田は自室に戻った。

 「寺倉三等海曹、お前なんか役に立つ事言ったか?」

 「いや、別に。」

 「何だかマサさん吹っ切れたみたいだな。」

 「ああ、そうだな。給養員じゃない若い女性隊員に、鞭打たれてやっと目が覚めた感じ。あ、食器は流しに入れといて。ありがとな。マサさん、士官に昇格して臨む初めての大舞台で緊張しているんだよ。じゃ、また。」

 そう言うと若杉一等海曹も自室に戻った。

 海上自衛隊の艦の中では、プライベートスペースは、狭い自室くらいのものだ。下士官や兵の場合は三段ベットとロッカーがあるだけ。私物は必要最小限度の物しか持ち込めない。個室というプライベートスペースがあるのは、せいぜい艦長くらいのもので、士官クラスの人間も二段ベットが当たり前であった。

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