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三話、初戦闘だけど勝てないって話


 やってきました始まりの町! 石造りの家々! 行きかう人々! 日本じゃない非日常! これです。これこそみんなの求めるVRMMOです!


 変化がないか手を握ったりして確かめて見ます。……大丈夫そうですね。では、ゲーマーらしく初戦闘に行ってみましょう! と、言いたいところですがまずは武器が必要です。


 天の声さんことナビィさんから貰ったのは弓使わずとも矢が打てるマジックボウと矢を100%生産成功できる矢生産EX。それとテイムができる魔物の奏者の三つです。

つまり、ナビィさん的には近接なんて考えず遠距離で戦えってことですね。近接戦闘は無理だと暗に言われている気もしますが、事実なのでありがたくそれに従いましょう。

 テイムは、先に矢を作ってからにしましょう。王獣でも狙ったほうが良いのでしょうか? いえ、無理は禁物です。


 矢作成は木の棒があればできるっぽいですね。フィードに出て拾いに行く……のは危険すぎます。武器もないので死んでしまいます。であれば木工用品店に行けば木材の端材を貰えないでしょうか? 探してみましょう。



 

 

「いらっしゃい! 木製家具だったらなんでもござれ。木工用品のウッディをよろしく!」

「すいません。木製家具はまだ特に入り用じゃありません。実は矢を作るので、木の棒が欲しいんです」


 運よく木工用品店を見つける事が出来たので事情を正直に説明します。商品じゃなくて端材をよこせって言うのも失礼な話ですしね。ここは真摯に説明するのが肝です。



「なるほどな。確かにウチには端材もあるな。だが、ウチは製品としても矢も売ってるんだよ」

「であれば、商品の矢も買わせていただくので端材もオマケしてもらえませんか? 」

「それなら乗った! 10本1セットで100ガメツ。1セット買うごとに木の棒を10本オマケするぜ?」 

「買いです! 5セットお願いします!」


 1セット買ったらもう1セット分の木の棒が貰えるなんてなんて優しいんでしょう! お金はナビィに1万ガメツ程貰ったのでこれくらいなら余裕で手が出ます。ただ、単位のガメツってなんでしょう? お金にガメツイ? まさかそんなことないですね。

 束にして貰った矢筒を受け取ると、その重みに少しふらついてしまいます。そういえばこれまでのチュートリアルはSTRを上げて貰っていたんでした。

 何とか足を踏ん張ると、おじさんは呆れ顔で私を見ます。



「おいおい。そんなひ弱な事で大丈夫かよ。なんだか心配だなぁ……よし。1割値引きしてやるよ。5セットで450ガメツな」

「うっ……ありがとうございます。」


 おじさんに同情されてしまいました。早くも称号の効果が表れ始めているようです。え? 素の反応? ……まさかそんな。

 心配するおじさんに手を振りその場を立ち去ります。次は矢作成スキルを試してみましょう。


 オマケして貰った木の棒を一本取り出し、矢作成スキルを発動! 勿論マニュアルではなくオート作成です。まずは安パイからやっていきましょう。……完成です。



【低品質な木の矢】+2

 下手くそなりに頑張って作った木の矢。不出来なので真っすぐ飛ばすのは難しい。オート作成でこれができるのはDEXにもよるが極めて稀。

・ダメージ補正 極小

・クリティカルダメージ補正 極小



 び、ビミョー……。確かに失敗はしてませんけど、これくらいの出来なら自分で作ったほうが早いのでは?

 次はスキルに頼らず自分で作ってみましょ……あ痛っ!


【折れた木の矢】

 木の矢を作ろうとしたらしき失敗作。何をどうすれば折れるのか。


 はい。スキルを使います。

 失敗すると、指すっごい痛い。私はまた1つ学びました。ポジティブに行きましょう。自傷防御スキルのせいか、幸いにもダメージは貰ってません。だからこれは失敗じゃないんです。

 テンポよくスキルと使ってもらった端材の半分を矢に変えて行きます。そのうち半分くらいは低品質ですが、残る半分は普通の木の矢です。

 

【普通の木の矢】+1

 誰でも作れる程度の普通の木の矢。まぁまぁ真っすぐ飛ばしやすい。

ダメージ補正 小

クリティカル補正 小


 いいんじゃないですか? 半分も普通の品質が作れるなんて1年に一回あれば良い方です。流石運営様の恩情スキル。物凄いチートスキルです。


 矢も補給した所で、外に行ってみましょう!






 始まりの町の外は綺麗な草原です。いい感じに風も気持ちよくて、ごみごみした都会では体験できない体験です。これもVRゲーの醍醐味ですよね。テンション上がってきました。


 さぁ、私の矢の餌食第一号はどこの誰ですか! む、近くから物音が聞こえます。そこですね!?


「キュっ!」


 出てきたのは灰色の毛の野ウサギです。かっ、可愛い……もっふもふしてます。円らな目が私に特攻をかけています!

 ……ふっ。命拾いしましたね。あなたは見逃してあげま……って、ぐへぇ!?


・野ウサギの不意打ち! 不意打ち保護によってノーダメージ! 

 ヒナは吹き飛んだ!


 や、やってくれますね……油断した所を攻撃してくるなんて。もう許してあげません。位なさい! マジックボウ起動! 


 私の視界の中に矢の着弾点を表すターゲットマーカーが表示されます。ターゲットマーカーがウサギに合わせて……ぐへぇ!?

 ちょ、ずるいですよ!? こっちはまだ合わせてる途中なんですけど!? タイム。タイムを所望します!


・野ウサギの追撃がヒナをおそう! 不意打ち保護によってノーダメージ!

 ターゲットマーカーが合わせられない!


 意図しない攻撃の範囲が思ったよりも広い!? でも好都合です。これならば時間をかければ矢で何とか……ぐへぇ!?

 無理無理無理です! 攻撃されながら動き回るウサギにマーカーを合わせるなんて絶対無理です! こんなのトップゲーマー並みの難易度ですよね!? 私ゲーマー(自称)ですけどまだこのゲームには慣れてないんですって!


「………キュウ」


 私の思いが通じたのか、何故か野ウサギは攻撃を止めてくれます。それになんだか哀れみの視線を感じるような……。まさか、ナビィの同情の称号で同情された? 

 半信半疑でウサギを見ていると、ウサギが前足を私の肩にポンと乗せ、強く生きろよ的な視線を送ってきます。小動物にも同情される私って一体……。助かったけど釈然としません。


「あの、そんなに同情するくらいなら力貸してくれません? ちょっとテイムしたいんですけど」

「キュウ? ……キュ!」


 戦闘には負けたけど、野ウサギゲットです!



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