かつおぶしの話
かつおぶしの話です。
かつおぶしの話。
皆さんかつおぶしを知っていますか。
味噌汁とかのダシになるあのかつおぶしです。
おにぎりの中に入ってたりするあのかつおぶしです。
かつおぶしそのものが光を浴びることはほぼありません。
かつおぶしは何かを引き立たせる役目を担っています。
かつおぶしは日々身を削り続けます。
かつおぶしは日々ダシを取られ続けます。
寒い日も暑い日も、気分が優れない日も、やる気が出てこない日も。
誰かにやけに嫉妬する日も、そんな自分に嫌気がさす日も、期待したあとに大きく裏切られて落ち込んだ日も、絶望の中に、不確かな可能性の光を見つけそうな日も。
日々かつおぶしは身を削り、どこかで何かを引き立てています。
かつおぶしは、何も言いません。かつおぶしは、ただ黙々と自分の役割を果たしているのです。
かつおぶしは自分の存在を誇りに思います。
味噌汁美味いと言われ、かつおぶしの美味しさに言及されなくても、かつおぶしは味噌汁美味いと言われたことを嬉しいと思います。
右側を削られ。左側を削られ。交互に削られ。どんどん削られ。
ただ黙々と健気に削られ続けるかつおぶし。
かつおぶしは小さくなり、ある日ゴミ箱に捨てられてしまうかもしれません。
かつおぶしは謙虚です。強い芯を持っています。寡黙です。すべての引き立て役です。
かつおぶしは現存する唯一の武士なのかもしれません。
かつおぶしの話でした。