棚ぼたの縁2
「それで、何をやらかしたの?」
廊下を歩きながら御守さんは静かに質問をした。
「あ、俺が何かやらかしたの前提なんだ。」
徹君は御守さんの質問に答えると肩を落とした。僕は 2 人の会話を聞きながら、彼らの後ろを黙ってついていった。
「だって、なんか申し訳なさそうな顔してたし、普段なら目も合わせてくれないのに私の事すっごい見つめてたし。」
御守さんは言葉に詰まった。
「だってさ、普段なら御守達の中に俺が入ってく隙なんて無いしさ。」
徹君が口を挟むと、御守さんは立ち止まって徹君を見つめた。
「だから、何度も言うけど、努力が足りないの。」
御守さんは頬を膨らませていた。
「まあまあ。要するに、普段なら何の共通点も無いのに、俺がずっと御守を見てたから何か用があるって気づいてくれたんだよね。ありがと。御守。」
徹君が手を御守さんの前に広げてなだめるように言って、彼女に愛想笑いを振りまいた。
「何が、まあまあなの?都合のいい時だけ愛想を振りまいても、お願い聞いてあげないかもよ?普段だって、私の方から仲良くしたいオーラとか、輪に加わって欲しいオーラ出してるんだからね。」
そう言って、御守さんは再び歩き出した。2 人は妙に親しげだと僕は感じた。僕と徹君は彼女の後を黙ってついていった。普段の学校生活では、徹君と御守さんが親しくしているのを目撃する事も、そういった噂を聞いたことも無かった。きっと、学外で何かの共通点があるのだろう。彼女の事となると、些細な事でも噂になっていて、彼女についての噂は僕の耳にもいくつか届いていた。特に彼女と親しい者の話題なら、尚更頻繁に噂されていた。まだ男の噂が無い彼女に外堀から近づきたい男子は多かったのだ。先程の御守さんと徹君のやりとりを誰か他の男子に聞かれていたら、彼女の傍にいた僕も根掘り葉掘り男子達から質問を受けていたに違いなかった。
「でもさ、御守の周りの奴らは御守と同じって訳じゃないでしょ」
徹君が冷たく言うと、また御守さんが振り返って徹君を見つめた。
「徹君、冷たいとこあるよね」
御守さんは腕を組んで徹君を見つめた。
「御守、頼みがあるんだ」
徹君が御守さんを見つめ返して答えた。
「何?」
「南雲に魔法が使える事がばれた。南雲は魔力を知覚する事ができるらしい。今後の俺と南雲に対する処遇を教えて欲しい。」
御守さんの返事をすると、徹君は間髪入れずに続けた。徹君の言葉を聞いた御守さんが口と目を大きく開けた。少しの沈黙の後、徹君が口を開いた。
「ごめん。」
「はあ。えっと、何があったの?」
徹君の謝罪を聞き、御守さんがため息をついた。彼女は説明を求め、僕と徹君を交互に見つめていた。